イーロン・マスク氏がトランプ氏を支持した理由
最初に前話の補足。
前話での「弱者の論理」、「強者の論理」とは、親ガチャ論(弱者の論理)や自己責任論(強者の論理)といった公正世界仮説を思考のベースにした強弱の理屈を指します。
人口のボリューム層は、公正世界仮説に基づく思考をよくしてますね。
さて、本題。
なぜリベラルのイーロン・マスク氏が極右のトランプ氏を支持したのか?
これ、実は疑問点なんかなくて、その時点では「支持しない理由がない」んだよね。
右とか左とかは、「結果」に過ぎなくてね。
そう考えるんじゃなくて、彼らは「アメリカの持続的な経済成長」って点で合意してる、ってところを見るべきです。
トランプ氏の掲げる規制緩和や税制改革、さらに「アメリカが強い国であり続ける」ことがイーロン・マスク氏にとっては都合がいいのです。
アメリカは民主主義の国なので、彼らの合意(アメリカの持続的な経済成長)を達成するには大衆に訴求しなければならない。
大衆に訴求するのなら、SDGsやDEIなんかを掲げるんじゃなしに、公正世界仮説に訴えるのが手っ取り早いと、そう考えたんじゃないのかな。
リベラルで勉強ができる人たちは「自分たちがいいと思うものは大衆もいいと思うはずだ」と思うところがロマンチックで、それが故に選挙で負けている。
彼らがいいと思うもの(例えばSDGsやDEI、LGBTQ)は、上位層に訴えるにはいいが、大衆に訴求するには抽象度が高すぎる。
気候変動の無視や化石燃料への依存やらが、外国に新たなインフラを明け渡すことになって将来的に行き詰まることはイーロン・マスク氏も十分にわかっている。
でも、そこを論点にしたら大衆に訴求できないし実利は遠のく。だから、翻してトランプ氏と合意したんです。
時点における落とし所があらかじめ見えているということですね。
さらにいうと、えっくせず(旧Twitter)を買収しトランプ氏のアカウントを復活させて自由に発言させた際のエコーチェンバーの効果をイーロン・マスク氏が事前に考慮していたことも考えられますね。
えっくせずは特にエコーチェンバーが強いメディアですから。
彼はアルゴリズムにも介入してますしね。
ちなみにですが、公正世界仮説による大衆扇動が左右どちらにも使えることを軽く示してみましょう。
「ぼくらは資本家に搾取されている革命だ」といえば左だし、「ぼくらは外国に搾取されている保護主義だ」といえば右です。
右か左かはどうでもいいんです。選挙に勝って合意が守られさえすれば。
将来的に行き詰まる部分については選挙に勝ったあとで、おいおい調整していけばいい。
視野が開けた先で、トランプ氏の政策がそんなにドメスティックでなくなる可能性もありますしね。
だから、イーロン・マスク氏はトランプ氏を積極的に支持した、ということです。
そばにいればこそ、できる介入もあるということで。今回はそんなお話。




