61 依頼2
ブクマありがとうございます
昨日と同じようにパフが先行しながら魔物を探し出し、見つけると倒していく。
森の奥へ行くほど薄暗くなり足場は悪くなる。思うように進めないがパフが誘導してくれているので何とか進みまた魔物がいる洞窟へたどり着いた。
「ここには何がいるの?」
「ポッポ」(オルトロスだ、三体いる)
「オルトロス?三体って、少ないわね。危険な魔物なの?」
聞いた事ないなぁ。
「ポッポ」(犬みたいなものだ、行くぞ)
パフが洞窟の中へ入り込み私は入り口から少し下がった所で待っていた。すると奥深くから恐ろしい獣の咆哮が聞こえたかと思うと双頭の魔犬オルトロスが勢い良く飛び出して来た。
「これのどこが犬なのよ!!」
私を見下ろす二つの凶暴な恐ろしい顔で牙を剥き出し、口からヨダレを撒き散らしながらオルトロスはパフにかぶりつこうと飛び上がった。
「危ない!!」
私は火の魔術で攻撃しオルトロスはそれを受けると一瞬吹き飛んだかのように見えたがくるりと身をかわし着地すると私に向かって来た。
「ポッポ」(そいつは火と水の攻撃が出来る、同じ魔術は効かんぞ!)
「そんな大事な事もっと早く言ってよ!!」
すぐに土の魔術に切り替えると礫に続き大きな岩をオルトロスの真上から落とし、そのまま頭を土に沈め固めるとホッとひと息ついた。
「ポッポ」(油断するな!三体だと言ったであろ!)
パフが叫んだ瞬間、洞窟内から突然炎が吹き出し慌てて水の魔術で身を守った。火と水の魔術がぶつかり物凄い爆発が起き吹き飛ばされるかと思ったら素早くパフが土の魔術で壁を作り守ってくれた。
すぐさまオルトロスも水の攻撃を仕掛けてきたので風の魔術で切り裂くように攻撃して倒した。最後の一体は火と水両方で攻撃して来たので土の魔術で壁を作って一旦防ぎ、素早く囲むと押し潰した。
「し、信じられない……」
自分でもよく助かったと思うほどあっという間の出来事だった。
「ポッポ」(あれ位いちいちギャーギャー騒がずに倒せんのか)
最近のパフは厳しく私を鍛える。ギリギリまで手は出さずさっきの様に危ない時だけ助けてくれるが最後まで倒すのは私だ。
「もうヘトヘト……泥だらけだし、今日はもういいでしょ?」
私のくたびれ様にパフも仕方無く承知した。
ここで休むわけにもいかず、少し南へ森を進み岩場の陰まで来るとそこを今夜の野営地とした。
竈を作りすぐに食事を作ったが汚れたままで食欲も無く、先に体をキレイにする事にした。
肉をジルド特製のタレに漬けて置き、魔術で囲いを作るとまたパフに見張りを頼んだ。
「魔物と動物はすぐに攻撃していいわ。人は……来ないと思うけど変なのは追い払って」
知り合いも知らない人もこんな所にいるなら普通の人じゃないだろう。
ゆっくりと湯浴みをして気分も良くなり着替えると洗濯した。まだ濡れている髪を拭きながら囲いを消し、竈の方を見るとタイラーがパフと一緒に串肉を食べながら座っていた。
「キャーー!!」
あまりにも驚きすぎて悲鳴をあげると後ずさって逃げ出そうとした。
「ちょっと待て!イキナリ飛び出していった奴がこんな森の中で風呂ってワケがわからん。オマケにまた逃げ出すとかありえないだろ」
素早く腕を掴まれ逃げようにも逃げられない。
「は、は、離して!」
「逃げないなら離す」
片手で串肉を持ち、反対の手で私を掴んで離さない。
もうワケがわからない……
「わかった、逃げないから……」
腕から逃れようともがいていたが諦めると力無く項垂れた。竈のそばまで連れて行かれ隣に座らされた。
「これ美味いな、食えよ焼けてるぞ」
いつからここにいるのか、ジルド特製のタレにつけていた肉を串に刺して焼いてくれていた。一口食べてまた項垂れる、美味しいはずが美味しくない。
「今はもういい……ビックリし過ぎて食べる気しない。パフ、どうして知らせてくれなかったの?」
追い払ってくれてもいいはず。
「ポッポ」(タイラーが変な奴かどうか判断に迷った。ロージーに知らせようにも湯浴みの時は入って来るなといつも言われておったからな)
