ゲームのお時間です5
「やったー! 結衣さんが1番だぁーっ」
じゃんけんの結果、勝ち残った結衣から時計回りで行うことになった。
「ほれ、サイコロ」
俺が結衣にサイコロを手渡すと、ニコニコと嬉しそうに笑いながら「いくよーっ」と一言発してから転がす結衣。
まったく、結衣は何しても可愛いなぁ。
「お、お兄ちゃんっ、くすぐったいよぉ……っ」
ん? なんで悶える様に身じろいでるんだ?
――あっ、俺か……!
無意識に結衣の左頬に手を添え髪をすくように撫でていたらしい。しかも耳を擽る様に。
「すまん結衣。結衣が可愛過ぎてつい、な」
俺は手を放しひらひらと振りながら謝る。
「お兄ちゃん……っ。嬉しいけど、みんなの前で恥ずかしいよ……?」
頬を少し赤らめながら結衣が上目遣いで言ってくる。
くっ、また勝手に手が動き出してしまいそうだ……!
「ちょっと、もう目が出てるんだから早く進めなさいよ」
俺が自身の右手を左手で押さえていると、左隣の凛が腕組みしながらあからさまにイライラとしている様子で促してきた。
おっと、そうだったそうだった。今は結衣を愛でる時間じゃなくてゲームの最中だったんだ。
「結衣、この車型のを動かすんだぞ」
「うんっ。――えーと、目は6だから……1、2、3――」
結衣が数えながら駒を進めると、6つ目のマスに置いて書かれている内容を読み上げる。
「近所のおばさんに可愛いと褒められお小遣いをもらう、100万円。わーいっ! いきなりお金貰っちゃった。結衣さんいっちばーん!」
「まだ結衣しか進めてないんだから当たり前じゃない、まったく。ほら、つぎ奏よ」
「おう。それっ――おっ、俺は4か。1歳から英才教育を受け始める。教育費でマイナス100万円、知力と体力がアップ」
うーん、まあ悪くはないか。パラメータは高い方が就職幅が広がるしな。
俺は体力・知力・モラル・センスでそれぞれ色が違う丸いチップから体力と知力のチップを取って自身に追加した。
数字の代わりにチップでパラメータ管理をしているのだ。
「次は凛だな。ほら、サイコロ」
「そのくらいわかってるわよ」
凛は文句を言いつつ俺からサイコロを受け取ると、勢いよく放る。
「私も6を出して結衣に追いつくんだから! ――なっ!? なんで2なのよーっ」
「どんまい」
「うっさい!」
「ぐはっ!?」
久々に凛の腹パンを喰らってしまった俺。
腕が上がってるな凛。これなら世界も狙えるぜ。
「あ、これが特別マスっていうゲームマスね」
そんなやり取りを俺と凛がしていると、あや姉が2マス目の内容を読んで反応していた。
「そ、そうだよあや姉。これで俺と凛は王様ゲームをしないといけないわけだ」
俺は腹を擦りながらダメージ回復をしつつ、あや姉に答えた。
「と、いうわけで凛。さっそくだが俺と王様ゲームをしてもらうぞ」
「く……っ。で、でも勝てばいいのよ勝てば、余裕よ余裕ッ」
「いくぜ――じゃーん・けーん・ぽん!」
俺が掛け声を出し、凛とじゃんけんをすると、
「なぁ~んでぇ~っ!? な~んで私が負けるのよー!?」
「ふっ。俺の勝ち、だな」
俺は勝利のチョキを顔の高さで見せつける様にして軽く振った。
「さーて、どんな命令をしてやろうかなー」
ふっふっふっ、と俺が怪しい笑みを浮かべていると眼前の凛は危険を感じたのか、途端に自身の身体を抱くようにして護る体勢になっていた。
何をそんなに警戒しているのかな、凛のやつ。ふっ、まったく、俺は紳士だぜ? 初めからそんな卑猥な命令をするはずないというのに――
「俺に抱きついてお兄ちゃん大好きと言ってくれ!」
「変態ッ!!」
「なぜだ!?」
「抱きつくとか卑猥よ!」
「どこが!?」
どういうことだ……!? 兄妹で抱き合うことのどこが卑猥になるんだ?
「凛、負けたんだからちゃんとやらないとダメなんだよ」
「うっ……。結衣めぇ~……ッ!」
唸りながら結衣を睨みつける凛の吊り目は実に悔しそうだ。
「凛がやらないなら結衣が変わりにやっちゃうよ?」
「えっ!? いいの!? ねえちょっと奏! 代理に結衣が――」
「却下だ!」
「――!?」
俺は凛が最後まで話す前に両手でバッテン印を作って言った。
ふっ。凛の奴、結衣の優しさに甘えて避けるつもりのようだったが、この命令は普段絶対言わない凛だからこそ意味があるのだ。言わずともやってくれる結衣ではただの日常と変わらない。
そんな悔しそうな眼をしても無駄だぜ凛? 俺はもう抱きつかれる気まんまんなんだから! おっと、そんな顔で睨んでも駄目だぞ? ちょ、まっ、そんな涙目で睨むのはずるいぞ凛!
