表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔剣から始まる物語  作者: ほにゅうるい
第二章 神と敵対する剣
38/45

031 エピローグ

人は言う。死にたくない。生きているのだから。


彼は言う。死にたくない。生---ているのだから。


 やっと西広場まで戻ってこれた。


 途中腐肉とか血がついた服のまま広場に戻ったら確実に怪しまれると思って、勝手に他人の家から半袖とズボンを拝借して着替えていたら遅くなった。この混乱の中きれいな服になっているのは変に思われるかもしれないけど、腐肉がついた服を着ているよりましなはずだ。


 ……辺りが暗くなってる。夜か。学校終わりから、ずいぶん長い1日だったな……。


 夜だけど、広場の中央に大きな明かりがともっているから、広場はけっこう明るい。あの明かりは何だろう。大きいの大人ほどの大きさの球体から、真っ白な火柱が立ち上っている。どういう仕組みだ? あれ。


「……ユベル。どこに行っていた!?」


 白い火柱を眺めていたら、クロムンが僕に大声で呼びかけながらやってきた。


「よかった。ユウ、どこで何をしていたの?」


 シェスも僕を見つけるなり、かなり焦った様子で僕に近づいてきた。


 2人とも、凄く心配そうに僕に話しかけてきた。セレネイもいたけど、それほど僕を気にしている様子じゃなかった。……今は助かる。


「服がさっきと違うよね? どうしたの?」


 僕と会っていた人は、やっぱりそう思うよね。服が変わったら怪しいよね。さて、どう答えよう。こうなることはわかっていたけど、広場に戻ってくるまでにどう返答するか思いつかなかった。


「ちょっと、優しい人に着替えを貰って。あはは……」


 クロムンは僕の発言に目を細めて、表情を硬くした。言い訳が適当すぎて、怒ったかな? ごめんなクロムン……。


「……顔色が悪いぞ。どうしたんだ?」


 顔色……? 僕の発言に怒ったわけじゃなくて、心配してくれているのか。心配かけないように僕にあったことは隠し通したいけど、流石に顔色まで誤魔化せないみたいだ。とりあえず、笑顔を浮かべておいた。嘘がいつばれてしまうのか心配で、左手で、頬をかいた。


「あれ? 左手どうしたの?」


 そんな僕の動きを見ていたセレネイが、急に僕の左手を指差して言った。左手が、変?


 ……え!? 「!!」


 僕だけじゃなくて、シェスも大きく反応した。左手と言えば、魔剣がしまってある部分だ。


 クロムンとセレネイに見られてもいいように魔剣の力を抑えて、左の二の腕に描かれた黒い模様を消す。その後に、袖をめくって左手を確かめてみた。……確かに少し変だ。肩から肘までが少し、茶色くなっていた。半袖だったからセレネイに茶色くなった肘の部分が見えたんだろうな。


 ……これは確か、前に一度魔剣の力を解放したときの状態に似ている。神素を流した聖剣、ベルジュで治せるはず。


 そう思って、鞘にしまったままのベルジュに神素を流して左手で触れてみた。でも、いつまでたっても焼けるような感じが来ない。どうしてだ?


 僕の左腕はいったいどうしたんだ?


 キィン……


 あれ? 声が聞こえにくい。なんでだ?


 ィィン……


 お、おい!? 全然聞こえないぞ!!

 

 何で急に魔剣の声が聞こえなくなったんだ? もしかしてあの戦いで何かあったのか!? エネルギーを急に使いすぎたからか? それとも、あの攻撃を上手く回避できなかったから? 僕が、力を抑えているから? どうしよう、今僕は魔剣を使えるのか? 魔剣を使えないのにあいつが来たら、僕はどうすればいい? 僕は


