第二十四話 地雷系女子は意外と自己肯定感が低い
長年、一緒に暮らしているのだ。
どんなに必死に隠していることだって、偶発的に気付いてしまうことがある。
「み、みみみ見てたの!?」
「……ごめん。夜中にトイレとかで目覚めると、たまにお前がメイクしてるところだったりするんだよ。見ないようにはしてるんだけど、鏡に映ってて……」
この部屋にはでかい鏡のついた化粧台……えっと、ドレッサーって呼ぶのかな。あれがベッドからも見える位置にあるので、凛々子のすっぴんも鏡ごしに見たことがあった。
「やだっ。うぅ……み、みるなよぉ」
凛々子は涙目である。すっぴんを見られるのがやっぱり嫌だったのだろう……いつも強気というか、生意気な表情ばかり見ているので、この辛そうな顔にはさすがに慌てた。
童貞に泣き顔は卑怯だぞ!
こんなの、慌てるに決まってる。
「かわいかった! メイクしている時は典型的な地雷系っぽくてかわいいけど、だからこそギャップというか……素顔って意外と純粋そうな感じとかあって、良いと思った!」
「――しにたい」
「えっ!? お、お世辞とかじゃないからな? 俺と同じ学校のクラスにいたら、間違いなく心の中で片思いして想像で告白して振られてたくらい美少女だった!」
いや、振られちゃうのかよ。せめて妄想でくらい付き合えてもいいだろ、と思えないのがオタク男子の悲しい性質である。ちゃんと自分の身の程を弁えているのだ。
だから、凛々子が俺なんかでは到底手が届かないくらいかわいいことだって、ちゃんと分かっている。
「も、もういいから」
「えぇ……信じてくれよっ。たしかに、女性を褒めることは慣れてないけど、嘘はついてない。凛々子がかわいすぎるせいで、なんかお前が『好きぴ』って言っても全然実感がわかないくらいのレベルで、あと――」
「わかったから! それ以上は……恥ずかしくて、しぬ」
……あ、そっちね。
俺が嘘をついているのが許せなくて落ち込んでいたわけじゃない、と。
途中から顔を隠したので、表情が分からなかった。元気づけようとして少し空回ってしまったようだ。
「な、なんだ。オタクくんって、わたしのこと『かわいい』って思ってたんだ……えへへ~。そっかぁ」
先ほどまでしょぼくれていたくせに。
凛々子は、はにかむように笑いながら、まるで俺の言葉を噛みしめるように何度も小さく頷いていた。やめろ、その表情……かわいくてドキドキしちゃうだろ!
これはまずい。
一応、普段から素っ気なくしているのは、俺なりに凛々子とうまく接する処世術だったりする。あまり異性だと意識しないことで、場を乗り切っていたのだ。
しかし、こうやってたまに意識させられた時が厄介だ。
途端にオタク特有の童貞な部分が出て、うまく接することができなくなる。
「やばい。うれしすぎるぅ」
「そ、そっか。でも……ほら! 俺はもっと清楚な感じが好きだけどね?」
「にゃははっ。ほんとーはわたしのことも『かわいい』って思ってるんだろぉ? 強がっちゃって、かわいいオタクくんだにゃぁ」
くっ。先程、本音を出しすぎた!
冷静さを取り戻そうとしたが、凛々子はお見通しだと言わんばかりにニヤニヤと笑っている。
「あーん♡ わたしの好きぴがたまらん……どーてーかわちぃ」
どーてーかわちぃってなんだよ。
と、普段ならツッコめたかもしれない。でも今は、無理だった。
(こいつ……なんで普段は自信満々のくせに、自己肯定感は低いんだよ! 焦って本音で慰めちゃったじゃねぇか!!)
地雷系女子は意外と自己肯定感が低いらしい。
丸二年も一緒に暮らしていたので、凛々子のことはある程度知っていたつもりだったが……どうやら、まだまだ知らない一面もあるみたいだ――。
【あとがき】
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