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序幕 敗北の戦場にて、騎士伯独白

架空のファンタジーを舞台とした、思惑が交錯する貴族たちの会話劇です。

久しぶりのオリジナル作品となります。

全9話、完結まで執筆済みですので、最後までお付き合いいただければ幸いです。

王国軍は帝国との国境に築かれた関を5つ抜き、河を渡り防衛都市サニラスの攻略にかかる。

先頭に立つのは軍事的天才を謳われる、北方諸侯に属する若き伯爵。

騎士伯とも呼ばれている彼の軍功を、王国で知らぬものはいない。

一方で、彼に対して思うところのある北方統括公爵家の出の第二王妃と、その息子である第二王子が戦に介入する。

騎士伯による攻略は停止を命じられ、第二王子は自ら軍を率いて出陣した。


序幕


戦場で水に呑まれ壊滅した王国軍。

それを見つめる騎士伯と呼ばれる男の独白。


騎士伯の独白

あの方はご無事であったか。

しかし見事な大敗だな。

この紛争で、さて我が国が失ったものは、

・帝国の対王国軍事拠点であるサニラスの攻略失敗

・一度は手に入れたと思ったゼンダン河権益

・兵士10000名

・戦費大金貨一万

大損害だが…。

翻って私が失ったのは、

・これまでこの戦争に注いできた戦費と兵の命

のみ。

それも、サニラスへの総攻めでは後方に追いやられていた故壊滅的な損失はない。


…この戦い、『私の負け』は確定していたのだ。

サニラスを奪ったとて、私が気に入らない第二王子殿下に結局は勝ち取った都市の統治権は奪われ、防衛の義務だけ負わされただろう。

そうすれば異国の都市に張り付けられた兵たちから不満が募る。

戦費ばかりが募り、家臣からの突き上げもあろうな。


そして帝国は決してこの地の奪還を諦めまい。

勝っても分けても負けても私の敗北。

だから、王家を…第二王妃と第二王子の派閥を動かした。


なにも難しい事はない。


帝国への勝利をあの女の息子に奪わせて良いのか?あの騎士伯に奪わせて良いのか?

そう囁かせただけ。

実に素直なお方々だ。

予定通り、今なら勝てると横槍を入れてきた第二王子と北方公爵家に、私の軍は後方に追いやられた。


家臣たちは、それを飲まされた私に対する苛立ちもあろうが、それ以上に王家の横暴に腹を立てる。

さらに王家側が先走り勝っていたはずの戦いで大敗を喫した。

我らがあの都市を手に入れられなかったのも、戦費を無駄にしたのも変わらない。

だが、戦いの結果は『私の負け』から、『横槍を入れて美味しいところを掻っ攫おうとしてきた王家の自滅』にすり替わった。

結果は変わらないのに、家臣たちの不満は王家へ。

ああ、ありがたいことだ。


あの方もどうにか無事であった。

それだけが不安であったが…。


おかげさまで私が失ったものはなきに等しく。


騎士伯の独白

それにしても、まさかここまで愚直に力押すとは…。

地形を見れば、水攻めの危険は分かろうものを…。

この場の地理もわからん阿呆共が、王都から無理矢理駆り立て、強行軍に疲れ果てている将兵を押し立てたとて、この俺が容易に落とせん守りを張り続けた将には勝てまいさ。

さらに言えばーー勝たれたところで、王家自身が落とすのであれば後から手柄を掻っ攫われるよりは良い。

自ら軍を率いて落とし勝ち取った都市であれば、私に防衛を全て任せるのも座りが悪かろうしな。

お読みいただきありがとうございます。


貴族たちがひたすら語り合う、少し変わった作品ですが、お楽しみいただければ幸いです。


ご感想やご評価などいただけましたら、作者がたいへん喜びます。

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