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雑誌と四天王と暴言

「荒方!」


 それは動物と戯れた後の話だ。

 突然、社長であるやまねから呼び出しがあり、会社に三人揃って出向いた。

 真っ直ぐに社長室に入ると、早速テーブルの上に雑誌がたたき付けられる。

 開かれたページには、


[HOKUTO・謎の女性が毎日送迎!同棲疑惑!!]


 と、大々的に見出しがつけられてた。

 藤も乗っているはずなのだが、角度的に見えないようだ。


「うわぁ。」

「こうなると思った……。」

「ほう、くだらんな。」


 三人とも思うままに口を開く。


「くだらんじゃないわよ!荒方!」

「くだらなすぎる。こんなもの、

 同じマンションに住んでるマネージャーという言い分で十分であろう?」

「そう言ったけど何故だか相手にされてないのよねー。」


 確認の為に連絡が来たらしい。

 だが、朱鷺が言ったように説明したのだが、それでもこのような記事が出たと言う。


「さて、どうするの?マネージャーさん。一応あんたの責任でしょ?」


 嫌味を思いっきりぶつける藤だったが、記事を見ていた朱鷺が首を傾げた。


「どうかした?」

「いや、どうもおかしい。」

「何が?」

「同じ仕事現場に行く時は必ず別ルートを通るようにしている。」

「「……………」」


 ジェットコースター並の運転だったために、藤と北斗はそれに気づいて無かった。

 だが、そんな事には触れず朱鷺は話を続けた。


「だが、これはある一週間をまるっと撮影した写真だ。」

「………え、で、どういう事?」

「毎朝違うルートを通っているにも関わらず、何故、そのルート先で撮影が出来るんだ?