「……う、ゆう……ユウ!!」


「うわっ、あ。ああ」


 魔剣に集中していたせいでシェスに話しかけられていたのに全然気づけなかった。


「ねぇ、ユウ。大丈夫?」


「……大丈夫。なんでもないよ」


「……本当か?」


 クロムンが確かめる様子で僕にもう一度聞いてきた。大丈夫、じゃない。


 だれか、助けて欲しい。


 ……でも僕はその言葉を吐き出すことは出来ない。いや、そんなことをしたくない。





 だって、僕は魔剣使いなんだ。僕のことに巻き込めない。皆に迷惑はかけたくない。





「うん……大丈夫だよ」


 僕が出来る限りの笑顔でそういうと、2人はそれ以上聞かなかった。















 合宿は延期になった。


 南の町は半壊状態だ。合宿なんてしてる場合じゃない。街の修復作業が忙しくて人手がいくらあっても足りない。この国じゃ高等部以上の学生は大人とほとんど同じくらい働ける。よほどの用事がなければ学生も復興作業に従事することになる。大人になればなるほど神素と魔素の回復は遅くなるから、むしろ学生のほうが重労働に適していると言える。練習にもなるし。


 僕も2日間ほど町復興の手伝いをした。瓦礫の撤去作業を手伝った。ちょうど、あのローブの奴と対峙した場所での作業だった。なるべく考えないようにしていたが、時々吐き気を催して大変だった。そういえば、僕がいなくなった後どうなったんだろう?





「ディモン様、失礼します」


 僕は、その話をディモンさんに聞こうと思ってディモンさんの部屋に訪れた。


「おお、ユウか。今は、2人っきりだ。様はいらないぞ」


「……わかった、ディモンさん」


「さて……事件の話が聞きたいらしいな」


 僕はあの後どうなったか。事件の全貌は何なのか。ディモンさんに無理を言って話を聞かせて欲しいと頼んだ。デイモンさんは、他言しないことを条件に話してくれることになった。


「まず、悪魔の話だな……あの件については、2人の手柄だ。助かった」


 悪魔の召喚はどう行われたのか? これに関しては僕とシェスがディモンさんに伝えたことでかなり早い段階で解決することが出来たみたいだ。理由は不明だけど、不発だった魔窟の撤去も安全に行えて、あの魔窟を用いた悪魔の召喚道具は既にこの国から排除されたみたいだ。


 それはどうやって仕掛けられたのか、ということも教えてくれた。邪法を使ったことがない人間に対して、この国はあまり厳しい入国制限をしていない。だからといって、この国に入って邪法を使おうと言う人間は、自殺願望を持ってるか、狂人のどちらかだ。邪法なんてこの国で使うはずない。それに、知る必要もない。と言うのがこの国の常識だ。


「この常識を逆手に取られた」


 とディモンさんは言った。邪法をまったく知ろうとしなかったこの国は、邪法に関しての情報が古いと言うことらしい。今回使用された道具は、魔素の使用が盛んなレムリア大陸で作られた新しい邪法の道具だった。だから、今回の事件が起きた。


 ……なるほど、な。警備の人が持ち込まれた道具が何であるか分からなければ、持ち込まれないようにすることも難しいだろうな。それが悪魔を召喚する道具だとしても、警備の人が知らなきゃ誤魔化しなんていくらでも出来る。事件の実行犯は道具を簡単に持ち込むことが出来たんだろうな。


「魔素に対しての認識の改めがこの国で行われていると言うのに。今回の一件でまた魔素使いの印象が悪くなった……」


「何で魔素に対しての認識の改めって行われたんですか?」


 この国は、邪法と言うより、魔素自体を拒絶していた節があるのに。


「キッチンにある火を簡単に灯す装置。水を操り、ものを冷やして置ける空間を作る道具。あれは全部、魔素を利用して動いているものだ」


 ……確かに。アンデも料理するときは魔素で火をつけて料理していたな。


「魔素は便利だ。神素には出来ない、自然の力を操る技術がある。だから魔素を認めて、もっと民の生活が楽になる道具の研究を進めるべきという動きがここ最近活発になっていたんだ。その矢先にこれだ……はぁ」


 ディモンさんは深いため息をついた。……もしかして、神素が盛んなここムー大陸より、魔素が盛んなレムリア大陸のほうが生活水準はたかいのかな?


