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ステータスALL Sの受験生が170キロで高校野球を終わらせた件  作者: 白峰レイ
第1章 高校編

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第5話 屋上で出会った彼女

昼休み。

夏目は屋上で購買のパンを片手にランチタイムを送っていた。


理由はひとつ。

――中村から逃げるためである。


あいつは毎日のように話しかけてくる。


「今日こそ顔合わせ来いよ!」

「なぁ夏目! キャッチボールしようぜ!!」

「せめて遠くから同好会の存在を見守ってくれ!!」


(……いやだ)


幽霊部員でいいという話だったのだが……

あと、純粋にうるさい。


夏目は中村を避けながら学校生活を送る必要があると考えていた。


そのとき--ガチャ。


黒髪ロングの女子が現れた。風に揺れる髪、凛とした立ち姿。見覚えがあるような、ないような。


「隣、座っていい?」


「ああ……」


中村以外に話しかけられたことに驚き、思わず固まる。


「君、噂の夏目孝太郎よね。近くで見るとさらに大きいわね」


「……」


彼女はスっと前髪を耳にかけた。


「一年C組の伊藤玲奈。入学式で新入生総代やってたのだけど……覚えてるかしら?」


「あー……あの時の」


彼女は淡々と弁当を食べ始めたが、頭良さそうオーラが凄い。


「聞いたんだけど、本来新入生総代になるはずだったトップの子が断ったらしいわね。……誰かしらねぇ?」


(これは、知られてるな……)


「悪い、俺だ」


「怒ってないわよ。ただ、悔しかっただけ」


ストレートな性格でわかりやすい。

嫌な奴ではなさそうだ。


「……その弁当うまそうだな」


「褒めてもあげないわよ?」


「いや別に欲してねぇよ!」


どうやら料理上手らしい。


「あなたいつもコンビニパンでしょ?栄養偏るわよ」


「まあな。ってか、それ作ってんのか?」


「当たり前でしょ。健康管理は勉強の基本よ」


夏目は反論できなかった。


「あなた……最近、毎日ここに来てるでしょ?」


「なんで知ってんだよ」


「昨日、あなたの後ろを歩いてたからよ。

中村くんに捕まらないように逃げてたでしょう?」


(見られてたのか……)


伊藤は肩をすくめた。


「まあ、あの勢いは……確かに逃げたくなるわね」


「わかってんじゃん」


伊藤は、ふっと意味深すぎない程度に笑った。


「でも夏目くん、あなた最近……身体つき変わってるわよね?」


パンを飲み込みそうになる。


「っ……なんでそんなことわかるんだよ」


「観察すれば分かるわ。

姿勢も良くなってるし、歩き方も軽くなってる。

鍛えてる人特有の変化ね」


(……マジで一体なんなんだこいつ)


「べつに……軽く筋トレしてるだけだ」


「軽く、ね。

筋肉痛でゾンビみたいに歩いてたのに?」


「……それも見てたのか」


「教室の入口で。

あれは、なかなか興味深かったわ」


なんか研究対象みたいな扱いをされてる気がする。


伊藤は続けた。


「でもいいことよ。

運動をすると集中力も記憶力も上がるらしいし」


「……まあ、それは実感してる」


「でしょ?」


彼女の目がわずかに楽しげに細くなった。


「なら……ひとつ提案してもいい?」


夏目は嫌な予感しかしなかった。


「なに」


「放課後、私と一緒にランニングしない?」


「……は?」


伊藤はさらっと言う。


「ひとりだとサボりそうなのよ、私。

でも誰かがいれば続けられると思って」


「なんで俺なんだよ」


「あなた、サボらなそうだから」


理由が雑だ。


夏目は頭を掻く。


「いや……でも俺、勉強もあるし」


「分かってるわ。

だから“短距離でいいから一緒に走る”だけ。

ペースはあなたに合わせる」


「……なんでそんなにやる気なんだ」


「健康管理は勉強の基本よ。

それに……」


伊藤は、まるで何でもないことのように言った。


「あなたと話してると、なんとなく続けられそうだから」


夏目はパンを飲み込むどころか、呼吸を忘れかけた。


(……なんだこれ)


中村からの騒がしい誘いとは違う、妙に落ち着いた温度。


「放課後、中村くんから逃げ切れたら連絡して」


そう言って立ち上がり、扉の方へ歩きながら振り返る。


「楽しみにしてるわ、夏目くん」


春の光の中、黒髪が揺れた。


夏目はしばらく動けなかった。


胸の奥が、妙にざわついている。


(……あいつと一緒に走るのか、俺)


だが“嫌じゃない”と思っている自分に気づいた瞬間、

そのざわめきはさらに大きくなった。


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