 要は、完全に毎日違う通り道で待ち伏せされているという事だ。」

「嘘でしょ~、荒方。」

「………社長しか意味がわかっていないようだな。」


 ハテナを浮かべる二人に、朱鷺は溜息をついた。


「その一、我々は毎朝違うルートを通っている。」

「「はい。」」

「その二、この写真はルートを全て把握していなければ、撮ることはまず不可能だ。」

「「はいはい。」」

「その三、どこのルートを通るのかは事前に決めてあり、事務所にだけは報告をしている。」

「「………………。」」


 ようやく二人が渋い顔になり、朱鷺からやまねのほうへ視線を向けた。


「我が事務所内に情報を漏らすスパイがいるって事よね…。」


 がっくりとうなだれるやまね。

 だが、朱鷺は容赦しない。


「全くの盲点だな。あれほど自信たっぷりに問題無いから調査の必要は無いと私に言い切ったものを。

 だからこそ、あえてこの事務所内の調査は一切していないし、

 セキュリティに関しても何の手も加えていない。

 言ったはずだ、こういうものが二度手間と言うのだと。」

「………本当に申し訳無いわ。」

「悔やむ暇など要らん。とっとと容疑者を割り出せ。さっさと殲滅する。」

「そうね、ちょっと待ってて。」


 そう言ってやまねは隣部屋に入っていった。


「ちょっと。」


 溜息をついた朱鷺は藤に呼ばれて振り向いた。

 何故だか、藤も北斗も異様に機嫌の悪さを丸出しにしている。


「あんな言い方無いんじゃない?」

「なんだ、当たり前の事を、」

「君は当たり前でも俺達は違う。」

「お前達に言ったわけでは、」

「社長にあぁいう言い方をするのも気に入らない。」

「…貴様らの気に入ろうが、そんなものは、」

「どうでもよくていいけど、社長にはやめてもらえるかな?すっごいムカつくから。」

「何を、」

「お待たせー!多分、この中だと思うわ!」


 事如く言葉を遮られ、不機嫌MAXな朱鷺の表情が見えて、理由のわからないやまねは首を傾げた。

 だが、彼女が持ってきたファイルをさっさと受け取ると、朱鷺は直ぐさま中身を確認する。


「………まだ、絞り込める。」


 そう言って朱鷺はぽいぽいと不要なファイルを投げ捨てていく。

 最終的に残った四つをやまねに渡した。

 そのファイルに彼女は愕然とする。


「嘘と言って頂戴。」

「断る。」


 再びがっくり肩を落とす。


「社長………?」


 心配した藤が声をかけるが、がばっと勢いよく顔をあげたやまね。


「荒方………。」

「私に一任するか?」

「………………。」


 ショックの為か、イマイチ煮え切らないやまね。

 すると、朱鷺は提案をした。


「わかった。今回はこの二人にやらせてみよう。」


 そう言って藤と北斗を見る。


「「え??」」


 勿論、驚きだ。


「大丈夫かしら?」

「逆に喜びそうな気がするが。」

「……まぁ、そうよね。」

「「意味がわからない。」」


 声を揃えて反論する。

 それを朱鷺が鼻で笑い、口を開いた。


「最氷プロダクションの“華の四天王”を知っているか?」

「何だそれ。」

「知らない。」

「貴様ら、己の会社の事も知らんのか。」


 明らかに馬鹿にした朱鷺に少しムッとする二人だが、流石に三ヶ月目とも慣れてくるものだ。

 あえて反論はせずにいた。


「業界では割と有名でな。簡単に言えば最氷プロダクションを仕切る精鋭部隊のようなものだ。」

「それがどうかしたのか?」

「その四天王四人が容疑者だ。」

「ちょっと待ちなよ。精鋭部隊なんでしょ?」

「あぁ、むしろ社長を数えなければ事実上のトップだ。」

「トップが容疑者って……、」

「………ごめんなさいね。」


 しゅんとうなだれるやまねの姿に言葉を止めた。


「仕方ないよ、とにかくどうにかすればいいんだろ?」

「そうそう、で、俺達がどうすればいいわけ?」


 あからさまに違う態度に不審な視線を送る朱鷺だが、二人に何故だか睨まれた。

 気を取り直して朱鷺は口を開く。


「お前達に彼女達の仕事を手伝わせ、潜り込ませる。三日で誰が犯人なのか見つけ出してこい。」

「はぁ!?」

「ちなみに、凄腕揃いだからな。たくさん色んな事を学べるだろう。」

「何を馬鹿な、」

「やっぱり、やめたほうがいいかしら…。」


 やまねがぽつりと弱気な発言をした。

 よほど責任を感じているのか。

 まだ落ち込みが見て取れる。


「社長の為だ。なぁ?そうだろ?先珠、周殿。」


 にやりと憎たらしい笑みを見せる朱鷺に心底怒りを感じたが、二人は思い直した。


「「わかった。やるよ。」」


