07【赤魔導師】
レイサは赤魔導師とは何かについて読んで教えてくれた。この世界には援護向けの白魔導師と戦闘向けの黒魔導師が居るのはギルドでも説明された為、僕も知っている。
しかし極稀にそのどちらも得意とし、さらに特殊な魔法が使える魔導師が現れるという。それを赤魔導師というらしい。因みになぜ赤なのかと言うとその魔導師の着ていた服が赤色だったかららしい。
赤魔導師の伝承は世界各地にあり確かに実在したとされているが未だ謎が多い。
さらに言い伝えによると赤魔導師は生まれつきの才能とかではなく白魔導師、もしくは黒魔導師が何かしらの影響で覚醒した能力と言われている。
「―――ってこの本には書いてあるわ。まぁどれが本当なのか嘘なのか分からないけど」
「分からないって直接本人に聞いてみたら早いんじゃないの? どこかにいるかもしれんじゃん」
「この世に居たことは確かなのだけど赤魔導師は行方不明なのよ。しかも何百年も前にね」
「行方不明!? 生きていたとしても数百歳……」
「そう言うわけだから今ある資料が全てね」
レイサは分厚い本をパタンと閉じ本棚に戻した。
何百年も前から行方不明の人物がどうして僕の夢なんかに現れるのだろう?
もしかしたら何かの魔法なのだろうか? 謎過ぎる……。
言ったところで何か変わるのなら良いが心配されるのも嫌だからこの事は黙って置こう。
「さてと、赤魔導師の話しはこれくらいにして朝食にしましょう」
レイサはリビングにある大きな窓ガラスを隠しているカーテンを開けた。
外を見るといつの間にか月は消え始め、空は青みがかってきている。
町の外灯もその暖かな灯が消えていた。
「服は私のお下がりあげるわね」
「ありがとう」
レイサから貰ったお下がりの服は若干胸元がきつい。言ったらなんか怒られそうな気がする……。
僕とレイサは朝食を終え準備した後すぐにギルドへ向かった。
朝一のギルドには人が多く、クエストと言われている依頼書が貼られている通称クエストボード前には多く冒険者がクエストを選んでいた。
それを見ていたレイサは何か悩んでいる様子だった。
「ん~……今出ているクエストはちょっとナギサには厳しいのが多いわね。追加を待つしか……」
「新しいクエストはいつ貼られるの?」
「減ったら追加されていく感じね。この感じだと昼過ぎ頃になるかしら」
「それじゃその時間まで魔法の勉強でもして待つよ。町に図書館とかある?」
「もちろんあるわ。メイン通りを進んで行くとレンガの建物が見えるの。そこが図書館よ。私はクエスト受けるから終わったら図書館に行くわね」
「うん、分かった。気を付けてね」
僕はレイサと別れ図書館へ向かった。
魔法の勉強というのは建前で本音はこの世界の常識や歴史などを少しでも知っておくためだ。あとそれとやっぱりまだ赤魔導師の事も気になる。
メイン通りをずっと真っ直ぐ歩いて行くと他の建物より立派なレンガ調の建物が見えて来た。どうやらあれが図書館らしい。
出入口は大きな扉があり近付くと自動で両サイドにスライドして開いた。これはまるで自動ドアだ。
館内に入ると急に外の音が聞こえなくなった。防音対策というか防音魔法かな?
奥へ進むと物凄い数の本が優に5メートルはあるだろう本棚に収められている。
上の方はどうやって取るんだろう……?
ハシゴでもあるのかと思い辺りを見渡すと“本の検索”と書かれたバスケットボールサイズの水晶が置かれていた。
「(へぇ~、これで検索するんだ。 えーっとやり方は――)」
水晶横に置いてある説明書を見ると水晶に両手で触れながら探している本を念じると水晶の後ろにある小さな本棚に目的の本が出てくるらしい。
僕はこの世界の歴史について知りたいので歴史系の本を念じた。
すると水晶が数秒白く光った後、本棚に数冊の本が突如現れた。並んで居るのはどれもこの世界の歴史本だ。
その中から1冊手に取り近くの椅子に座って読んだ。
この世界には魔王がかつて居たが後に勇者と呼ばれる一行が倒したらしい。その勇者一行に居たのが例のローブの男だ。
さらに魔法を使った技術向上のために貢献した男性の事も書いてあった。
そう言えば冷蔵庫や水道など妙に僕の居た世界の似ている気がする。
やっぱり転生者が他にも居たのかな?
