表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ステータスALL Sの受験生が170キロで高校野球を終わらせた件  作者: 白峰レイ
第1章 高校編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/103

第48話「四番・一塁手 中村秀人」

◆ 準々決勝 ――怪物と、やっと横に立てた男(前編)


甲子園三回戦を突破した翌日。

開明高校はついに 準々決勝 の舞台へ踏み込む。

対戦相手は大濠第一高校。


スタンドのざわめきは、

もはや「夏目を見に来た観客」で埋め尽くされていた。


夏目は気にしない。

視線が集まろうが、いつもの歩幅でベンチへ向かうだけだ。


ただひとり——

緊張で心臓が爆発しそうな男を除いて。


中村秀人。


ファーストミットを握りしめすぎて、手のひらに汗がにじむ。


(やっべぇ……ほんとに……俺、今日出るのか……)


胸が震える。

人生で一度も「スタメン紹介」というものに並んだことがない男が、

ついにその場所へ立つ。



選手紹介のアナウンスが響く。


「四番 一塁手 中村秀人」


球場がざわ……と揺れた。


(……四番!?俺、四番なの!?)


昨日までベンチだった男が、

今日いきなり“4番・一塁”で立つのだ。

視線が痛いくらい集まる。


隣で夏目が淡々と言う。


「緊張してんの?」


「するに決まってんだろ!!」


「……息してないぞ」


「しとるわ!!」


夏目の声は相変わらずの温度だが、

その横顔には、確かな“信頼”があった。


(……あぁもう……泣きそう)



プレイボール


守備位置につくため、一塁へ向かう。


緊張で足がふわつく。

だけど、走れた。


一塁に着いた瞬間、

(……あれ?)

周囲がやけに静かだった。


次の瞬間、理由がわかった。


——打球が飛んでこない。


まったく飛んでこない。


三球三振。

三球三振。

また三球三振。


夏目の左腕が、序盤から“完全に別次元”だった。


(……お前ら……守備って……こんな楽だったのか……!?)


こんな心の声、絶対にチームには言えない。


けれど、ほんとにそう思った。



ベンチに戻る。


夏目はタオルを頭にかけながら、

淡々と水を飲んでいる。


中村は思わず言った。


「おい夏目……お前……

 俺のデビュー戦なんだから……

 ちょっとは“プレーさせろ”よ……!」


夏目はタオル越しに無感情な声で返す。


「……知らん」


「知らんじゃねぇ!!」


しかし——

なぜか怒る気にはならなかった。


夏目の投球はあまりに美しくて、

ただ隣でそれを見ていられることが嬉しかった。


(……間に合ってよかった)


その一言に尽きた。



一回裏。


1番・佐藤が打席へ。

冷静にボールを見極め、粘って粘って出塁する。


続いて——


「2番 ピッチャー 夏目孝太郎」


スタンドが爆発したように沸いた。


日本中が注目する怪物。


案の定敬遠。



(……やべぇ……順番回ってくる……!!)


走者が出たから、自分に回る。

ついに、夏目の後ろでバットを握る瞬間が来たのだ。


中村は喉がカラカラになりながら、

ベンチでそっと拳を握った。


「……絶対、俺もチームの戦力になる」


夏目は振り返らない。


でも、その背中には

“頼むぞ”

と言っているような、そんな温度が確かに宿っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