 ちなみにこの時。

 やまねは心の中でガッツポーズを決めたのだった。


*************************


 いつもは通り過ぎて社長室に行く。

 だからこそ、事務所というものはよく見た事がない。

 記憶があるのは、初めてここに来た時ぐらいだろう。

 彼らは社長室の一階下のフロアに居た。


「と、言うわけでこの二人をここで働かせる。

 仕事内容は雑用でも何でもいい。

 可能な事柄すべてやらせてかまわない。まぁ、どれほど出来るかはわからんがな。」


 偉そうに言う朱鷺に冷ややかな視線を送る藤だが、彼女には関係無かった。

 そして彼らの前には一人の女性が立っていた。

 見るからに普通の女性ではあるが、いわゆるキャリアウーマンという呼び名が似合いそうな美人だ。


「承知いたしました!私が責任を持ってお世話をさせていただきます!」


 ハキハキと喋るその仕草はどこと無くボーイッシュな雰囲気を見せるが、やっぱり美人である。


「先珠、周殿。彼女は四天王の中でもリーダーを勤める。

 社長の秘書と言っても過言ではない人物だ。」

「荒方様、誉め過ぎです。」


 にっこりと照れ笑いを浮かべる。

 そのあどけなさもやっぱり美人だ。

 と、思っている北斗はご機嫌である。

 ほんの少し面白く無い藤は不服そうに口を開いた。


「一人しかいないの?」

「申し訳ございません。他のメンバーは調度外に出払っておりまして………。」

「やっぱり四天王ともなると忙しいんだな。」

「それはそうだ、何たって奴らは、」


 その時だ。

 可愛いらしい鼻歌と共に、扉が開かれた。


「ヒマワリ!只今帰り着きましたですよぉ~!」

「只今、戻りましたわ~。」


 現れたのは、まだあどけない感じの美少女と、藤と北斗から見てもかなりの美形な青年。

 美男美女には見慣れている二人だが、本気でびっくりするほどの美形である。


「お帰りなさい、二人とも。」

「あれぇ~!?もしかして、もしかしなくてもぉ!!このお二方は~!!きゃわわわん!!!」


 そして、びっくりするほどのハイテンションぶりに本気で引いた。

 藤も北斗もすぐに視線を反らした。

 反らした先に、美青年と目が合い、彼が口を開いた。


「やだぁ!超イケメンじゃないのぉ~!!」


 再び視線を反らした先は朱鷺に行き着いた。

 だが、そこにはにやりと余裕の笑みを浮かべた顔があった。


「wait!(待て!)」


 興奮し、今にも飛びつかんばかりの二人にリーダーが一喝すると、ぴしっと大人しくなった。

 まるで二匹の犬を躾るブリーダーのようだ。


「大変失礼いたしました。」

「相変わらずのようだな。」

「やん!お褒めにあずかり光栄ですぅ!荒方様!」

「あんたを褒めてんじゃないわよ!荒方様はこのアタシを褒めてくださってんの!」

「む、うるさいですよ!オカマのくせに!」

「うるさいのはあ・ん・た・よ!小娘!」

「なんですと~!」

「wait!!」


 再び、ぴしっと大人しくなる。

 もはや、おかしな世界にいる気分になってきた。


「申し訳ございません!」

「構わん。これで全員揃ったな。」


 朱鷺の言葉に藤も北斗もキョロキョロと見回す。

 どう数えても三人しかいない。

 すると、その視線に気づいた朱鷺がすっと指を指した。

 指先から辿った先。

 広い部屋の片隅にそれはあった。

 何故、今まで気にならなかったのだろう。

 様々な布が無茶苦茶に組み合わされて、一つの建物が作られている。

 いや、建物というか、


『『――――――“巣”?………』』


 ごそごそと音がする。

 冬眠から目覚める熊の如く、彼女は姿を現した。


「………すみません………。」


 眼鏡にボサボサ頭。

 冴えない、いや、むしろ地味に地味を重ねた感じ。

 彼女は顔を微妙に下げたまま、三人の前を通り過ぎ、リーダー、美少女、美青年の隣に並び、四人一列になった。


「では、改めまして。総括長の“白百合しらゆり”でございます。」

「衣装担当の“向日葵ひまわり”でぇす~!」

「交渉担当の“秋桜こすもす”ですわ。」

「(ぼそぼそ)…の“野菊のぎく”です………。」

「これがかの精鋭部隊、“華の四天王”だ。」

「「待った!!」」

「待った無し!!!」


 ここぞとばかりに朱鷺は二人の異議を却下する。

 が、勿論そうはいかない。

 北斗は朱鷺の腕を掴んで四天王から離れる。

 藤も一緒に離れ、小声で話す。


「どうした?」

「どうしたじゃないでしょ。何で皆偽名なのさ。」

「いや、それもそうだけど!リーダー以外のメンバー、おかしいだろ!?

