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どなたか王様の秘書セバスチャンを知りませんか?  作者: 蜜柑缶


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88 噂の魔術師4

 うわぁ……なんだかちょっと……

 

「ポッポ」(余計なことを言わぬほうがいいぞ。早く引きあげろ)

 

 もっと早く注意してよ。

 

 私はゆっくりとバナンの横を通り抜けながら言い訳をする。

 

「連絡を取っているという訳ではなくて……」

 

「だが居場所を確かめるくらいはする関係だと?」

 

「か、関係というか……」

 

 中庭から暗い建物の通路に入り外へ行こうとするがバナンも付いてくる。

 

「と、とにかく私はこれで。お会いできて良かったですわ」

 

 これ以上余計なことを話さないうちに逃げよう。

 

 少し早足で通りに出ると前から走ってきた人にぶつかりそうになった。

 

「また魔物が出たぞ!」

 

 その人はそう言って振り返りつつ走り去る。その後からも次々と逃げる人とすれ違う。

 

 また魔物?この前倒したばかりなのに。

 

 私は急いでせまい通りを人々と反対に走り出す。すぐに大通りに出ると数日前に魔物が攻めて来た付近がまた狙われたようだとわかった。防護壁を修繕し強化してある為まだ町中へ入り込んではいないが走って行くと防護壁の上から誰かが魔物を追い払おうと弓を引いているのが見えた。

 近くまで行くとバナンと一緒にいたゲイルがベンを連れて防護壁を見上げていた。近くに他の子供達もいる。

 

「皆、早く家に帰って!危険よ」

 

 私の声にヒューが振り返った。

 

「あ、ロージー。大丈夫だよ、ロージーが作ってくれた壁があるもん」

 

「そうだよ、全然壊れない」

 

 ザックもそう言って嬉しそうに笑っている。

 

「駄目よ、いくら頑丈でも限界があるのよ。早くここを離れて」

 

 そういった瞬間、急に悲鳴が聞こえた。

 

「キャー!魔物が入ってきた!」

 

 壊れない防護壁に魔物がよじ登り侵入してきた。それは数体のグールでぞろりと壁から飛び降りるとそのうちの二体がこちらへ襲いかかって来る。

 

「うわぁーー!ロージー助けて!!」

 

 ヒューが慌ててしがみついて来たので私はそれを手で庇いつつ火球で一体のグールを吹き飛ばした。爆発の勢いで被っていたフードがとれた。

 

「へー、久しぶりに使える魔術師を見たな」

 

 ゲイルが腰に差した剣を抜くともう一体のグールを軽く倒した。彼の側にいたベンが驚きながらもその動きを真剣に見ていた。これから自分も彼のようになるのだと思っているのだろう。

 まだ数体のグールがいてそれらは町中へ逃げる人に襲いかかり私がそちらへ攻撃をしようとした瞬間、後ろをついてきていたらしいバナンが年齢を感じさせない動きで素早く一体を切り倒し、逃げようとしたもう一体を側にいた貴族服の男が倒す。

 

「ローズマリー様ここにいたのですか、探しましたよ」

 

 それはシーラスだった。彼は何事もなかったかのように隠し武器のステッキを一振りして剣を鞘に収めた。

 

「シーラス様、申し訳ございません。子供達といたもので」

 

 私はしがみついたままのヒューの頭を撫でた。

 

「どうやら囲まれつつあるようですよ」

 

 シーラスは防護壁を見上げこちらに歩きながら言う。

 

「囲まれたって、この町をですか?」

 

「えぇ、あちらから上に上がれます。行きますか?」

 

 しがみついているヒューをベンに預け家に帰るように言って、シーラスと一緒に上に上がるために防護壁沿いを移動する。後ろからバナンとゲイルが付いて来ている。

 

「シーラス・ノヴァック様ですか?ワシはバナンと言います。噂は聞いてますよ。お優しい貴族様だと」

 

 バナンは意味ありげに微笑む。

 

「バナン、よろしく。私も噂は聞いていますよ、やり手だとね。ここへは子供を探しに?」

 

 シーラスはいつもの微笑みをバナンへ向け、バナンも彼を観察している。お互いに一筋縄ではいかないくせのある感じだ。

 