「それで、その邪法の道具を持ち込んだ犯人は見つかったんですか?」


「……ああ、見つかったよ。ただし、死体で、だ」


 悪魔召喚に使用された道具を持ち込んだ人間の写真があったらしい。警備の人が、流石に得体の知れないものをそのまま国に入れることも出来ないと言う事で、何かあったときのためにカメラでその人物を撮影していた。その写真を元に今回の犯人を発見することが出来たみたいだ。


 写真に収められていた人は4人。4人とも、体のどこかに真っ黒な痣が出来ていて、邪法の使用の痕が認められたから、実行犯で間違いないそうだ。


「死因は、邪法じゃなくて、何者かに殺されたみたいなんだ」


 3人は心臓を一突きされて、死んでいたらしい。今回の事件の首謀者であると思われる最後の1人は首を刎ねられて殺されたらしい。なぜか、体中が腐っていて、写真のうちの1人と特定するのは困難を極めたとのこと。腐っている理由に僕は心当たりがある。フェンリルだ。……ローブの奴の仕業だ。


「そして、今回の1件にはもう1人重要な人物が関わっている」


「……」


 ディモンさんが鋭い目つきで手に持っている資料を睨んだ。恐らく、あいつだ。


「シャルルに封印されていた伝説の4剣のうちの1つ、フェンリルの所持者が現れたとのことだ」


 あの時僕が助けた上位騎士が生きていて、この事実を伝えたらしい。フェンリル所持者がエイオーツに現れたことは上位の騎士達と、上位の貴族たちにはこの事実が発表されて、シャルルや、もう1つの大国にもその連絡がいった。この1件で各国の警備がかなり強化され、入出国手続きが厳しくなった。また、少数の上位冒険者にもその情報は流れて、フェンリル所持者の首に莫大な懸賞金がかけられた。この事実を知っている冒険者たちは一攫千金を狙って躍起になっているらしい。


 その厳重体制でフェンリル所持者を探しているが、この6日間まったく成果なし。ディモンさんがため息ばかり溢していた。


「フェンリルの能力は謎が多いが、2つ判明している。1つは相手のエネルギーを吸い取る能力。もう1つは、腐らせる能力だ」


 ディモンさんの後半の発言に、反射的に体が震えた。


「だが、腐食能力はフェンリルの能力じゃないかもしれない。誰も確認していないんだ。ただ、その場に腐った死体があったというだけなんだ。……すまない。大丈夫か? 不用意に怖がらせてしまったな」


 ディモンさんが優しい目つきで僕を気遣ってくれた。違う。ディモンさんのせいじゃない。そして、腐食能力はフェンリルの能力なんだ……。


 ……伝えたい。少しでもこの事態収束に協力したい。でも、この情報を知ったときの僕は魔剣を使っていた。ばれてしまえば、今は優しいディモンさんも僕を殺しに来る。


 きっと、あんなふうに僕は死ぬ。


 ディハイルみたいに。


 アンデみたいに。


 あの時僕の近くにいた腐った騎士のように。



 きっと。きっと……。



「ユウ君? 本当に大丈夫かい?」


 ……。落ち着け僕。ばれなきゃ大丈夫。落ち着け……。魔剣のことを知っても友達でいてくれる人もいるじゃないか。大丈夫。良識のある人だっている。落ち着け……。


「大丈夫です……」


「安心してくれ。私たち騎士が必ず捕らえて、フェンリル取り戻す。心配は要らない」


 ディモンさんは力強く僕を見つめる。口調に、優しさを感じる。不思議と信じたくなるような、そんな雰囲気を感じる。


 でも、……無理だ。あいつを捕らえるなんて。……いや、なんて失礼なことを考えているんだ。くそ。体の震えが止まらない。


「大丈夫だ。大丈夫。私たちに任せておきなさい」


 ディモンさんがいつの間にか僕に近づいてきて、頭を撫でてくれた。頭を撫でられているせいでディモンさんの表情は見れないけど、きっととても優しい顔をしているに違いない。


 ごっつくて、大きい無骨な手のひら。アンデを思い出す。


 ……あったかい。僕の中で張り詰めたような糸がほぐれるような感じがした。全てを吐露してしまいたい気分だ……。


「僕……」僕は、実は、この左手に……? ……!? 目が、熱い!! え? 僕は、何をしようとしている!?