 あと、明らかに一人妙な男混じってるだろ!?」

「あだ名のほうが親しくなりやすいのだ。

 おかしくは無い、個性的なだけだ。あと秋桜も心はちゃんと乙女だからな。

 きちんと、乙女として扱ってやるのだぞ?」

「あだ名だったら仕方ないか……。俺達もそれで呼んだほうがいいの?」

「藤、待って。俺を置いていかないで。」

「あだ名以外で呼ぶな。やられるぞ。」

「「………………。」」


 一気に無言になる。

 すかさず朱鷺は二人の襟元を掴んで、距離を縮めた。


「いいか。この中に情報を外に流しているやつがいるのは間違いない。

 どうしてもそいつを見つけねば、お前達の仕事どころか、この会社の命運も尽きると思え。」

「「………わかった。」」


 ようやく観念した。

 というより、会社の命運まで出されたら腹を括るしかないのだ。


「それでは、私は他にやることがあるのでな。この二人は乙女達に任せるぞ。」


 野菊以外の三人が嬉しそうに頬を赤らめた。

 颯爽と朱鷺はその場を後にし、扉の向こうへ消えた。


「じゃあ、とりあえず。藤です。宜しくお願いします。」


 営業スマイルで藤は右手を差し出した。


「こちらこそ宜しくお願いします。」

「宜しくですぅ~!」

「宜しくですわ。」


 一人ずつ嬉しそうに握手を交わしたが、最後の野菊だけはすっと藤の手をさけた。


「…………(ぼそぼそ)。」

「え?」


 そのまま、巣穴に帰ってしまったのだ。


「宜しくお願いしますと言っておりました。」

「すみませぇん。あの子、いっつもあんな感じで、他人が苦手なんですぅ。」


 白百合と向日葵がフォローを入れた。

 藤と北斗は「へぇ…。」と巣穴を不思議な気持ちで見つめていたのだが、


「じゃあ、最初はアタシがご案内いたしますー!!」

「あ!!秋桜ずるいですぅ!最初は向日葵ですぅ!!!」


 と、一度始まった争奪戦に、現実を思い知る事になったのだ。


***************************


「入るぞ。」

「ノックぐらいしてよね、荒方。」


 社長室のドアを遠慮無しに開けて入った朱鷺は、

 部屋の片隅に設けられた、通称・荒方スペースに向かった。

 設置された棚には様々な機材が置かれており、その中から必要なものを選んでいく。


 何故そんなものが、社長室にあるのかというと、

 朱鷺曰く、「いつでも迎撃態勢を取れるように。」という事らしい。

 事務所の中でも社長室が一番安全と判断されたらしく、当初戸惑っていたやまねもほぼ諦めている。


「どう?上手くいきそう?」

「誰に物を言っているんだ。」

「あー、はいはい。天下の荒方様に失礼でしたわねー。」


 こんな口の聞き方が出来るのもやまねならではである。


「元より、あ奴らには期待なんぞしていない。

 誰か見つけ出そうが見つけ出せまいが関係無いのでな。」

「………苦労をかけるわね。」


 ぽそりとやまねが呟いた。

 思わず朱鷺のほうが溜息をついてしまう。


「あの記事のせいで仕事がキャンセルにされたなど、聞かせないほうが賢明だからな。

 流石の私もそこは気をつかう。マネージャーとしてな。

 ただ、この程度の事に苦労などと思った事は無い。」


 ぴしりと言い切る彼女に苦笑いを浮かべたやまね。


「本当。貴女に仕事が頼めてラッキーだったわ。」


 偶然に、荒方 朱鷺という人物に会うだけでも奇跡に近い。

 この業界で有名な彼女の存在は、掴めるだけでも困難である。

 名が知れているのに実態は知られない。

 時折、“ゴースト”と呼ぶ人間も少なくないのだ。


「………ずいぶん、上手いこと手なずけているんだな。」

「は?何を??」

「先珠と周殿だ。」

「うーん………そう?」


 思いもよらない朱鷺の言葉に少し動揺する。

 手なずけている意識は全く無かった。


「お主を責めるなと二人ともに叱られた。」

「あら、そうなの?まぁ、そういう所は可愛いとこよねー。

 普段の我が儘が無ければ素直に喜ぶんだけど。」

