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どなたか王様の秘書セバスチャンを知りませんか?  作者: 蜜柑缶


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109 魔術3

 魔術師達が驚いた顔で私を見ていてなんだかいたたまれない。タイラーが私の背に軽く手を添える。

 

「すまんな、ローズマリー様はお前達の手本にはならん。優秀だからな」

 

 は?

 

「大隊長!酷いです、こんなの見せつけられたら自信無くしますよ!」

 

「ローズマリー様は本当に凄いですね!もう一回お願いします!」

 

 色々な言葉が飛び交いちょっと混乱する。

 

「大隊長、婚約者自慢はよそでやってくださいよ」

 

 ミランダが怒っているような呆れているような様子だ。

 

「いやいや、優秀な魔術師は貴重だからな。こうなれとは言わんがこれに少しでも近づくように頑張れってことだ」

 

 うんうん頷くタイラー、何故貴方が自慢気なの?

 

『そんなの無理に決まってる!!』

 

 一斉に抗議されたがタイラーは怯まない。

 

「何いってんだよ、絶対に倒せないって言われてた魔王を倒したのは平民のオレだぞ。皆の協力があってのことだが挑戦は必要だろ。じゃなきゃ奇跡はおこせない」

 

 それを聞いて皆が口をつぐんだ。

 魔王は何年も誰も倒せなかったがタイラーが二度挑戦して倒す事が出来た。彼が一度破れたときに諦めていたら今だにその被害が広がっていたのかもしれない。

 

「魔力は使い続ければ少しは増えるようです」

 

 タイラーの言葉に黙ってしまった魔術師達が顔をあげた。

 

「わたくしは生まれ持った魔力が多すぎてそれをうまく調整できなかったのです。そこで生まれたのがパフです。パフはわたくしの魔力で作られているのでこの子を存在させずっと魔力を使い続けながら生活して多すぎる魔力を調節してくれている状態なんです」

 

 魔術師だけでなくタイラーも驚いた顔をしている。こんなことを人に話すのは初めてだ。

 

「パフはとっても賢くて色々と教えてくれます。大事な友人で先生のような存在です。パフが言うには使い続け訓練すると魔力は増えるそうなので皆さんも毎日どこかで魔力を使えばそれが訓練に繋がります」

 

 お互いに顔を見合わせ頷きあう魔術師達の目がキラキラして見える。きっとやる気になったのだろう。皆の意向を受けたようにミランダが言う。

 

「ローズマリー様!もう一度見せて下さい、今度は一番遠い所へ、本気で!」

 

 今度は私とタイラーが顔を見合わせた。

 

「いや本気は駄目だ!」

 

「本気は危険ですから」

 

 がっかりする魔術師達に本気で必死に調節した火球をもう一度見せようとすると訓練場に人が集まってきたことに気づいた。さっき的を消し去った音が聞こえてしまったようだ。

 

「人が多いと危険ですね。中止しますか?」

 

 私の言葉を受け魔術師達が走り出すと見学者を整理しだした。

 

「はい下がってください!危ないですよ!」

 

「ローズマリー様の魔術が見たければ静かにしてください!怪我しても責任は取りませんよ」

 

「自己責任で見て下さい!自信がへし折れますよ!」

 

 中には他の魔術師達もいてどれほど使えるかと意地悪な視線も感じ、いよいよ人が増えもう退けない感じだ。どうしようかと隣のタイラーを見上げると大丈夫だというように頷く。

 

「さっきより少し強目でいくか、いい宣伝になる」

 

 これから一度は私がゾルガーの派閥を継がなければいけないなら魔術が使えると大勢の人に知られている方がお父様が認めやすいだろう。

 女性魔術師達が取り仕切る中、訓練場に何十人もの人が遠巻きに並び私が魔術を使うところを見学するというちょっと異常な事態になってきた。

 

「ローズマリー様、これはどういうことです?」

 

 後ろからシーラスが優雅な足取りでやって来て面白そうに微笑んでいる。

 

「よく分からないのですがわたくしが魔術を使うのが見たいそうです」

 

「なるほど、ですが私が聞きたいのは何故一人になりたいと言って寝室に閉じこもっていたはずの貴方がここにいるのか、ということです。ルーが心配していますよ」

 

「あぁ!そうだったわ。はぁ……また叱られるわ」

 

 どうせなら街へ行ければ叱られても良かったんだけど。


 ミランダが見学者の整理が済んだのか走ってきて私と話していたシーラスを見て目を見開いた。

 

