終わりを告げる始まりの言葉
「ねえねえ、奏お兄ちゃん! 今更かもしれないけど、このゲームで1番になった人は奏お兄ちゃんに1つお願いごとが出来るっていうのはどうかな?」
「あっ、それいいですね!」
サイコロを握りながらるみかちゃんが突然そんなことを言い出した。そしてそれに賛同するひまりん。
「ちょっ、待てよ!」
「えっ、それキムタクのマネじゃないよね……?」
「ちげーよ!」
膝上の凛が振り向きながら引いた顔で言ってきたので、俺は内心「やだ恥ずかしっ」と思いながら否定した。
実際は合ってるんだけどな……引かれるとは思わなかったからさ……思わずさ……否定しちゃうことだってあるじゃんね。
「藤森くんのモノマネはどうでもいいのだけれど、朝比奈さんの提案には私も賛成だわ」
「結衣さんもさんせー! 絶対勝ってお兄ちゃんにお願いきいてもらうんだもんね!」
「ふふっ、お姉さんもそれでいいわ。ゲーム中坊やだけが命令出来るなんて不公平だものね」
西園寺と結衣と璃緒先輩もるみかちゃんの案に賛成しだす。
「あ、あや姉は賛成しないよね!? 俺の味方だよね!?」
「そんなチワワみたいな瞳で見ないで奏くん……!」
くそっ、どうやらあや姉も賛成するつもりだったみたいだな。
ということは全員敵に廻ったということか……。
「ふっふっふ……くぁっはっはっ……!」
「ついにおかしくなったのかしら。ご愁傷様とだけ言っておくわ」
「おいっ!」
ほんと平気な顔して酷いことを言うな西園寺は。
「いやさ、笑ってしまうのも無理ないだろ? いきなり全員敵になったんだぜ?」
「けれどそれでも坊やが勝てばかっこいいわよ?」
「本当ですか璃緒先輩!? 俺モテますかね!?」
「既に限界値のこの場ではこれ以上好感度は上がらないと思うけど、まあ頑張って頂戴」
「ん? まあはい! 頑張ります!」
なんか気になる発言が混ざっていたけど、今は気にする余裕がない。
「いい返事よ、坊や。ただ1つ言っておくわ」
「なんですか?」
「順位がつくことでお姉さん負けたことがないの」
「え……っ」
「ふふっ」
――――新ルールが追加されてから1時間。ついにゲームの終わりがきた。
「くそっ……」
「まさか本当にね……」
「うん。結衣さんもびっくりだよ」
俺、凛、結衣が悔しさを込めた眼差しで勝利者を見つめる。
「ふふっ、だから言ったじゃない」
「言い出しっぺなのに負けるなんてるみかショック……」
「ワタシもちょっと狙ってたからちょっと悔しいかも。けど相手が悪かったな……」
勝者は余裕の笑みを見せ、るみかちゃんとあや姉は悔しそうに少し唸っている。
「まさか本気のわたくし様が負けるなんて……わたくし様も地元じゃ負け知らずなのにぃ」
うおっ! ひまりんが本性出してる! しかもどこから出したんだその銜えてるハンカチ。
「会長、次は絶対に負けませんからね」
西園寺が腕を組みながら璃緒先輩を挑戦的な眼で見つめて言う。
「ええ、いつでも来なさい。お姉さんは負けないけれどね」
そう、なんとというかやはりというか、璃緒先輩が有言実行で1位となったのだ。
ゲームの中盤から圧倒的な差をつけ始めそのままぶっちぎりの金額を稼いで優勝したのだ。
「それじゃあお姉さんから坊やに望みを言おうかしら」
「ごくり」
「何を期待しているのかしら坊や。ふふっ、でもまあいいわ。きっとそれもこの望みで叶うでしょうし」
どこか艶めかしく微笑む璃緒先輩の思考が読めず、俺以外も唾を飲み込む。
「じゃあ望みを告げるわ。――想い人に告白しなさい、坊や」
「はあっ!?」
「いないとは言わせないわよ? これだけの子たちから想われて、坊やが誰にも想いを寄せないとは思えないもの」
「ちょっ……」
「ふふっ。告白されると思ってたのかしら? お姉さんが坊やの想像通りになるはずないでしょう? それにフェアじゃないわ。命令で付き合ったところで勝者とは言えないもの。だから――あなたから告げなさい」
「……は、はい」
璃緒先輩の真剣な眼差しに、俺は思わず頷いていた。
そしてあまりの急展開に、周りの女性陣の顔からは驚きとドキドキの感情が見て取れる。
そりゃそうだ。俺だってびっくりなんだから。巻き込まれたみんなも驚かないはずがない。
「決まったかしら?」
「……はい」
「じゃあ、その人を教えてくれるかしら」
璃緒先輩に促され、俺は一度深呼吸をするとそいつに向き直る。
「俺と付き合ってくれ――」
「俺と結婚してくれ」
21歳、夏――。
俺は少し洒落たバーで隣に座る女性に想いを告げた。
高校2年生の夏休みに行ったゲームをきっかけに付き合い始めてから4年。
社会人1年目の俺は、付き合い始めた頃から貯め始めた貯金が目標額に達したので、それで婚約指輪を勝って今この瞬間に臨んでいる。
ジャケットの内ポケットから婚約指輪を取り出すと、開いてカウンターに置く。
「もう1度言う――俺と結婚してくれ、西園寺」
「…………」
「あ、あれ、聞こえてるか? おーい、西園寺? なんで無言なんだよ」
プロポーズで無言とかきついぞマジで!
「……バカ……こんな大事な時くらい名前で呼びなさいよ」
「す、すまん……」
くっ、まさか3回も言うことになるとは。
「結婚しよう、愛莉」
「はい……。宜しくお願いします」
微笑みながら答えるその瞳には薄っすらと涙が浮かんでいた。
「愛莉……」
そんな彼女が愛しく感じた俺は思わず名前を呼んでいた。
「ふふっ。そんな真剣な顔をしたって気持ち悪いだけよ、藤森くん」
「……やっぱお前はそうだよな」
「私の一生を使ってあなたをいじめてあげるわ」
「ほどほどに頼む」
「ええ――愛してるわ、奏」
この話は私が生まれて初めて書いた物語で、終わりは無くずっと続けられる、続けたい話でした。けれどやっぱり物語には始まりがあるなら終わりもまたあるわけで、次の物語を作るためにこのキャラクター達の物語に終わりを作ってあげるべきだと思い、今回こういう結末となりました。初投稿サイトからこっちに来てくれた方がもしいましたら、約7年間もありがとうございました<(_ _)>