「………不思議だな。」


 そんな事を呟く朱鷺のほうが不思議だと思った。

 あの強気で揺るぎ無い自信でパワフルな彼女が、ぽそりと呟いたのだ。

 きっと、本来の彼女なのだろうと、やまねは肩の力を抜いた。


「ふふ、別にたいしたことじゃないわよ。ただ望むものをあげただけよ。」

「………だから、あんな我が儘になったのだな。」

「あんたねぇ。」


 油断するとすぐこれだ。

 少しイラッとしてゆっくりと溜息をついた。


「だが、与えただけでは無いだろう。」

「え?」

「それが最氷やまねの手腕という物なのうだから、

 半年間きっちりと学ばさせていただく。まぁ、もう既に三ヶ月目だがな。」


 そう宣言され、やまねは目を丸くする。


「なんだ、より一層おばさんの顔をして。」

「酷い言い方ね!」

「わざとだ。」

「あんたホントにムカつくわ。」

「すまんな。趣味だ。」

「器の小さな趣味ね。」

「変な顔をするから悪い。」

「驚いただけでしょ!!!」


 朱鷺は首を傾げて「何故驚く。」と呟いた。

 段々と面倒になってきたのだが、無視するわけにもいかず、やまねは渋々口を開いた。


「あんたが、勉強するなんて妙な宣言をするからよ。」

「何だ、私が勉強したらいかんのか。」

「そうじゃないわよ。

 何でもかんでも完璧にこなすあんたが学ぶ事なんてあるのかなって思っただけ。」


 不機嫌そうになった朱鷺の顔が益々不機嫌に歪んでいく。

 殊更、めんどくささが増してしまったようで、なるべく目を合わせないようにした。


「おかしな奴らだな。あいつらは私には不可能だと言い。お主は可能だと言うのか。」


 荷造りが終わったのか、鞄を抱えてやまねが座っているデスクの目の前に立つ。

 その顔には不機嫌さは無くなっていたが、代わりに真っ直ぐな瞳が見えた。


「仕事で不可能など作りたくない。だが、私にも知らん事はたくさんある。

 先日は粉物とやらを初めて知ったし、この会社にスパイが潜んでいよう等とも知らんかったわ。」


 さりげなく込められた嫌味に異論を唱えたくなるが、話は続けられた。


「犬が飼い主に懐く事はあっても、飼い主を守ろうとするまでにはいくらかの過程が必要だ。

 特にそれが人になれば益々難しいものだ。

 それは欲しい物を与えられただけでは得られん。

 あの狂犬共を手懐ける方法を私は知らんから知りたいと言ったまでだ。

 私はそういう事は不得手だからな。」


 彼らを狂犬と呼ぶ酷い言い草だが、恐らく、

 彼女の中で「凄い」と言っているのだろうと理解をした。

 物凄く遠回しではあるけれど、褒めているのだろう。


「さぁ、私は意識したわけじゃないから………。」

「そうか、ならばここに監視カメラをつけてお主の行動をチェックしてみるか。」

「それだけはやめて頂戴。」


 ちらちらと天井を確認していた朱鷺は微かに舌打ちをした。

 どこまでが冗談で本気なのかがさっぱりわからない。


「それじゃあ、私はしばらく留守にする。後は任せた。」

「え?留守?いつ帰ってくるの?」

「2日後の予定だ。」

「あの子達は?」

「このビルに寝泊まりさせておけ。荷物は運んである。」


 ふと部屋の片隅にいつの間にか用意された鞄を見つけた。


「それ、ちゃんとあの子達に言ってあるのよね?」


 朱鷺が振り返る。

 その顔に満遍の笑みが見え、背筋が凍る。


「あぁ、すまない。忘れていたので頼んだよ。ま、相当に機嫌を損ねる事にはなるだろうから、気をつけて。最氷社長。」


 そのまま、彼女はドアの向こうへ姿を消した。


「う、嘘でしょ………。」


 想像するだけで、面倒極まりない不機嫌な藤と北斗の様子が脳内に浮かぶ。

 ちなみに、朱鷺はそれが面倒だったのでやまねに押し付けた。

 勿論、それを察した。


「あんのくそ餓鬼ぃい!!!」


 今までに発した事のない暴言をやまねは叫んだのだった。

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