「ローズマリー様、準備が整いましたのでお願いします……あの、この方は?」

 

 気になるよね、シーラスは見目が好いものね。

 

「この方は友人のシーラス・ノヴァック様です。シーラス様、こちらは……」

 

「ミランダ・ルートです、ミランダとお呼び下さい」

 

 ちょっと勢い込んでミランダが自己紹介する。

 

「ミランダ様、では私もシーラスと。可愛らしい方ですね」

 

 いつものように涼し気に微笑んでミランダの頬を赤く染めさせる。三十代のシーラスからすれば二十代前半らしきミランダなどイチコロだろう。大丈夫だろうか?

 

「ミランダ、早くそこどけ。ロージー、いいぞ」

 

 タイラーがミランダをシーラスから遠ざけ私を押し出すと魔術を使うように言った。やっぱりタイラーもシーラスにミランダを近づけたくないんだ。詐欺師っぽいもんね。

 私はそっと見学者を見た後、さっきよりは少し大きめの火球を頭上高くあげた。

 

『オォー!!』

 

 見学者から一斉に声があがる。

 

「ロージー、ちょっと大きすぎないか?」

 

 タイラーに注意されなんとか少し小さく縮めた。

 

「これでいい?」

 

「あぁ、これなら怪我人は出ないだろう」

 

 許可が出たところで一番遠い的へひょいと投げた。火球は的を一瞬で消し飛ばすとゴオゥっと高く火柱をあげた。それはすぐに消え怪我人はいなさそうだ。

 

「うまくいったのよね?」

 

 タイラーを振り返るとうんうん頷いて笑んでいる。

 

「やっぱり予想より凄かった。騒ぎになる前に引き上げよう」

 

 素早く私の手を握ると早足で騎士団棟の方へ向かった。火柱を見た見学者達が固まったままだったが私達が建物へ入る頃ワァーっと歓声が起こっていた。シーラスも後ろを付いてきていて満足そうだ。

 

「これでまたイングバルが忙しくなるな」

 

 さっき私が会議室で見せた魔術のせいで私に付きたいという部隊長がイングバルの所へ来ていたそうだ。訓練場で見た人もそうなるということなのかな?

 タイラーに手を引かれたまま部屋の前まで連れて来られた。ドアを守る護衛が私が部屋にいたはずなのに外から帰ってきたことに驚いていた。

 

「大人しく出来るか?」

 

 子供に言って聞かせるように言われて恥ずかしくなる。

 

「大丈夫です、もう部屋にいますわ」

 

 熱くなった頬に手を添えながら開けてもらったドアからパフを連れ入ろうとすると中でルーが顔を引きつらせ立っていた。マズイ……相当怒ってる。

 咄嗟にタイラーに手を伸ばし袖を掴む。勿論暴れるパフも離さない。

 

「離せよ」

 

 タイラーが焦った声を出す。

 

「一緒に叱られてよ。貴方が魔術を使えって言うからこんなことになったんだから」

 

「ロージーが勝手に抜け出すからだよ」

 

 ふたりで責任を押し付けあっているとさっきまで一緒に訓練場にいた女性魔術師達がバタバタとやって来た。

 

「ローズマリー様!姿が見えないから焦りましたよ、さっき時間を下さいと言ったではないですか」

 

 ミランダが私の横に来ると首を傾げた。

 

「またいちゃついてるんですか?少しは私達に時間を下さい」

 

 そう言ってタイラーの袖を掴んでいた私の手をもぎ取り部屋へ連れて入られた。タイラーはホッとした顔でそのまま逃亡した。

 酷い、私だけが叱られるじゃない。気がつくとシーラスもいなかった。逃げ足速すぎ。

 

 まさか知らない人の前で叱ったりはしないだろうと恐る恐る応接用のソファに座る。ミランダが私の横に座り他の女性魔術師たちもそれぞれ座る。最初は怒っていたルーだが突然の来客に驚いたあと急に上機嫌にお茶を用意したり菓子を出したりといそいそと動き出した。

 エリーが私とミランダにお茶を出してくれる。

 

「あら、あなた前は大隊長の所にいたわよね」

 

 ミランダの問にエリーは静かに微笑み頷いた。

 

「はい、今はこちらの専属にして頂いています」

 

「そうなの」

 

 皆にお茶が行き渡ったのを確認するとルーとエリーは静かに下がっていった。

 

 

 

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