 防護壁の上に階段で上がるとゾッとするほどの魔物が町の外を蠢いているのが見える。まるでカーリの町へ攻め込んで来た時のようだが数はそれを上回り、町の西側を中心に多種多様な魔物が近づいてくる。このままでは防護壁が壊されるのも時間の問題だろう。

 

「どうしてまたこんなことに……」

 

 圧倒的な数に気圧され両手を広げて肩にいるパフを呼ぶと抱きしめた。

 

「どうすればいいの?」

 

「ポッポ」(助けを呼ぶしかなかろう、其方だけではどうにもならん)

 

「どうやって?誰を?」

 

 助けを呼ぶといっても頭の中にはタイラーしか浮かばない。だけど彼は王都にいるのだからとても間に合わないだろう。

 

「砦にいる騎士団を呼ぶのが現実的でしょうね」

 

 シーラスが冷静にいう。

 

「問題は来てくれるかどうかだな。この数を相手にできるほど砦の騎士達に度胸があるか?数が多過ぎる」

 

 バナンがまるで他人事のように言う。

 

「お二人共とても冷静ですね」

 

 バナンの隣にいるゲイルも余裕の笑顔だ。

 

「最悪は逃げ切るしかないだろうな」

 

「逃げ切るって?」

 

 ゲイルが肩をすくめため息をつく。

 

「町を見捨てて自分達だけ逃げ出すのさ。貴族がよくやる手だが今回は仕方ない。オレとバナンだけなら逃げ切れる自信がある。あんたらもそうだろ?『赤髪の魔術師』さん」

 

 どうやらさっき魔術を使ったことでバレてしまったらしい。私は片手でフードを被りなおした。

 

 町の人や子供達を見捨てて逃げるなんて出来ない。だけどどうすれば……

 

 もう片方の手の中のパフが警戒した声を出す。

 

「ポッポ」(また増えてきたぞ。助けを呼ぶにしても急いだほうが良い)

 

 防護壁の上の通路には右往左往する町の兵士たちがいる。

 

「あの、助けは呼んだのですか?」

 

 走り回る兵士のひとりを捕まえ尋ねた。

 

「呼ぶも何もここには知らせる手段がない。魔術師を嫌って魔術での通信装置を置いてないんだ。門は開けられないしどうやって助けを呼んだらいいか……」

 

 兵士は焦りながら走り去った。

 

「砦の騎士達は知らせれば来てくれると思いますか?」

 

 シーラスは砦にいる騎士達の中に何人か関係がある者もいて彼らに詳しそうだ。

 

「ただ呼んでも無理かもしれませんね。だが上からの命令なら逆らえんでしょう」

 

 私はきゅっと目を閉じ息を吐いた。

 

「パフ、タイラーに知らせて」

 

 カーリの町でも彼を頼った。あの時は結局私一人で戦ったけど後始末は彼がしてくれた。心配も……かけたし、出来るなら言いたくないが町の人の命がかかってる。

 

「ここから鳩を飛ばすのか?」

 

 バナンが鼻で笑った。パフは少し黙っている。多分タイラーの側にいる子が彼に伝えているのだろう。

 

「ポッポ」(今は会議中だ。まわりに大勢の人がいるぞ)

 

「構わないわ……彼に言って」

 

 その時魔物の集団が一斉に防護壁へ向かって攻撃を始めた。

 

「これは間に合わん!」

 

 バナンが叫び、私は防護壁の縁に足をかけ身を乗り出した。

 

「出来るだけ時間を稼ぎます。中へ侵入した魔物をお願いします」

 

「ポッポ」(もう五羽だせ!)

 

 パフに言われるまま新たにパフを呼ぶと防護壁から外へ身を投げ出した。

 

「オイ!!何やって……る?!」

 

 ゲイルが驚きの声をあげたが私は地面に着地する前に土の魔術で町を囲う防護壁と繋がる足場になる壁を作り出しその上を走りつつ魔物が集まる中心近くまで行った。

 

「後ろをお願い」

 

 パフ達に背中を任せ前方にいる魔物へ巨大な火球を作り出すと攻撃を開始した。

 

「ポッポ」(タイラーがギデオンに頼んで砦の騎士達へ命令を下してもらえると言ってる)

 

 良かった、砦になら魔術師がいて城からの命令も素早く伝わるだろう。

 

 

 

 

 

 

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