塩対応のアイドルカフェ
メイド喫茶の亜流としてアイドルカフェがある。
メイド喫茶の場合、集客のメインである土日にシフトに入れる子が少ないのは痛手だ、だから地下アイドルはあまり雇いたくはない。
アイドルカフェの場合、店舗内にステージがある。地下アイドルは一曲いくらで歌ったり踊ったりする。働いている子たちからすれば、イベントのチケットノルマをこなす必要がなく、普段の活動でバックが出る。お店とはWinWinの関係、というわけだ。
さて、その店ではカクテルとシャンパン(正確には発泡ワイン含む)があり、シャンパンを開けるとアイドルみんながグラスを掲げて「○○さんから△△(お酒の銘柄。カフェ・ド・パリ、モエシャンドン、ヴーヴクリコ、ドン・ペリニヨンなど)をいただきましたー」と乾杯してくれるシステムがあった。これはなかなか華やかで楽しい。
というわけで、最初はカクテルを頼んでいたのだが、だんだん興が乗ってくるとカフェ・ド・パリくらいは開けるようになっていった。
最初の内はこれでよかった。シャンパンを開けてくれる客には長くついて話してくれたからだ。
が、これがだんだんとおかしくなっていった。
単品のカクテルを頼んでいるうちは話しかけてくれるのに、シャンパンを開けるとそのあとは塩対応になるように変ってきたのだ。
「この客はシャンパンを開けてくれたらあとは放置しておいてよい」と思われたのだろう。
観察していると、地下アイドルの子たちは客が使う金額にではなく、店外のイベントの常連と長く話していることに気づいた。店だけの太客は塩対応で、自分のファンと長く話すようになったのだ。
そして、放置されている客にも気を遣って話しかけてくれた子がやめてしまうと、急にその店はつまらなった。
私は、最後のお別れに席に着くとともにモエシャンドンを開けると、乾杯の後は静かな時間を過ごした。
そして、その店に二度と行くことはなかった。




