グリーンピース? 贅沢な名前だねぇ
ゆるーいよ。
ぼくはグリーンピースが嫌いである。
ここでいうグリーンピースとは、ピラフなどの料理に入っているブヨブヨの緑色のやつだ。
あいつが皿にいるのをみるや、食事に入る前に、ぼくはまっさきにあいつをよける。
食器の端のほうにまとめておく。
ちなみにスナック菓子に入っているものは普通に食べられるのだ。
苦手意識はない。
問題にしたいのは、給食に入ってくるあいつだ。
子供の頃から、そして今でも。
ぼくはあいつが大っ嫌いなのだ。
まるで老人の皮膚のような、たるんだブヨブヨの皮。
噛むと溢れ出る、わずかに甘いミネラルたっぷりのヌルい汁。
一拍おいて、「おっす!」と顔をだす強烈な青臭さ。
噛むごとに、じわじわと精神が削られる。
名前も気にくわない。
何だ、あの平和そうな名前は。
お前はもっと邪悪な名のはずだろう?
グリーンピース? 贅沢な名だねぇ。今日からお前は湯婆婆だ。
大陸あたりであの食べ物が、本当に湯婆婆と呼ばれていたとしてもぼくは驚かない。
小学校の頃、
食事前にぼくがすべてのグリーンピースを食器の脇に避けているのを見て、いっしょに食べていた子がグリーンピースをぼくの食器に追加してくることがあった。
何かをひらめいたようなニコニコ爽やかな笑顔とともにだ。
その子の背後に、ぼくはどす黒い魔物を幻視した。
外道 of 外道。
悪鬼羅刹の所業。
あまりの出来事に、そのときのぼくは何も言えなくなった。
ただ追加されていく緑のアイツをぼうぜんと眺めるのみである。
あとで聞いたら、ぼくがグリーンピースを大好きなのだと思ったそうだ。
あんなものが好きな人があるか?!
給食を残すことは許されていなかったので、結論、山のようなグリーンピースを、ぼくは牛乳で流し込んだ。
「ピラフに牛乳」という、ヨハン・セバスチャン・バッハもびっくりの「とち狂った献立」に、その日、ぼくは敗北感を感じながらも感謝した。
ありがとう牛乳。
でも、その組み合わせはありえない。認められない。
牛乳に屈したあの日の屈辱、ぼくは忘れていない。
今でもあの日を鮮明に思い出せるほどに、ぼくはグリーンピースが嫌いである。
今回はそんなお話。




