『因果』と『相関』と『ゴールシーク』(鰯の頭を再評価する)
みなさん、エクセルのゴールシーク機能ってお使いになったことありますか?
ああいうのを想定してください。
使ったことがない人にご説明すると、ゴールシークとは、ざっくり結果から原因をでっちあげる手法です。
難病の人に、『お前はご先祖様の因縁のせいでこうなっているのだから天使の入ったありがたーいツボを買え』と言い出したりさ、犯罪が起きたときに動機について自称専門家がする与太話だったりさ、まぁ、思考のアプローチの方向性が狂っている類の出来事を想像してもらったらいいかな。
ぼくは、いままでゴールシークを『無益で無価値なもの』として完全に無視してました。
今だって、好きか嫌いかでいうと大嫌いです。こういうの。
仕事で、アホの説得用にどうしてもゴールシークをしなければいけないときなどは嫌々やっていました。
そう。
しばしばアホの説得用にゴールシークが必要になるのです。
ときに『無益』とわかりつつ、ゴールシークでデータを作らないといけないの。
それは予算を勝ち取るためだったり、補助金を得るためだったり、借入を受けるためだったりするんですけどね。
先に着地点を決めて、そこから母体を導かないといけない。
官僚とか銀行員だって馬鹿じゃありませんから、彼らも提示されたデータが無益なものだとわかっているんです。でも税金を投入するにはアホを説得しないといけないよね、アホが納得するレベルの稟議を通さないといけないよね、みたいな。
意味のない作業を押し付けられてバカにされてる感がすごいし、すげー無駄と思ってやっていました。
でもね。
最近はゴールシークにも『質』の差があるとわかったので、無視せずに一つの思考の軸として考えるようにしました。
さすがに進化心理学と陰謀論を等価と見るのは失礼かも、って思ったんです。
そんなわけで、最近は『因果』と『相関』と『ゴールシーク』の3軸をベースに、ぼくはものを考えることにしました。
例として、『塩分と血圧』の関係について考えてみます。
塩分を多く摂ると高血圧になるぞ、みたいな話。
みなさん、多分お聞ききになったことってありますよね?
その根拠とされているのは、疫学的な相関の話です。
確度はかなり低い。
どうやら食塩の感受性が高い人と低い人がいるようで、高い人に限っては、摂取塩分量と血圧が相関するんじゃないか? みたいな話でした。
感受性を一緒くたで検証すると、食塩の影響は正規分布しちゃうそうです。
データ(根拠)の質としては糞だよね。
根拠がグラグラの疫学的相関なので、生理学的機序っぽい話は全部ゴールシークと見ていいでしょう。
『血管中のナトリウム量が多くなると水分がどうのこうので血圧がー』みたいな情報は、ぼくにとってはまるっといらない情報です。
ところがね。これ、安心を与えるためにはいいんですよ。
『食塩を控えてるから大丈夫だ』と患者さんが安心すれば、その患者さんは本当に血圧が下がるかもしれません。
ぼくはいままでこれを無価値と切捨てていたけれど、プラシボだろうと、効果が出ればそれはそれで価値はある、ということです。
人間って、ぼくが思うよりもうちょっと複雑だったのだ。
鰯の頭を再評価するような、今回はそんなお話。