「あーもうわかったわかった! 内容を変えてやる」
俺は無言の凛の訴えに根負けし、再度命令を下すことにした。
「やった……!」
「ん? 今なんか言ったか?」
「え!? う、ううん! 何にもないわよ?」
「そうか? ならまあいいけど……」
おかしいな、今たしかに何か呟いたはずなんだが……。
もしかして大好きって言ってくれたのか!? そうなのか凛!? まったく、いくら恥ずかしいからってそんな小声にならなくてもいいのに……可愛いやつだぜ。
よし、満足したし命令はこれでいいか。
「凛、命令だ。次の凛の番がくるまで俺の膝の上に座ってプレイすること!」
「ちょっ、さっきよりひどくなってるんだけど!?」
「違うよ凛! もうこれはご褒美だよ! いいなぁ~凛いいなぁ~」
叫んだ凛に反応したのは結衣だ。
なんか左右に揺れながら「いいなぁ~」を連呼してるし。
どんだけ好きなんだよ俺のこと。
「えっ、これご褒美なの!? 拒否するあたしがおかしいの!?」
結衣の反応に驚く凛。
あれはまるで自分の感覚がおかしいのではないかと思い込み始めてるな。
「お、お姉ちゃんはどう思う?」
焦りながらあや姉に訊く凛。
なんか表情がマジだな。本気で自分の感覚を疑ってらっしゃるご様子。
「私? 私はぁ……そうだね、少し恥ずかしいけど、嫌、じゃ……ないかな」
なんで僅かに赤くなってるのあや姉!? 理由を詳しく!
「ホントあやめは藤森くんのことが好きよね」
「そ、そんなこと! ――あるけど……」
微笑む璃緒先輩。俯くあや姉。
なんだこの美人たちの図は。
そしてそんなことあるのかあや姉!
やっべーなんかちょっと興奮してきた。
「あの、藤森くん。興奮してるところ悪いのだけれど、また眼が血走ってて気持ちが悪いわよ?」
「うっ……! やっぱりさらりと平気な顔してディスれる西園寺は凄いと思うよ」
俺は流石だなーと呟きながら両手を合わせて拝んだ。
「ちょっと、あなたも今私のことをバカにしていることに気付いているのかしら」
「もちろんだよ西園寺。学年1位の俺が気付いていないわけないだろ? ハッハッハッ」
「そうですかはいそうですか。そんなに蹴られたいのならお望みの通り蹴り殺してあげるわよ!」
「ストップ!」
「――!?」
「ちょっと何!? きゃっ――」
勢いよく立ち上がった西園寺に俺は隣の凛を慌てて引っ張り寄せて膝上に乗せた。
「今蹴ったら凛も被害にあうけどそれでもやるのか西園寺?」
「くっ……卑怯よ藤森くん」
「卑怯? 俺はただ命令を強制実行しただけだぞ?」
「ゲスね」
「極めてるからな」
「……まあいいわ。次のターンまで精一杯に生きることね」
「死刑宣告!?」
恐ろしいやつだぜ西園寺。そして綺麗な脚をありがとう。
俺は目線を下げればすぐ目の前にある西園寺の美脚に心中で感謝し、凛のお腹を揉んだ。
「ひゃんっ。ちょ、ちょっと何すんのよ!」
随分可愛らしい声を上げるんだな凛。
「これも特権だ。我慢しろ」
「うぅ~……っ、覚えてなさいよぉ!」
「あっ、忘れた……」
「うざっ!」
「ハッハッハッハッ――」
ホント凛は良い反応するよなー、
「ちょっ、キモイってのその笑い。笑いながら頭を撫でるな!」
「ハッハッハッハッ」
「だからってお腹をつまむなぁッ!」
「いいなぁー凛ばっかり。結衣さんもお兄ちゃんとイチャイチャしたい」
駄々っ子の様な仕草で言う結衣の表情に我慢が出来なかった俺は、空いている右手で結衣の頬をプニプニと揉み遊ぶことにした。
「ふふふっ。くすぐったいよぉー」
「可愛すぎだろぉー!!」
俺が凛と結衣の柔らかさを堪能していると、いつの間にかあや姉と璃緒先輩の順番まで何事も無く終わっており、るみかちゃんの番にまで回っていた。




