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貴女を許せるその日まで  作者: 華月彩音
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3

ご覧頂きありがとうございます。

今回短めです。

翌朝、まだ朝食を食べ終わってすぐの時に我が家に来客があった。

ストロクォーツは、もしかしてイエリィスピネ様が要らしたのかしらとソワソワしていたけれど、そうではなかった。

昨日の約束通りやってきた、そう、ルキアディス様である。


「わざわざお越しいただきありがとうございます、ええ」


父は、ガッシリした体を小さくてルキアディス様にペコペコと頭を下げる。

普段の威厳もあったものでは無いが、無理もない。

帝国の公爵と我が家とじゃ、同じ公爵でも立場が全然違う。

それに、昨日の夜会後に使者が来てから直ぐの訪問で、なんの準備も出来ていないのだから、仕方がない。


「こちらこそ急に来てしまってすまないね」


そう父に軽く返すと、こちらを見てパチリとウィンクをした。

仕草に昨日のことを思いだして、頬が少し熱くなる。

隣にいたストロクォーツも、きゃあと声を上げた。


「今私にウィンクしてらっしゃいましたよね!やだ、私にはイエリィスピネ様という心に決めた方がいらっしゃるのに」


困ったわと嬉しそうに声を上げるストロクォーツに、母は優しく声をかけている。


「スティは可愛いから無理もないわ。でも、今はお父様とトルフィレディウス様がお話されているから静かにしましょうね」


「はあい」


未だに指摘されないと治らないのかと、教育の不足に頭が少し痛む。

ため息を飲み込んで、チラリとルキアディス様に視線を向けると、彼はいくつか書類を父に提示していた。


「…と、言うわけでですね、アメシスト嬢との婚約をお認めいただけないかと思いまして」


「…はあ」


寝耳に水だったせいか、父は間の抜けた返事を返した。

どうやらルキアディス様は、婚約を結んだ際の利点から考えうる影響まで隙なく並べ立てたようだ。

一晩でよくここまでと、若干笑みが引き攣っているような気がしていると、ストロクォーツが不満げな声をあげた。


「ええ、トルフィレディウス様、お姉様とご婚約されるんですかぁ?」


甘ったるい媚びた声で話しかけると、ルキアディス様が片眉を上げてこちらを見た。


「そうだね、今そうなれるようアクアポリーネ公に頼んでいるところだよ」


易しくそう答えると、自分を見た事に気を良くしたのか、ストロクォーツは体をくねらせて続けた。


「確かにお姉様美人ですもんね、わかります。でもぉ」


彼女はその大きな瞳をキラキラさせて、持つ可愛さを全面に押し出しながら続ける。


「正直、お姉様、勉強ばっかだし地味だしあんまり面白くないですよ」


「ちょっ」


あまりな言葉に父はあんぐり口を開け、二の句が告げないようだった。

まだなにか続けようと、ストロクォーツは口を開こうとして、ルキアディス様の笑顔に止められた。


「うん。そっか」


「はいっ!」


同意にも思える言葉に彼女は、思い切り首を振る。

すると、ルキアディス様はふわりの笑顔を変え話を続ける。

顔は優しく微笑んではいるが、目が一切笑っていない。


「でも、それと婚約になんの関係があるのかな?」


「えっ」


「婚約は家と家の契約だよ、そこに個人の感情は入らない」


「え、」


「それすら知らないなんて、君…もう少し勉強すべきじゃないかな?」


とはいえ僕はアメシスト嬢に惚れてるけどね、とさらりと続けられ、頬が火照る。

ストロクォーツは、はっきりばっさり切られたことに、何も答えられずぱちぱちと瞬いている。


「と、いうことで、アメシスト嬢との婚約を認めていただけないでしょうか、アクアポリーネ公」


「…あ、ああ」


動きを止めていた父が、その言葉を聞いて動き出した。

圧倒されたようにさらさらと書類にサインをする。


こうして、ルキアディス様との婚約は終始彼のペースで成ったのだった。

よろしければ評価などしていただけると幸いです。

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