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貴女を許せるその日まで  作者: 華月彩音
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ご覧頂きありがとうございます

「本当に良かったの?」


馬車の中でルキアディス様は私を覗き込みそう尋ねた。

良かったとは何がだろう。

兄を許さなかったことなのか、家を出てきたことなのか。


「勝手に隣国に来てもらうことにしちゃって、ごめんね?どうしてもあの場に君を置いて行きたくなくて…」


そういうとルキアディス様は、申し訳なさそうにこちらをちらっと見た。


「友達とかもいたよね、急でびっくりしただろうし…で、でも、僕の国とここは友好関係にあるし、近いし、来ようと思ったらすぐ来れるから!」


それに、絶対悲しい思いはさせないし!と必死に言い募る姿が何がか可愛らしく思えて、そっと頭を撫でる。

婚約者な訳だし、これくらい許される…と思いたい。


「大丈夫ですよ、ルキアディス様。私は嫌じゃないですし、ちょっと楽しそうですし」


「ほんと?絶対楽しませるよ!約束する!!」


にこっと笑う姿は、明るくてまるで大きな犬のように見える。

思わず笑うと、彼はもっと笑顔になった。


「それに…ちょうど良かったとも思うんですよ」


「良かった?」


「私は、家族とあんまり近くにいない方がいいのかなって」


「なんで?」


先程までの朗らかな空気は鳴りを潜め、ルキアディス様はちょっと真剣な顔をする。

でも、その瞳の緑柱石は優しく暖かい。


「…私、兄様の事分からないわけじゃないんですよ。父のことも、母のことも」


そしてきっと、ストロクォーツのことも。


誰にも悪気はなかったんだ。たぶん。

ちょっと魔が差した部分もあるかもしれないけれど、きっと明確に酷い目に合わそうとした人はいなかった。


父は、公爵として家を守り繁栄させることに必死だった。だから少し、兄に期待を寄せすぎた。

母は、父を支えることに子を大人になるまで育むことに必死だった。だから少し、末っ子に愛を注ぎすぎた。

兄は、周囲からの期待に応え、公爵として相応しくある事に必死だった。だから少し、家族から目がそれすぎた。

妹は、母からの愛を受け甘えれば答えられることに慣れ、そのまま育ってしまった。だから少し、我儘だった。


だから、少し、真ん中の私にしわ寄せがあった。


ただ、それだけ。

でも、そのたったそれだけが、私には全てだった。

もう少し、興味を持って欲しかった。

もう少し、褒めて欲しかった。

もう少し、抱きしめて欲しかった。

もう少し、大事にして欲しかった。

もう少し、愛して欲しかった。


そう言って泣いた私は、嘘じゃないから。

私も少し、自分に必死になりたい。必死になってあの頃の私を庇ってやりたい。


だから、もう少し、あと少し、私の我儘を許して欲しい。


父を、母を、兄を。


ストロクォーツ、貴女を。


許せるその日まで。




ここまでお付き合い頂きありがとうございました。

本来短編にする予定だったのですが、思いのほか場面が飛んだので分けました。そのため、話ごとにかなり文字数が違うことも多く読みにくかったと思います。

一度完結にさせていただきますが、ルキアディス様側のお話も書きたいなあとは思っているので、また更新するかもしれません。


お付き合い頂き本当にありがとうございました。

最後になりますが、評価などしていただけると幸いです。


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