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大立ち回り



──桃ノ果実。



自ら海に身を投げた桃ノ果実。


その酷く冷たい海水が、付着した妖怪液を洗い流す。


そして吐き出された酸を交わし海面へと降り立った時──

「──ん゛っ⁉︎」


足首から強引に引き込まれる総身。


思わぬ妨害に、混乱する思考と共に体内の空気を吐き出した。


『息が……⁉︎』


行き止まる酸素に上手く頭が回らない。


踠きながら空気を求める彼の総身には、更に絡みつく黒い影。


その幾つも光る対の不気味な眼光は海の解体屋──


『海坊主か……』


絡みつく無数の影は海底へと引き摺り下ろす。


渇望する酸素に悶え苦しむ桃ノ果実。


やがてスッと力が抜けると、その総身は暗い海の底へと姿が消えた。


月明かりが照りつける海面。


緩やかになる波。


それがひとつだいだらぼっちに打ち付けられた時──



海が割れた。



巻き上がる水蒸気と共に姿を現したのは──


『【武装】』


桃色に炎色する桃ノ果実だった。


「推して参る」


その双眸が深くだいだらぼっちを見据えれば爆速で迫った。


威力を重視したモーション最大限に、大きく刀を振り被った桃ノ果実。


それに合わせる様に大きな拳が襲う。


「【鬼火断冴(きびだんご)】」


かち合あった衝撃は一瞬の均衡を見せると、真っ二つにぶった斬った。


そして肩まで走る豪炎の衝撃はだいだらぼっちの右腕を落とす程の結果を齎した。


更には噴き上がる筈の妖怪液は、その豪熱に焼かれ、一瞬の内に蒸発する。


海へと呑み込まれていく巨大な腕は、それだけで大きな津波を起こし海を荒らす。


銅鑼の様な呻き声をあげただいだらぼっちは、残った左腕で桃ノ果実を襲った。


「勝負あり」


迫り来る左腕に飛び乗り駆け上がると、眼前にて大きく振り被った。



──寸毫。



「──んぐっ⁉︎」


突如暗転した視界。


海面を水切りの小石の如く弾き飛ばされて行く。


気付けば左半身に猛烈な鈍痛と共に、遠目に見えるだいだらぼっちの姿。


そこに映った大妖魔の全容は先程とはまるで見違え、失った筈の腕は愚か、脇腹の中腹からも二本の腕が生え揃う。


左右合わせて計六本。


そしてそれは、先程桃ノ果実を羽虫の如く叩かれた要因だった。


「こほっこほっ……武装を会得していなければ間違えなく死んでいたな……」


一つ呼吸を整える。


まだ身体の負傷は大した事はない。


油断していたつもり無い。嘗てない強敵だと言う事も重々理解している。


しかしなんと言う様だ。


僅かに間、乱れた思考を整理すると一際気を引き締めた。


かちゃりと柄を握り締め正面に構える。


「ふぅ……」


一拍。


すればその脅威はすでに桃ノ果実の眼前へと迫っていた。


波立つ海原と共に、だいだらぼっちの猛攻が始まる。


迫り来る六つの腕。


一つ一つの動きは左程早くは無い。


しかしその一挙一動は圧倒的な質量と、それに伴う大津波により不安定な足場。


それにより躱しきれない猛攻は当然受け応えるしか方法はない。


「くっ……」


だがその圧倒的質量は一つ受ける事に尋常ではない程の疲労を募らせた。


「このままでは……」


この劣勢を覆すにはこれだけの質量の化け物を一撃で消し飛ばす程の衝撃が必要。


そんな出鱈目が許されるのは、この地においてはウリュウの他ない。


無論助っ人など考える余地も無い。


どうする……。


「しまっ──⁉︎」


その弱気な思考は一瞬の遅れを取った。


揺れる足場に僅かに掬われると、巨大な掌に拘束されたのだ。


どんなに足掻いても絶対的な質量の壁に阻まれ、一切の身動きがとれない。


そして錯乱するその思考に──



絶望が押し寄せた。



その眼に映るのは大口を開ける大妖魔の巨大な顔面。


「うあ゛ぁぁあああ!!」


武装を最大限に足掻く桃ノ果実。


しかしそれは分厚い肉壁を僅かに焦がす程度の衝撃。


そして吸い込まれる様に口元に入り込めば──



ゴクリ。



文字通り鬼一口に呑み込んだ。


荒れた海域が再び平穏を取り戻す。


そして響き渡る雄叫び。

その畝る様な重低音と共に勝敗を分けた。



「【狂瀾怒桃(きょうらんどとう) 大乱舞】」



乱れる無数の太刀筋。


不規則に流れる曲線と吹き荒れる剣圧。


遅れてその山の様な巨大な鬼の総身は──



千々に裂かれた。



崩れ落ちる肉塊は徐々に魔素と化す。


その現象とて大気を大きく荒らし、大妖魔たるに相応しい最後だった。


そして吹き荒れた魔素が纏まりを付け、その中心にいた桃ノ果実の総身が露わになる。


大妖魔に捕食された彼の総身は見るも無残は有様。


その体内の妖怪液にやられ衣服は愚か、皮膚を大きく爛れさせていた。


「すまぬウリュウ殿……」


しかし未だ意識を保っていたのは要因は桃炎の武装があったからに他ならない。


常人であればあっという間に消化されうる強酸。


それを大量に浴びようとも人型を保っていられる事は桃ノ果実の武装の練度、ないし大妖魔の脅威を知らしめた。


「少し……遅れ……」



そして、吸い込まれる様に沈んだ。



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