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戒:R  作者: T
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3章 The wolf howlsⅡ

「なあ。これから、ヤブ医者とどう関わっていくんだ?」

と飯へ向かう途中、小瓶がちょっと不安そうな様子で問うてきた。僕と最初にあった時は口調といい、態度といい傲慢の化身のような感じだったのにもかかわらず、スネイカーと話すってだけで萎縮し、僕なんかに頼る(藁にも縋る)ような哀れな態度を取っていた。やはり年齢は上だが、中身はガキである。ロードの家系だったとはとても思えない。一応、小瓶の名誉のために、主従関係のせいで震えているだけであり、現実は全く怖がってないなどという都合の良い解釈でも語っておくことにした。

「ああ。これまでとは変わらずだよ。これから先スネイカーが何もしない可能性も残っているからな。ボロが出たら追求する。それまでだ。」

と断言してやった。ヤバい。カッコよすぎる。

キッチンではツクモが夜飯の準備をしていた。どうやらスネイカーは夜飯にするかと、自ら声をかけたのにも関わらず、自分では意地でも飯を作らないスタイルらしい。僕は食事の用意の手伝いをしようとツクモを尋ねたが、お前が手伝うと作業効率が下がると言われ、断られてしまった。

飯の用意を済ませると、3人はそれぞれの椅子に座ろうとしたが、僕の分の椅子がなかったので、リビングの椅子を拝借することにした。

「さて、皆さんお手を揃えて。」

タバコの香が抜けつつあるスネイカーが、鶴の一声のよう威勢よく言い、それに続く形で

「いただきます」

と軽めの儀式を終わらせた。よほど腹が減っていたのだろうか、スネイカーは55歳のくせに黙々と食べ続けている。全く噛んでないし、早食いだし、好き嫌い激しそうだしで、まさに医者の不養生だ。ツクモも同速に近かったが、彼女の場合、食べる量が僕達よりも少ない(一人だけ昼飯を食いやがった)上に、20分後に初回15分スペシャルのドラマを控えているため、確実にオン・タイムに見るためと言う明確な理由があるので、必死なのだ。しかも、しっかり同じエピソードを2周するため、録画も取ってあるという徹底ぶりである。

スネイカーは自分の食べ進めるのを一旦やめ、自ら話を切り出した。

「さてcode:dealが何なのかって話だったよな。」

「そうだ。新大陸の機器だったよな。あれはどこで作られたんだ?」

「MF。マニフェストからだ。まずご存知の通り旧大陸の国は、新大陸の国より技術面で大幅に負けている。あのcodeは全て新大陸では一般的なものだ。」

スネイカーは飯が冷めるといけないと言い、急いで飯をかっくらった。僕は自分の知識で話について来れることは不可能に感じ口をつぐんでいた。ツクモは早急に食べ終わっていた。そもそも話に興味がない様子で携帯でネットニュースをザッピングした後、

「やべ。もう始まるわ。」

とか言って、リビングへと向かい、テレビの前で正座で今か今かと待ち構えていた。スネイカーは自分の分のコシリを食い終えティッシュで口を拭いたあと、話を始めた。

「基本的に旧大陸では5種類のcodeしか使わない、それはデタウムにも書いてあるだろう。」

僕が5種類のcodeについての概要を知るため、デタウムを使おうとすると、そんなしょうもないことに使わんでええわ。とスネイカーに咎められた。デタウムの代わりに小瓶が教えてくれた。思えば小瓶はデタウム使用否定派(過激な方)であり、スネイカーがデタウムを使用したことを雑談中結構キレていたのである。(なお私は被害者なので、デタウムの使用が善か悪かなどは言えない。)まあこれらの理由から小瓶がcodeについて勝手に教え始めたのは無理もない話だった。

「ソルは6種類だな。まずはcode:α、2人以上がパッドを通じて、デバイスに予め記入された事項についての記憶を共有させるコードだ。犯罪の時の自供なんかに使われたりもする。これは codeが一般化される前のテスト盤で作られたものなんだが、codeの中で容量をほぼ食わないという利点があり、全国で普及がしたいるやつだ。

次点でcode:cure、1人にパッドを貼ることで、その人の心機能や肺機能の測定によりどこを損傷しているのか明確にするコードだ。その人が治療で済むのか療養すべきなのかが医者に頼るより早いし正確なのが強みだ。ゴールドハンターやる前の一般兵だった頃に置くお世話になった。

この2つは低価格で個人でも買えるんだが、他の3つ+1つは軍事用となっているぞ。

3つ目にcode:bomb、これは無人ミサイル、無人戦闘機の中心部に埋め込むチップ型のコードだ。デバイスを使うことで、弾道や爆破面積の予想を着弾直前まで自動で試行できる。また、codeを書き換えることで修正ができたり、撤退指示が可能だったり、結構、優秀だ。難点を上げるとすれば、code;bombは1チップしか反映されないので、大軍と相対する時に莫大なコストがかかることかな。

