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僕っ娘魔導師は今日も忙しい  作者: 藤桜


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05【銭湯】

 ついにこの時が来てしまった……。

 今は女の子だから問題ないはず!

 僕は思い切って女湯と書かれた方の戸を開け銭湯に一歩踏み入れると敷いてあるマットに突然魔法陣が浮かび光ったと思ったら1秒ほどで消えてしまった。

 僕もレイサも特に変わった様子はない。

 というかレイサは気にもしていない様子だ。

 僕にしか見えなかった? そんなはずは無い。

 

「ねぇ、今の魔法陣って?」

「性別を区別する魔法よ。女装や変身魔法を使って女湯に入る男が居たことがあるからね。それ対策で少し前に取り入れたのよ」

「因みに男の人が魔法陣に掛かるとどうなるの?」

「ギルドにある牢屋に転送されるだけよ。最初は軽い電撃魔法だったんだけど銭湯の関係者や修理業者の人もかかってね。ギルドから危ないってことで牢屋に転送されるだけになったのよ。もちろん無罪ならすぐ解放されるけど」

「そ、そうなんだ」


 安心したけどこれで僕が完全に女の子になったことが証明された。

 もしかしたら変身魔法でもかけられているんじゃないかとちょっと期待していた自分が居たのだ。

 複雑な気持ちのまま脱衣所に入ると数名の入浴客が居た。

 うっ……。目のやり場に困る……。

 なるべく見ないよに目を閉じながら服を脱ぎ始めた。


「ナギサって結構胸あるわね……」

「ふぇっ!? そっそんなこと無いと思うよ。僕先に行ってるね!」


 服を脱ぎ急ぎ足で浴室へ向かった。

 ガラスの戸を開けると中央には大きな円形の浴槽がありその中央にある柱からはお湯が注がれている。浴槽を囲うかのように壁沿いには鏡付きの蛇口が設置してある。僕の知っている銭湯とは形状は違うみたいだ。それよりなんだか外観とは違い中は凄く広く感じる。


「外から見た時よりなんだか広く感じる」

「空間魔法で広くなっているのよ。さぁ、身体洗ったら入りましょ」

「うっ、うん」

 

 流石に洗わず入るのはダメだよね。

 自分の身体なのになんでドキドキしているんだ僕は……。

 椅子に座ると鏡には女の子になった自分が写っていた。

 そう言えば女の子になってから一度も鏡を見ていなかった。

 意外と可愛い―――って何を思っているんだ。

 というか見ちゃえばどうってことなかった。

 もう疲れたしさっさと身体洗ってお風呂入ろっと。

 身体を洗った僕はなるべく人が居ない入り口から一番遠い方へ行き浴槽に浸かった。


「ふぃ~……。なんか不思議な感じがする」


 ほどよく疲れた身体に沁みる。

 壁に書かれた効能を見ると僕の居た世界と似た感じだがよく見ると“魔力回復”や“状態異常緩和”など異世界らしいものが書かれている。

 確かになんだか疲れが一気に取れる気がする。

 これはヤバい。今まで何回か温泉は入ったことあるけどここまで気持ち良いのは初めてだ。

 ウトウトしていると隣にレイサがやって来た。


「凄く気持ち良いでしょ? この銭湯目当てに他の町から来る人も少なくないらしいのよ」

「確かにこの気持ち良さなら僕も遠くから通っちゃうかも」


 充分ゆっくりした後、浴槽から上がるとなんだかさっきより身体が軽く感じる。

 さっそく効いてきたみたいだ。

 服を一着しか持っていない僕はレイサからお下がりの服を貰い着た。若干胸元がきつい気がするけど言ったらなんか……。うん、止めとこう。

 髪を乾かそうとドライヤーらしき物を手に取った。しかしこのドライヤーにはなぜかコンセントが無い。

 収納されている感じでもないしどうやって使うのだろう? 充電式のドライヤーなのかな?


「ねぇレイサ、これってどうやって使うの?」

「どうって普通にスイッチオンにするだけよ? 使ったことないの?」

「あ、うん」

「珍しいわね。そこの取っ手を持った状態でスイッチを押せば勝手に温風が出るわよ」

「スイッチってここかな?」

 

 取っ手部分にあるスイッチを押すと確かに温風が出た。

 どうやら自分の魔力を素にして温風が出ているようだ。

 魔力もそこまで使う感じじゃないしこれは便利。

 髪も乾かし終わり僕とレイサは銭湯から出た。

 空気が澄んでいて微かに木々の香りがする。それに夜風が心地よい。

 レイサと共に近くの噴水広場へ向かうとベンチでアルラが待っていた。


「おっ、やっと来たか。ほら二人の報酬分な」


 アルラは袋に入った銀貨を2枚ずつ渡してきた。

 この世界で見る初めての硬貨だ。

 大きさ的には500円玉くらいだろう。両面にお城のような建物が描かれている。


「ありがとう。やっとこれで何か買えるよ」


 僕は貰った銀貨をポケットに仕舞った。

 レイサは貰った銀貨を巾着袋のようなものに仕舞っていた。

 この世界の財布はただの袋みたいだ。

 クレジットカードとかあるわけでもないしそれくらいで充分なのかな?


「そう言えば、レイサ。昼間に魔物倒しただろ? それの報酬を取りに来てないってギルドの奴が言っていたぞ?」

「あっ、すっかり忘れていたわ。ちょっと貰ってくるからナギサここで待って居てね」

「うん、分かった」


 レイサは少し慌てた様子でギルドへ小走りで向かって行った。

 その間僕はアルラとここで待つことになった。

 ベンチに座り空を見上げると満天の星空が見える。

 元の世界じゃ街灯りで見えないからなんだか嬉しい。


「その服ってレイサのだよな?」

「うん。まだ服買っていなかったから貰ったんだ。ねぇ服っていくらくらいするのかな?」

「大体銀貨5枚くらいだな。防具なら物によるけど金貨1枚以上はするぞ」

「銀貨と金貨ってどれくらい差があるの?」

「それも知らないのか」

「えっと……あっ、僕ずっと山奥で暮らしていたから」

「そうだったのか。まずは硬貨の種類だが―――」


 取り敢えず僕は山奥で暮らしていて町の事などを一切知らないという設定で色々聞くことにした。

 流石に異世界から来ましたなんて言ったらどうなることか分からないし。

 アルラの説明によるとこの世界には銅貨、銀貨、金貨、白銀貨の4種類があり、銅貨10枚が銀貨1枚という感じになっているようだ。

 日本円で例えると銅貨が10円くらいの感覚に近いかもしれない。

 銀貨1枚=100円程度なのだがこの世界では銀貨1枚もあれば銭湯に行くことが出来るし今日食べた昼も銀貨4枚程度らしい。

 今後は魔物を一日1体以上は倒さないとダメなのかもしれない。

 近いうちに一人で倒せるようにならないと……。


次回もよろしくお願いします!


X(twitter)

@huzizakura

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