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どなたか王様の秘書セバスチャンを知りませんか?  作者: 蜜柑缶


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48 元貴族

 しっとりと濡れた羽をバタつかせ今度は火と風の魔術の応用で自らを乾かす。

 

「本当にパフって器用よね。何故そんなに魔力を扱うのが上手なの?」

 

 私が作り出したはずなのに私より私の魔力を扱う事に長けている。

 

「ポッポ」(そんな事はどうでも良い。早くやってみろ、最初は手を貸してやるから)

 

 気は進まないけど汚れたままなのも嫌だわ。

 

 私はイヤイヤながらも手を組むと集中した。

 

「ポッポ」(手を解いて、組まなくても集中しろ)

 

「はぁ〜い」

 

 改めて手を組まずに自分の中の魔力を揺らし水を生み出そうとした。

 目の前に突如として大きな水の塊がザバっとうねりながら現れた。

 

「ポッポ」(もっと小さく穏やかなモノにしなければ溺れると言ったであろ)

 

 さっきのルフを吹き飛ばした火の魔術に匹敵しそうなほどの水の塊は激しく渦を巻き出した。

 

「そんな事言ってもさっきのでちょっとタガが外れちゃってる感じなんだもん」

 

 さっきは爆発を押さえる為に(・・・・・・)随分苦労した。どうせなら思いっきり開放した方が楽になれたのに。

 

「ポッポ」(森を消し去りたければ好きにしろ。だが金も貰えんまますぐに逃げるハメになるぞ)

 

「パフの意地悪。そんな事するわけないでしょ」

 

 荒々しく波打つ水の塊を少しずつ小さく穏やかにする為魔力を調節していく。

 

 お花に細めのジョウロでそうっと水をかける感じね。

 

 慎重に魔力を細めるイメージを持ちつつ自分を囲んでいく。

 

「冷たい!」

 

「ポッポ」(嫌なら火の魔術を使って湯に変えろ。失敗したら茹で上がるがな)

 

 自分は余裕で使いこなすからって簡単に言わないで欲しい。

 

 水の魔術を調整しつつ、火の魔術を使う。水と火の魔術を上手く組み合わせながら段々と水温をあげていく。

 

「ねぇ、両方同時に使う方が私には楽に感じるんだけど」

 

「ポッポ」(ロージーは魔力を少なく使う事が苦手であるからな。単純に使用量が多い方が扱いやすいのであろ)

 

 なるほど、覚えておこう。組み合わせか……

 

 ちょうどいい湯になりそれをグルグルと巻き上げながら自分を洗った。

 ザバっと湯を跳ね上げて飛ばすと泥は見事に洗い流されスッキリとした。後は乾かすだけだ。

 

「この要領でいくと今度は風と火を使えばいいのね」

 

 少しずつ調整しつつ何とか温風を出すコツを掴むと自分の全身を乾かした。

 

「ポッポ」(ふむ、今日だけで随分進歩したな。この調子なら魔術の扱いもすぐに慣れるであろ。そうなれば私がいなくとも大丈夫だ)

 

「ちょっと待って。不吉な事言わないで、パフはどこにも行かないでよ。大事なお友達なんだから」

 

 なんだか私が魔術を扱えるようになれば消えてしまうのかと心配になった。

 

「ポッポ」(案ずるな。私という魔力の消費を担うものがいるからロージーは普段魔術を使わなくても平穏に生きていけるのだ。常に魔力を消費していないとロージーはいずれ魔力が多過ぎるせいで魔力酔いを起こすからな)

 

「そうなのね、ふふっ。安心した」

 

 異常に魔力が強いのも大変だ。でもおかげでパフとずっと一緒ならそれで良かった。

 うまく使えるようになったとはいえそれでもまだ完璧にはほど遠い。乾かした髪は乱れて纏まりにくい巻毛の赤毛はボサボサだ。リュックから櫛と鏡を取り出し根気よく梳いて整え再び一つに結んで丸めるとフードをかぶった。

 

 

 

 やっと自分をキレイにして森を抜け、今朝ジルドと別れた場所へ向かった。

 