しかし本には転生者の事が一切書かれていない。
僕はその後いろいろな本を読み続けた。もちろん魔法の勉強も。
気づけば机の上には本の山が出来ていた。
魔法の属性についての本を読んでいるとレイサがやって来た。
「ナギサ、おまたせー。ちょっと討伐に時間かかっちゃったわ」
「あれ? もうそんなに時間経ったの? 読むのに夢中になっちゃった」
「魔法の勉強はどう?」
「うん、何となく分かって来たよ」
「それは良かったわ。さっきここ来る前にギルド寄ったらちょうどいいクエストあったのよ。後でアルラと合流して一緒に来ましょう」
「わかった。あっ、この本どこにあった物かな?」
「そこの返却って書いてあるところに置けば勝手に片づけてくれるわよ」
僕は本を“返却”と書かれた机の上に置くと突如魔法陣が浮かび上がり本は消えてしまった。
本棚の高いところに自動で仕舞われるのは便利過ぎる。
一瞬で型付けが終わりレイサと共にギルドへ向かった。
ギルドに到着すると今朝より人が増えている。今来たばかりの人と帰ってきた人が入り混じっている感じだ。
「なんだか朝より人多いね」
「午後はいつもこんな感じよ。これだと受付でお昼注文した方が早いから行ってくるわね。テーブル席にアルラが居るはずよ」
「うん、分かった。」
レイサは人混みを避け受付へ向かった。僕は反対方向のテーブルがある方へ歩いて行くと食事をしているアルラが見えた。
テーブルの上には多くの料理が並べられている。
僕はアルラの向かい側に座った。
「おぉ、ナギサ。魔法の勉強しているんだって?」
「うん。まだまだだけどね。足手纏いにならないようにしないと」
「無理だけはしないようにな」
「ありがとっ」
「ところでレイサは?」
「さっき受付でお昼注文してくるって」
「それじゃ食い終わったらクエスト行くか」
「うんっ」
昼食を摂った僕、レイサ、アルラはクエストのため町から少し離れた荒野に来た。
見渡す限り茶色い大地が広がっている。わずかながら木々があるがどれも枯れているようだ。日差しが強く乾燥している。
ここ最近この辺りで魔物の集団を行商人が見たらしい。
ギルドによると一体一体そこまで強くないが魔物の数が多いので何人ものの冒険者がすでに向かっているとのこと。
しかしどこを見ても魔物どころか先に向かった冒険者も見当たらない。
「確かこの辺りに出るって聞いたんだけどな……」
アルラはギルドから渡された地図を見ながら辺りを見渡した。
僕も遠くを凝視してみたが何もない大地が続いているだけのようだ。
「全く見えないわね。ナギサなら魔力感知で分かるんじゃない?」
「その方法があった。ちょっとやってみるね」
魔導師は周囲の魔力を感知してどこに人や魔物が居るか分かるスキルがあり熟練者はその魔力で人物まで分かる。と図書館で読んだ本に書いてあった。
まさかすぐに実演するとは思わなかったけど。
僕は異空間から魔法の杖を取り出し構えた。
そして周囲の気配に集中すると遠くの岩場に数人の魔力を感じた。
見えないが確かにそこに何かが居る。たぶん冒険者だろう。
「向こうに見える平たい大岩の所に複数人の魔力を感じる。たぶん冒険者だと思う」
「戦闘中なのかもしれないわ。早く応援に行った方が良いわね」
「よし、すぐに向かうか」
僕たちは急いで魔力の感じる平たい大岩の方へ走って向かった。




