表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/45

第四十話 食ってみな。飛ぶぞ(魂が)



 たとえるなら、へどろ。

 まず、噛んだ瞬間に口の中で生臭い肉汁が破裂して、脳に突き刺さるような刺激臭が鼻を通り抜けていく。反射的に異物を吐き出そうと体が緊急信号を発進していて、喉が飲み込むことを拒絶し、咳き込もうとしたのだが……不自然な痺れが後から襲い掛かってきて、口内を蹂躙して声すら出せない。


 まるで毒物。これを一般食材と一般調味料で生みだすなんて、ある意味才能じゃないのだろうか。


(い、息が、できないっ)


 ハンバーグ……なのかこれは。見た目だけはハンバーグの『何か』を吐き出したくて仕方ないのだが、凛々子が切り分けてくれた肉片が大きかったこともあり、喉に詰まっていた。


 神経毒のような痺れもあって、このままでは窒息してしまう気がする。

 だから、やむを得ず……俺は吐き出すことを諦めて、逆に一気に呑み込んだ。


 もちろん咀嚼するとあまりの味に意識を失いそうになるので、ほとんど丸呑みである。

 ごくんと、胃に押し込んだ。


「っ……! し、死ぬかと思った」


 はぁ、はぁ、と息を荒げながら、額からにじみ出ている冷や汗を拭う。

 まさかこの部屋で生命の危機に瀕するとは思ってもいなかった。異常事態に鼓動も荒くて大変だ。


(む、胸がむかむかする。胃酸と互角にはりあえるハンバーグって何だよ……!)


 胃酸よ、がんばってくれ。

 お願いだから、凛々子特性のハンバーグに負けないでくれ!


「やだ♡ ぴっぴったら……死ぬかと思ったくらい美味しかったの?」


 一方、毒物の創造主はまるで無自覚がないようだ。

 いつも通り無邪気に笑っている。手料理を美味しく食べてもらえると勘違いしているのだろうが、一切の曇りなき笑みはちょっと尋常じゃないくらいかわいかった。


(……自然界の毒を持っている生物って、見た目がめちゃくちゃ綺麗だよなぁ)


 ドククラゲ、とか。カエンタケ、とか。ミノカサゴ、とか。

 そのラインナップに、タナカリリコも加えていいかもしれない。


「遠慮せずにもっと食べていいからねっ」


 そう言って、凛々子は更にハンバーグを切り分ける。

 またしても『あーん♡』しようとしていた


(ど、どうする? 我慢して演技を続けるか、メシマズだと伝えるべきか……!)


 ――俺は凛々子の旦那、という設定。

 つまり、凛々子を愛している。メスマズなところも含めて、きっと受け入れているはずだ。


 明るくて、気さくで、ポジティブで、かわいくて、料理が好き。

 うん、最高の嫁じゃないか。彼女が笑顔でいてくれるなら、料理がまずいことくらい受け入れられるはず。


(……アニメの主人公たちは、メシマズのヒロインを受け入れていた!)


 ごはんがまずい。ただそれだけだし、これからゆっくり改善していけばいい。

 そう考えると、大したこと無い欠点だ。ここは我慢して、凛々子との結婚ごっこを続けよう。


 そして当初の計画通りに『俺たち気が合うな。結婚するか』と伝えて、ゴールイン。

 これで部屋から出られて、幸せになりました……とさ。めでたし、めでたし。


 そんな結末で、いいじゃないか。






「――ごめん、無理。凛々子、これはハンバーグじゃない。『兵器』だぞ!?」






 分かってはいるさ。

 この選択肢が、間違えていることくらい。


 だが、我慢なんて無理だ。

 だって――まずいんだぞ。


 文句があるならお前が食ってみろ。飛ぶぞ。(魂が)

 それくらい、凛々子の料理はヤバかった――。


【あとがき】

お読みくださりありがとうございます!

もし続きが気になった方は、ぜひ『ブックマーク』や下の評価(☆☆☆☆☆)で応援していただけると、更新のモチベーションになります!

これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