表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネームレス 〜奪われたものを奪い返す〜  作者: 月影光貴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/3

第1話 逃走中の出会い

評価の程よろしくお願いします。

 アタシは人である。だが、名前はない。


 持つ資格もない。


 この素晴らしき世界は、アタシ達に名前を待つことすら許さない。


 生まれたばかりの赤ん坊は、臍の緒が切られるや否や能力検査装置にかけられる。透明なカプセルの中で、赤い光が全身を舐め回す。わずか10秒。


【能力値:なし】


 その瞬間、機械は無慈悲に作動する。

 注射針が細い首に刺さり、即効性の安楽死薬が流れ込む。赤子の泣き声は、始まる前に潰える。親は「残念でした」とだけ告げられ、次の子を望むよう勧められる。


 これが、この世界での「普通」だ。


 ネームレス、存在を許されない欠陥品で空っぽの器。

 

 殺されても誰も悲しまない。

 寧ろ進んで殺す、将来誰かの能力を奪うかもしれない怪物として、発見された瞬間に処分される。


 アタシも、本来ならそうなるはずだった。


「............っ」


 路地の闇で、アタシは息を殺していた。


 黒く長い髪を無造作に束ね、細身のコートを羽織った体は、逃亡生活で無駄な肉を削ぎ落とされ、引き締まっている。

 身長172センチ。寒空の下に放置された金属のような冷たい銀色の瞳。


 今年で17歳になるはずだった。

 だが戸籍も人権もない者にとって、年齢など意味がない。


 両親はもういない。

 政府と大企業の追手からアタシを逃がすために、自ら囮となって死んだ。


 最後に父が叫んだ言葉は、今も胸に突き刺さっている。


「幸せを奪って、自分の人生を生きろ」と。



 ............ふざけるな。

 

 アタシは復讐を選んだ。

 この腐った世界の全てを、その全てをぶち壊してやる。


「はあ......はあ......クソ、腕が......」


 先ほど切りつけられた左腕が熱を持つ。

 背後から複数の足音が迫る。ハンター集団だ。

 路地を走り、出口が見えた瞬間、一人の男がふらりと現れた。

 22〜23歳くらい。眼鏡をかけた若干猫背気味の男。パーカーにジーンズという、場違いな装い。


「うわ......それ、かなりヤバい怪我じゃ......」


 アタシは咄嗟にナイフを突きつけた。


「寄るなッ」


「ひょえ!?わ、わかった!近づかない!で、でも......」


 男は両手を上げて後ずさりしながらも、震える指で掌に淡い緑の光を灯した。


「ぼ、僕は戦うのは本当に苦手だけど......この能力なら、痛みを少し肩代わりできるから!」


 そう言うとアタシの痛みは緩和され彼は顔を顰める。


「......アタシが何者かわかっているのか?」


 男は困ったように笑った。少し寂しげに。


「ははっ、理由なんてないよ。ただ、僕は(ネームレス)を見捨てるほど人間ができてないからさ。僕は白峰優弥(しろみねゆうや)。君は......名前、ある?」


 その直後、後方から怒声が飛んだ。


「見つけたぞ!例のネームレス女だ!」


 優弥の顔が強張る。

 それでも彼はアタシの背中を押し、鍵を投げ渡しながら掠れた声で言った。


「............ここから右に二回曲がって、コンビニの向かいの白い一軒家が僕の家だ。......逃げて」


 その背中は細く、頼りなく見えた。

 でもアタシは、生まれて初めて............他人が自分のために前に立った瞬間を見た。

謎の男の登場により主人公は難を逃れる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