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ステータスALL Sの受験生が170キロで高校野球を終わらせた件  作者: 白峰レイ
第1章 高校編

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第6話 放課後ランニングと“中村ブロック”突破戦

放課後。


夏目は廊下の窓越しに、校門へ続く道をそっと確認していた。


(……いないな。今日こそ逃げ切れる)


中村は執念深い。


昼休みはもちろん、帰り道にも奇襲してくる。


昨日は下駄箱の近くで待ち伏せ。


一昨日は校門裏の植え込みに潜伏。


もはや野球より追跡の才能がある。


(今日は勝ったな)


今日は違った。


夏目は緻密に動いた。


荷物は先にロッカーへ。


靴は廊下で履き替え。


階段は最短ルート。


そして――校舎裏のフェンス沿いを使う。


完璧すぎる計画だった。


……だったのだが。


「夏目ぇぇぇえええ!!!」


声が空を裂いた。


(……上!?)


見上げると、校舎二階の窓から中村が身を乗り出していた。


「今日こそ!! 話を!! 聞けぇぇ!!!」


「危ねぇよ! 落ちるぞ!!」


「落ちても進む!! 俺は後悔しねぇ!!」


いや、それは後悔しろ。


夏目はスッと方向転換し、裏門へ走る。


だが中村はすでに階段へ向かっていた。


「待て夏目ーーー!!」


全力疾走で校舎から飛び出してくる。


(なんでそんな体力あんだよ……)


しかし夏目の脚力も以前とは違う。


デイリークエストによる走力強化の成果は伊達じゃない。


校門へ向かってダッシュ。


風を切りながらスマホを取り出し、伊藤に連絡する。


≪逃げ切れそう≫


送信。


返信はすぐ来た。


≪了解。では校門で≫


(……約束しちまったしな)


その瞬間――


背後から、


「夏目ぇぇぇぇっっっ!!」


地鳴りのような足音。


(まだ追ってきてるのかよ……)


中村は息を切らしながら叫ぶ。


「今日は!! マジで!! 来いって!!」


「悪い、用事あるんだよ!」


「何の用事だよ!! 逃げんな!!」


「……ランニングだ」


「ランニング!? 誰と!?」


「伊藤」


中村は急ブレーキを踏んだ。


ズザザザザァァァァ!!


「…………は?」


夏目は止まらず走り続ける。


中村の顔が徐々に固まっていった。


「い、伊藤……って……あの総代の……?」


「たぶん」


「たぶんじゃねぇだろ!!」


叫びながら再び走り出す。


「なんで!? どういう流れ!? 俺なんで聞いてないの!? ていうかお前、いつの間にそんなイベント起こしてんの!?」


質問が多い。


夏目は全て無視して校門へ向かった。


⸻


校門前の歩道で伊藤が待っていた。


制服姿のまま、スポーツバッグを肩にかけている。


「来たわね、夏目くん」


「……ああ。なんとか」


伊藤は少し笑った。


「中村くん、今日もすごい声してたわよ」


「聞こえてたのか……」


「校舎全体に響いてたもの」


(そりゃ逃げたくもなる)


二人は並んで歩き始める。


「じゃあ行きましょう。まずは軽く二キロくらい」


「……結構あるな」


「あなたなら平気でしょ?」


「買い被りすぎだ」


「そうかしら?」


伊藤は首を傾げた。


「少なくとも、自分で決めたことはちゃんと続ける人だと思うけど」


夏目は少しだけ言葉に詰まる。


やがて二人は走り始めた。


一定のペース。


一定の呼吸。


不思議と走りやすい。


(……なんでだろうな)


隣を走る伊藤のペースが心地よかった。


無理に合わせてくるわけでもない。


置いていくわけでもない。


ふと横を見る。


フォームも綺麗だった。


肩の力が抜けていて、足運びも安定している。


運動が得意というより、きちんと練習している人の走り方だった。


「ねぇ、夏目くん」


「ん?」


「あなたって……なんでそんなに頑張れるの?」


夏目は少し考えた。


「別に頑張ってない」


「そう?」


「ただ……負けたくないだけだ」


「負けたくない?」


「勉強でな」


伊藤は少し驚いたような顔をした。


だが、すぐに微笑む。


「ふふ。あなたらしい答えね」


伊藤は前を向いたまま言った。


「でも、そういう人って気づいたらとんでもない場所に立ってたりするのよ。だから……いつか結果が出たら教えてね」


「……は?」


「見逃したら悔しいもの」


そう言って、伊藤は少しだけ視線を逸らした。


「私、そういうの興味あるし」


(……なんだよ、それ)


ランニングはその後も続いた。


⸻


その夜の風呂上がり。


スマホの通知が光る。


≪今日は楽しかった。また走りましょう≫


夏目はしばらく画面を見つめた。


返信欄を開く。


閉じる。


また開く。


そして結局、


≪おう≫


とだけ送った。


送信したあとで、


(短すぎたか……?)


と少しだけ後悔する。


だが数秒後。


≪了解≫


と返ってきた。


(……なんなんだよ、ほんと)


夏目はスマホを伏せ、そのまま布団へ倒れ込んだ。

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