「ん? どうした?」


 泣いてしまいそうだ。魔剣のことも喋ってしまいそう! そんなの、だめだ!


「い、いえ! なんでもないです、話聞かせてもらってありがとうございます」


「お、おい?」


 僕は素早くディモンさんの手のひらから離れて、ディモンさんの部屋を後にした。






Side ディモン

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「お、おい?」


 ユウ君が涙を堪えた様子で私の部屋からあわてて出て行った。……泣き顔を見られたくないのだろうか。一体、何に対する涙なのだろう。


「ふぅ……」


 思わずため息が出る。ユウ君が、心配だ。心配だが、油断も出来ない。


「……いるか?」


「ここに」


 私が呼びかけると、私の部下である男が現れた。


「娘の護衛は、一時中止だ……シャルルに居た頃の彼の情報を出来るだけ集めて欲しい。出来るだけ早ければ早いほどいい」


「お任せを」


 私の頼みに一切疑問を持つことなく、すぐに部屋から居なくなった。きっと10日ほどで全てを調べ終えてくれるはずだ。彼はとても優秀だ。







 シェスが魔剣に襲われたときも、彼はずっとシェスの近くにいた。


 シェスが魔剣に襲われた件。彼は、ずっとシェスを見守ってきた。だから、私は知っている。


「ユウ君。君は魔剣を持っている」


 そして、今回の件。ユウ君はフェンリル所持者と何かしらあったに違いない。ユウ君の様子を見て確信した。


 ……すぐに殺すべきだ。彼は、危険な存在だ。







 だが、娘を命がけで守り、クレリア君を救ってくれたのも事実。きっと、なぜか助かった騎士達も彼が何かをしたからじゃないか。と私は思っている。


「アンデよ。君は、彼がそんな存在であるのを知って、なお殺さず育てたのか? 彼は、危険ではないのか?」


 今は亡き親友に問いかけても、返事は返ってこない。そんなことわかっている。だが、問わずにはいられない。


 ユウ君は信用していない。だが、私は親友を信用している。


「……私は」


 彼は、殺すべきだ。今すぐ。……しかし、親友の息子のような存在に手をかけることは、できない! そして、私の中で泣きそうになった彼の表情。頭をあのまま握りつぶせばすぐに殺せてしまいそうな、魔剣使い。今までの魔剣所持者とは違い、理性を保ったユウ君。



 私は。彼が魔剣使いだと言うのに、家族のような存在だと感じている。


「ふふっ」


 ……思わず笑いがこみ上げる。私は、彼を信用していないのに、家族のような存在だと思っている? 危険だと、油断してはいけないと思っているのに、彼のことを心配している?


 なんて矛盾だ。なんて酷い人間なんだ私は。はははっ。


 






 ……私は、一体どうするべきなんだ!!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――






 ディモンさんから話を聞かせてもらって、部屋を出ると、マセガキが僕を待っていた。


「おにいちゃん? 剣の練習はしないの?」


 マセガキ……。


「……今は、無理だ」


「どうして? 私に教えてくれるって言ったのに……クロムンさんと昨日もう一度やろうって約束も破って、何があったの?」


 何が、あったんだろうな。


 僕は両手を見る。今は健康そのものの肌色だ。でも、目を瞑ると、木剣でも持つと、あのときのことを思い出す。青い靄が僕の体を腐らせ、自分の肉が腐って落ちていくあの光景。今でも半分ほど夢なんじゃないかと思っているくらいだ。でも、夢じゃないって体が教えてくれる。


 その証拠に、閉じた目を開いたら、両手が微かに震えるんだ。


 魔剣がどうにか腐らないようにとしてくれたから、死なずにすんだ。だけど、腐った部分が崩れ落ちて、普段皮膚に隠れている部分が丸見えだった。黄土色の腐敗して裂けた皮膚の間から見えた真っ赤な僕の体。ピンクや白の生々しい体の繊維。


