氷の洞窟とカイコの話
陽が落ちるのが少し早くなってきましたね。
暑い日は、エアコンやらアイスやらがあればいいのだけれど、何にもないと地獄だよね。
昔は、どうしてたんだろうなぁ。
今回は、富士山の麓にある『氷穴と風穴』のお話。
氷穴や風穴は、一年中涼しい天然の冷蔵庫みたいな洞窟です。
洞窟内の気温は常に0度~3度ぐらいに保たれています。
昔は、ここでできた氷をお城(江戸城)に運んでいたらしいですよ?
この氷穴と風穴、正式名称は『鳴沢氷穴』と『富岳風穴』というんですが、そこを訪れたときのお話です。
まず『氷穴』の方ですが、狭くて階段が急で独特の雰囲気がありました。
地上の入り口から、石の螺旋階段を下っていき狭い筒をくぐるような構造になっています。
階段を数段くだると、まだ屋外なのに突然一気に寒くなる。
高圧低温の空気があがってくる感覚はすごく不思議。
普通は、暖かい空気があがってくるじゃないですか?
ここでは、冷たい風があがってくるんです。
急に体感温度が下がる。
もう少し降りると今は使われてなさそうな古井戸がみえ、ここで、岩と流れる水が空気を冷やすラジエーターのような役割を果たしていることがわかります。
上昇気流が途中で冷やされてるんですね。
さらに階段を下ってくと、人一人がしゃがんでやっと通れる大きさの筒状の空間があり、奥に部分的に開けた場所がある。
開けた場所には氷柱がびっしりあって、これが江戸城に運ばれたのかぁ、と感慨深くなります。
仕組みとしては、空気が膨張するとき熱を奪う性質を使って温度が下がってるとのことで、冷媒は違えども、電気冷蔵庫と同じ原理のようです。
つまり、アレだ。
見物に来たぼくらも、せまい筒状の場所から広い空間へ空気を押し出すことで、天然冷蔵庫の一部として、氷穴内の温度の低下に貢献しているかもしれない。
ちょっと利用されてしまった感といいますか、してやられた感がありますねw
気温は低いのですが、中で階段を登り降りするので、長袖一枚で足りる感じでした。
風穴のほうは、といいますと……。
風穴は風穴で雰囲気があります。
入口に行くまでに、樹海をほんの少し歩くんですよね。
樹海。
そう、あの有名な青木ヶ原樹海です。
同じような見た目の細い巨木の根がことごとく浮いていて、ああ、岩盤が堅いんだなぁと思われます。
養分が取れないから、太くはなれない。
もっと暗くて陰鬱な印象かと思っていたのですが、そんなことはなく、樹海には人の手が入っており歩いても怖い印象はなかったです。
やっぱり、風穴にも数段降りると気温がぐっと下がる『低温の上昇気流』がありました。
風穴も氷穴と同じぐらいの温度なんですが、氷柱らしい氷柱はありませんでした。
氷穴と比べると、イマイチ迫力にはかけるかもしれません。
氷穴に比べて、天井もそこそこ高くて歩きやすいです。
風穴の方は、種やカイコを保管する箱があるのが印象的でした。
種の保存はわかるとして、なんで、カイコ? と思ったんですが、要は、絹を生産する際に生産量を上げるために、『二期作にしよう』みたいなことを考えたんですね。
カイコの羽化の時期を、寒い風穴を使うことで遅らせているんです。
カイコってご存知ですか?
絹を作るモフモフした蛾なんですが意外とかわいい。
カイコは完全に家畜化されていて、羽化しても飛ぶことができず自力では物も食べられず、交尾して死ぬしかないという。
野生で生きられなくなった一つの『種』の成れの果て、といった感じ。
良いか悪いかはあえて言わないけれども、そりゃあ神社にも祀られるわ、と思いました。
民俗学方面も調べると面白いですよ。
金色姫伝説とかさ。
サンショウ(蚕生)貝が採れる小貝(蚕飼い)ヶ浜とか、茨城県日立市のほうに、養蚕の始まりの伝承があるようです。
地名にも、今まで気づかなかった謂れがあったりして面白いです。
鬼怒川って、絹川だったのかよ!? みたいなw
日本の養蚕は、ナイロンの発明によって縮小します。
そんなある意味多くの蚕を救ったナイロンですが、ナイロンはナイロンで開発者のかたが企業に研究成果を奪われて自殺してるという闇深ぶり。
調べると面白いかもです。
暗いまま終わるのもアレなので、(人間にとって)いいお話も一つ。
カイコは研究によってDNAがすでに解明されており、それを使って新型コロナワクチンの開発なんかにも貢献していたりするそうですよ。
いろいろな知的刺激の得られる場所だったのです。夏休みの自由研究にぴったりかも?
今回はそんなお話。