4つ目にcode:operate、これは異端中の異端だな。code:bombと同じチップ型で当事者の脳と武器などにつけることで機能するコードだ。デバイスを用いて、特殊な刺激を脳に与えることで、当事者は同じチップをつけている武器を脳内で操作可能になる。簡単に言うと、身体の一部になるってことだ。ナイフがブーメラン化したり、斧が背後から襲ってきたり、武器が生物と化す。話を聞く分には凄く聞こえるが、実際は戦闘しながら脳内で武器の操作をしなきゃいけないから、まあ戦闘狂ぐらいしか使えないと思うが。あと、脳内にチップを埋め込む必要があるため、大規模な手術が必要だ。

5つ目にcode:stimulate、これも脳に受けこむ系だがやってることは結構単純だ。要は一時的なドーピングだな。戦闘中、ハイになることで、技や能力を強めることができる。ちなみに、使った次の日の疲労感はヤバい。

最後にcode:SOL、これは我が国オリジナルだが、生まれた時や作られた時にチップを埋め込むことが義務化されている。これで、一人一人の行動を監視し、国民による事件であれば首謀者の脳機能を麻痺させることで迅速に事を解決を図るってことだな。以上が俺が知ってるcodeの一覧だ。」

第一に多分話を聞くよりデタウムを使ったほうが良かった気がする。そして第二にメモでも持ってくればよかった。内容は3割入っているかどうかの瀬戸際なのだ。だがしかし、小瓶が熱を込めて教えてくれたのでヨシとしよう。(話を聞くのに夢中だったため、飯が冷めてしまったことは埒外する)ツクモはテレビのcmの合間に、ちょくちょく台所に来ては皿洗いをし、皿を洗い終わったらリビングに帰ってまた正座で本編を待っていた。スネイカーは小瓶に対し、

「卿のお陰で、モーンにcodeが何なのか教える手間が省けた。いやー助かったよ。正直、モーンがcodeを知ることはまだ先かとも思っていたが、卿の説明でモーンもこのあとの会話に参加できそうだ。」

と自分の手間が省けたことを嬉しそうに語った。そして空いた皿の中に水を入れて、元いた席に座った。自分では絶対に皿を洗わないという強い意志を感じた。まあスネイカーが皿洗いも一人でし始めたら、本格的にツクモの存在意義が無くなるため、これはこれでいいのかと思い何も言わず、黙ってることにした。

スネイカーは自分のポケットから箱を取り出し、ツクモの眼の前に置いた。code;dealがに書かれていた文字と同じ文字が箱に書かれていた。

「これは私がcode:dealを買った時に中身を覆っていた箱だ。なにしろMFの文字が空いてあるからゴミ出したところをこの国のサツに見つかるとさ。まあ捕まりはしないが、まあ面倒くさいから俺の部屋にいれてる箱なんだけどな。ちなみにプログラムはいくら君たちといえども悪用されるといいけないから教えられないがな。」

「結局の所何なんですか」

「まあそう焦るでない。これはMFのgold&bald(略称:GB)が独自に開発したcodeのうちの1つだ。使用時の効果としては双方の魂を同一化するという能力だ。何言ってるかって?すまんすまん。分かりやすく言うな。2つの魂がペアリングの状態になっているとする。code:dealを使うことで2つあった魂が合体するってことだ。二つが一つになる。卿はモーンにとっての式神という枠組みからは外れ、モーンを構成している能力の1つになった。神と接している状態ではなく、神を纏っている感じだ。凄いよな。私がこれに始めて触れたときは新大陸の技術革新度合いに感激しつつも慄いたぜ。GBのような国家より強い企業だから作り出せる代物だ。魂を同一化することのメリットは何か?と言ったか。良い質問だ。この行為によって2つのメリットが生じる。まず最初にこれまで対処不能とされてきた精神攻撃。例えば、ソルの兵士がよく使っている黒い目なんかに対する明確なアンサーとなる。ペアリング状態のときは一人が精神攻撃を受けていると、それと同程度の攻撃が相方にかかるだろう。しかし、同一化により2人で一つのような状態になったため、精神攻撃によって受けるダメージは半減する。ああ。私は精神治癒なら使えるが、精神攻撃のすべは知らないのでここで効力を試すことはできぬぞ。医者なもんでな。

・・・

話に戻るとしよう。同一化することの2つ目にして、最たるメリットは思考の共有だ。ペアリング状態の時は互いが互いに直接、要件を話す必要があっただろう?これは戦闘面においてかなりの弱点となる。そうだ。連携ミスってやつだな。しかも、卿は神であるから、何かを伝える時はテレパシーを使わなければならない。モーンは知らなかっただろうが、テレパシーを使うことは、普通に話すのとは違いかなりの負担なのだよ。ただし、今、君たちは頭の中で会話ができるようになった。ましてや会話をしなくても思考の共有ができるようになったのだ。まあ普段はモーンのコミュニケーション能力の向上も含めて普通に会話することを推奨するが、戦闘ではさぞかし役立つだろう。え?やり方がわからない?まあ急ぐな。えっと、共有のやり方はデタウムを使うのと同じだよ。集中するのではなく拡張するって感じだ。」