 ……もし魔剣にエネルギーが無かったら、一瞬で僕は腐って死んでいただろう。


「え、お、おにいちゃん!? どうしたの!! 大丈夫!?」


 怖い……! ……でも、あいつを放っておけば大勢の人間を殺す。マセガキが僕の視界いっぱいに納まる。


「な、なに?」


 あの大勢倒れていた騎士達。エネルギーを吸い取られすぎて死んだ人も多くいたらしい。あいつは、この国を食い物にしようとしているに違いない。


 そうしたら、僕の命の恩人でもあるディモンさんや、友達のクロムンやシェス、ディエル、ルニ、マセガキ。守りたい人が皆殺されてしまう。


「……僕は大丈夫」


「でも、顔色悪いよ、おにいちゃん……」


 戦うのは怖い。でも、戦いたい。恐怖もあるけど、怒りもある。僕は、くじけない。絶対。でも、今の僕は非常に無力だ。


 肩から肘辺りまでだったのが、今は肩から左手首くらいまで少し肌がこげたみたいな茶色になってしまった。魔剣の声がさらに遠くなって、ほとんど聞き取れない上に、魔剣が出せない。


 キィ……ン


 意思は感じるのに、何を言ってるかわからない。くそぉ。


「……マセガキ」


「何?」


「やっぱり、訓練しようか」


 とにかく、魔剣が使えない今もっと強くならないと、あいつに勝てない。前に進めない。


「……無理してない?」


「ちょっと、だけね」












 青空が、僕を押しつぶすかのように広がっていた。


 あまりにも青空が広くて、僕がとてもちっぽけで、すぐに殺せてしまう、か弱い存在に思えてきた。


「おにいちゃん……お水」


「……ありがとう」


 僕は、マセガキと神素と魔素を使わないで摸擬戦をした。結果は悲惨。摸擬戦とも呼べるのか、わからない。僕が剣を振るって、マセガキが回避する。マセガキが剣を振るって、僕は倒される。何度挑戦しても、打ち合うことも出来ないまま僕は負けてしまう。


 僕は、マセガキに負けた。


 僕は、魔剣がないと何も出来ないのか。


 僕は、目がないと戦えないのか。


 僕は、僕自身で戦えてない?


「……おにいちゃん」


 僕は……アンデに生かしてもらうほど、生きている価値はあったのか?


 アンデの経営する食堂が懐かしい。アンデが料理を出して、僕が運ぶ。仕事が終って、剣の練習して、いっしょにグロテスクなご飯を食べて。僕とアンデが笑いあいながら会話するなんてほとんどなかったけど、それでも僕にとってアンデは大切な人だった。行き場のない僕を匿ってくれて、言葉を教えてくれて、この世界の生活を教えてもらって……。


 僕の代わりに死んだディハイルさんが、頭に浮かんだ。ディハイルさん。どうして、僕なんかを守ったんですか。あんなに優しい人があんなにも簡単にいなくなって良いわけない。一生懸命僕になにか伝えようと、2日間僕に優しく接してくれたことを僕は覚えている……。


 僕は、2人に生きて欲しかった。


 僕は、僕が死んででも、2人に生きてて欲しかった。僕にとって2人は短い時間だったけど、お父さんとお母さんみたいだった。






 でも結果僕が生き残ってしまった。


 だから、僕が何もしないで死ぬなんて、許されるわけない。だから、戦わないと……。




 強くならないと……。怖い怖いと震えてる時間なんて、僕にはないんだ……。











 




使用人兼ボディガード生活 40日目

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 向井 夕 (むかい ゆう) 現状


武器    神魔剣?

     聖剣 ベルジュ (青い剣


     ↓修理中

     聖剣 フラン (赤い剣 損傷:大


防具   使用人の服


重要道具 なし


所持金  0ギス


技術   アンデ流剣術継承者


     魔素による身体強化 


     神素による身体強化(初心者)


     異世界の言葉(但し、書けない読めない


     中学2年生レベルの数学


     暗算


     神魔剣制御


     霊感


職業   スタンテッド家使用人兼スタンテッド嬢ボディーガード





2012/05/03 誤字脱字修正。表現の修正・追加。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