 不慣れな森をヨタヨタと歩いていると木々の隙間からジルドがキョロキョロと私を探しているのが見えた。

 

「ごめんなさい、遅くなったかしら?」

 

 彼は私に気づくとホッとした顔をした。

 

「いや、オレが予定より早く来たんだ。まさかとは思ったけどちょっと気になって」

 

「あら、心配してくださったのですか?ありがとうございます」

 

 ジルドは微笑み、慰めるように私の肩をポンと叩いた。

 

「まぁ、仕方ないさ。上手く行かない時もある。他にも金を稼ぐ方法はあるさ、さぁ行くぞ」

 

 そう言って乗ってきた馬車の方へ向かって歩き出した。

 

「待って下さい。帰るなら魔物を積んでくださらないと困ります」

 

 私は慌てて引き留めた。

 

「え?何か倒せたのか?小型ナイフしか持ってないって聞いたぞ」

 

 どうやらジルドとアントンは私には魔物は倒せないだろうと踏んでいたらしい。

 

「こちらです」

 

 森の奥にある土壁で囲った所へ連れて行った。

 

「魔術師だったのか……」

 

 壁を見上げてため息をつくとジルドは言った。

 

「パフ、お願い」

 

 私が頼むとパフはすぐに土壁を消し去った。

 

「召喚士?……鳩が魔術を使えるって……意味がわからん!」

 

 ジルドは動揺し、頭を抱えしゃがみこんだ。

 

 しばらくすると気持ちが落ち着いたのかゆっくりと立ち上がりブラッドベアと私を見比べる。

 

「やっぱり貴族だったんだな。話し方や雰囲気でそんな気はしてたよ」

 

「アントン様から聞いてらっしゃいますよね?」

 

「わかってる。他言無用だろ?心配しなくてもそんな奴は結構いる」

 

 ジルドは魔物に近づき状態を調べながら言った。

 

「そんな奴って、貴族がってことですか?」

 

 私は驚いて尋ねた。

 

 ジルドから聞いたことに私は衝撃を受けた。

 今の私のように何らかの理由があって貴族としては生きていくことが困難になり、平民として身分を隠して暮らす人は割といるらしい。

 派閥内の争いに破れ追放されたり、借金で身を崩し出奔したり、恋人と駆け落ちなど。理由は様々ながら隠れた元貴族は結構いるようだ。

 

「オレも血筋的には貴族なんだ。祖父が貴族だったけど嫌気が差して家出したらしい。でもそんなの誰も言わないし気にしない。ロージーも出来るだけ早く開き直って平民の暮らしに慣れたほうがいい。その方が楽だぞ」

 

 そのままジルドは馬車を取りに戻るとリュリュを連れて戻って来た。

 

「大物だな」

 

 ジルドはブラッドベアの体をリュリュにも引かせながら何とか荷台に乗せた。荷台からはみ出し気味のブラッドベアの足を無理やり隙間に押し込み出発しようと準備しだす。

 

「あの、まだあります。向こうにオーガとか、ルフとか」

 

 信じられないモノを見るような目で私を見るので、すぐにもう一つの土壁の囲いの所とルフの所に連れて行った。

 

 無言で頭痛を耐えるような顔してジルドは自分の顔をバシッと両手で叩いた。

 

「とにかく帰ろう。オレが責任持って今日中に何往復かして街まで運ぶ。クソっ、もっとでかい馬車で来るんだった」

 

 すぐにリュリュが引く馬車に乗り込むと出発した。

 ジルドは馬車を結構な速さで飛ばす。速く魔物を回収しなければ動物に食い散らかされたり、他の魔物が寄ってきて危険だからだ。

 

 

 スレイプニルのリュリュが引いてただけあって二時間もかからずに王都までついた。検問を抜けすぐに私を宿屋まで送ってくれた。

 

「話は夕食の時にアントンさんから聞いてくれ。恐らく全部の支払いは明日になるだろう。じゃあ急ぐから」

 

「ありがとうございます。お気をつけて行っていらしてください」

 

「話し方、気をつけたほうがいい。丁寧すぎると目を引く」

 

 ジルドは小声でそう言うとすぐに行ってしまった。

 

 確かにそうね。

 

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