僕はスネイカーの話を聞きながらもこれ以上冷めては、白米がカピカピになって飯が不味くなるし、作ってくれたツクモ様にも申し訳ないので、犬のように爆速で食べた。そのため、スネイカーの話は半分ぐらい忘れているだろうが、そもそも、小瓶の話も結局何なのか憶えていないし、小瓶が一生懸命聞いていたようなので、この場は小瓶に任せることにした。ツクモはいつの間にか正座から涅槃像の体制にに変わっていた。ぱっとみた感じ、寒気立つような恋愛ドラマの続編のようだった。というかスネイカーは何を僕に伝えようとしたんだっけ?と困惑しつつも、確か、デタウムと同じようにするって言ってたような事を思い出せた。

僕は深く息をつき、自分の領域を広げることに専念した。

・・・

|おい。お前様。理解るか?|

僕の意識がよくある合成音声に乗っ取られたような気がしたので、肝をつぶした。心配になっておどおどした様子だったが、四肢はしっかり動いていたのでほっと息をついた。それでスネイカーの顔を見てみると、僕がキョドっているを見て笑っていいたので、大丈夫そうであること。僕が僕であることを確信し冷静さを取り戻した。覚悟を決め、再度意識を拡大する。

|これはなんだ?|

|すげえな。ちゃんと通じてやがる。|

状況が鮮明になった。大体はスネイカーが言った通りで、僕の思考に小瓶の思考も含まれているのだ。彼は同一化といったが、どちらかというと一体化に近い感じがする。きっと僕がこの領域を拡張すれば、双方が言いたいことだけではなく、感情までもが理解できるようになると思うが、それは現状の関係に異常をきたしかねないので、あくまで不完全な状態に残すことにした。完全な一体化でなく、僕は僕、小瓶は小瓶と違いはつけておきたかったのである。

「ヒャハハハ。これは、お前の言う通り旧大陸ではできねえ。争いの発火点になる可能性が大いにあるな。いやー。人間って舐めたもんじゃねえな。」

小瓶は大都会の代物に心底驚いており、このcodeの存在に酷く感服していた。スネイカーもそうだろ。そうだろ。と頷いている。この拠点初の理解者がいることを知り、たいそう嬉しそうだ。で、残念なことに経験が全く無いと言って良い僕は旧大陸の技術と新大陸の技術の差を知らないため、へぇー。すげぇな。と人ごとでしかこのcodeの価値を計れず、以降話についていけなくなってしまった。ぼっちが確定した瞬間である。

「これが現状私ができる、モーンの強化策の全てだ。まあ今後も増える予定だがな。ちなみに、MFにはこのような最新鋭の物が万とある。ソルの兵士の数を持ってしても苦戦を強いられるだろう。」

この話を聞き僕は、なぜファーザーとソルが争っているなどという話を、ここアガプトでさえトップニュースに出てくるのか、スネイカー未熟な僕を諭すために具体例として用いたニュースがこれなのかがようやく分かった。ファーザーとソル、総力で劣っていても、ファーザーとMFが同盟を組んでいる事を考えると、技術の差が歴然なのだ。ソルは不用意には攻め込めないし、ファーザーとしては単純に総力差で押し切られる可能性もある。点と点が繋がった瞬間なのだった。

「なるほどね。おいヤブ医者。入手方法は極秘だろうし、ましてやソルの人間に教える理由にはいかないだろうから聞かないが、今後MFなどから物が届いたら見せてくれないか。単純な興味としてだな。」

どうやら小瓶は最新鋭の物に興味津々な様子である。普段からこの生意気な口調相変わらずだが、中身もガキなのだ。

|おい。お前の俺に対する侮蔑は丸聞こえだぞ。|

|僕は生前のお前の趣味を探ってやることもできるからな。|

|そうじゃなくて(汗)、気が散るからこの領域を閉じとけって言ってんだ。|

僕はそっと思考の領域を閉じた。

どうやら僕は彼の弱みを一つ握ったようである。今日寝るときには、ノート裏にでもメモをして置こう。きっとこの情報は使える。確信した。

「なるほど、まあ良かろう。頼み事を聞いてもらったのだ。従者だろうと恩賞を与えるのが人間のあるべき姿なのだろう。」

スネイカーはこの取引にすんなりと応じた、秘密主義の彼のことだからいつものように悩みに悩んで決める事が多いのだが、まあスネイカー自身も興味本位で買っている物も多いのかもしれない。未来というロマンに取り憑かれた2人なのだ。で、現実にしがみつきたい僕がいる。

「お、お前様の借りはスネイカーが物を見せると言ったときに速やかに駆けつけるってことでチャラにする。良いな???」

おっと小瓶は自分の過去(黒歴史)を人に見られるのを是が非でも避けたいようだ。見るからに焦っているご様子である。そういうわけで、以降僕と小瓶の主従関係がさらに明確なものになったのだった(笑)。

・・・

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