パフは男の子なんだからそれは当然でしょ。だけど……
「はぁ……どうしてここにいるの?」
肉を食べながら私から目を離さないタイラーが睨んでくる。
「それはこっちのセリフだろ。オレは魔物を討伐する為にこの辺りを探ってたんだ」
彼は騎士団を率いて要請が相次いでいた西側へ魔物討伐へ向かわせてくれと王へ申し出たらしい。
城では今、オスロワスの動向を見極めるのに焦点をあてている為平民の要請に対してあまり積極的な対応をしなかった。
そこでタイラーは小隊だけでかまわないからと半ば強引に出て来たらしい。何を優先するかは貴族だけで決められ平民の事はいつも後回しになる。平民にしわ寄せがいくのを見てられなかったようだし、城での事務的なやり取りより現場で動く方が性にあっているのだろう。
「もう何ヶ月も王都から一歩も出られなかったからいいタイミングだった。
三日前から森に入っていたが隊を休ませている間に偵察方々見回っていたら物凄い爆発が聞こえてパフが飛んで行くからまさかと思ったがいるとはな」
串肉を平らげ水を飲んで口を拭い話を続ける。
「で、オレになにか言う事は無いのか?」
ちょっと機嫌が悪い顔でこちらを見てる。
「何かって?」
頭がうまく回らない。何を言えばいいの?
「勝手に飛び出した」
「それは……私がいたら邪魔だと思って。レーンも困ってたし」
あのままいてもうまくいく感じがしなかった。
「後始末は手伝うって言ったろ」
不機嫌そうにため息をつかれた。
「そう……だけど」
「オレは約束は守る質でね。だけど肝心のロージーがいなくなったらどうする事も出来ないだろ」
目をそらさず見つめてくるタイラーになんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
「ご、ごめんなさい」
ポツリと言うと何故かタイラーはフッと笑った。
「それで、何故こんな所に一人でいるんだ?まさかアレからずっとここじゃないだろ」
私は旅をしながら魔物を狩って売って生活している事と詳しい場所は明かさず土地を買った事を言った。
「一人でか!?」
「まさか、ジルドと一緒よ」
「ジルド?若い男か!お前……」
「お前って言わないで。ジルドは王都で知り合った商人の運び屋なの。私が旅をするって言ったら一緒に連れて行って魔物を売ってくれって言われて。私もその方が助かるから」
タイラーはさらに機嫌を悪くする。
「だからって何ヶ月も男と二人で一緒に旅をするなんて……恋人か?」
「違うわよ。そんなんじゃない」
「なにもないのか?そいつ何ヶ月もいて全くロージーに触れずにいるのか?」
「…………」
「ほぅ……何かあったな」
タイラーが目を細めニヤつく。
「別に……大した事じゃ……」
手を握って抱きしめられただけだ。キスは……逃げちゃったし。
彼から目をそらし黙り込んだ。するとタイラーはゴソゴソと何かを取り出す。
「これはお前に贈った物だ」
手には彼に返した小さなピンクの石がついた花模様のネックレスがあった。
「オレがちゃんと自腹で買うって言ったろ」
私は彼の手にのせられた小さな石に指で触れた。
やっぱり可愛いな。
「でももう受け取る理由がないわ」
あの時は婚約者として、大隊長の秘書として、少しは身なりにも気をつけろと言われて買ってくれたのだ。
「いちど贈った物を返してくるな。いらないならそっちで処分してくれ」
そう言ってあの時のように鎖の端を両手でつまむと私の首の後ろに手を回した。
彼の顔が近づいてくる。
「ちょっと……」
「なんだよ」
「前も言ったでしょ、後ろにまわってよ……顔が近い」
タイラーは顔をしかめながら金具を留めている。
「前も言ったろ、うるさく言うと口を塞ぐって」
そう言ってキスをして来た。一瞬後ろに身を引いたが背中に手を回された。
前とは違う……ちょっと……長くて……
タップリと時間をかけた後、彼はゆっくりと離れニヤリと笑った。




