第39話「対策77項目 vs 初回三者三振」
夏目の2ランで静まり返る北海ベンチ。
キャプテンの仙北が、震えるホワイトボードを持ちながら叫ぶ。
「……お、落ち着け!!
夏目の低めホームランは……その……“想定外”だ!!」
部員
「キャプテン……想定外、多すぎません……?」
ホワイトボードには、さっきまで誇らしげに書かれていた巨大な文字。
《夏目対策案 77項目》
そのうち——
すでに 36 項目 が横線で消されている。
誰かが呟いた。
「……まだ一巡もしてないのに……」
仙北は震えるペンで必死に書き足す。
《緊急追加:低めインローでもホームラン可》
副主将が顔を覆う。
「もう“可”の意味わからんだろ……」
⸻
【1回裏 北海攻撃】
マウンドに立つ夏目。
その背中を見た瞬間、
北海の1番・雲母崎が青ざめた。
(……データで見てたより……デカい……)
佐藤が構える。
「初球行くぞ、夏目!」
夏目は淡々と頷く。
投球。
ズバァァァァァン!!
【173km/h】
球場がビリッと揺れた。
1番・雲母崎、意味不明な声を出す。
「あっ……あっ……は……?」
バットは振れないどころか、
目が追いついていない。
二球目。
外角スライダー。
三球目。
落差の大きいフォーク。
三球三振。
仙北はホワイトボードに震える字で書く。
《対応不可》
副主将
「短っ!?」
⸻
【2番打者】
北海で“選球眼の化け物”と呼ばれた男。
出塁率は全国屈指。
彼はボックスに入りながら呟いた。
「……攻略する……絶対に……」
夏目、セット。
投球。
——ズバンッ。
2番「…………え?」
審判「ストライク!!」
2番「(今の……高め……?いや低め……?
いや、どこに???)」
次の瞬間。
スパァァァァン!!
三球三振。
ベンチに戻りながら、彼は呟いた。
「……見た……かった……(球種を)」
仙北が静かに書き足す。
《見えない》
副主将が泣きそう。
⸻
【3番打者・北海の主砲】
北海エース志戸が叫ぶ。
「おい!!お前だけは打て!!頼む!!」
3番は気合を入れ直して叫ぶ。
「任せろ!!
俺は“夏目対策案77項目”を全部読んだ男だ!!」
仙北(読めただけだろ……)
佐藤はため息をつく。
「……来るぞ、夏目」
夏目の指先が少しだけ締まる。
投球。
ズバァン!!!
173km/h・インハイ。
3番は腰が抜けた。
「なっ……なん……で……」
二球目。
スライダー。
三球目。
ストレート。
三球三振。
北海ベンチに、静かな声が落ちる。
「……77項目、全部無意味だった……」
仙北は、もはや立てなかった。
⸻
【開明ベンチ】
中村が叫ぶ。
「夏目ぇぇぇ!!なんなんだよお前は!!
野球始めて1ヶ月でデータ野球破壊してどうすんだ!!」
金森
「初回で“対策案77項目”全部死んだの草すぎるだろ……」
鈴木
「夏目の球って……データ取れんの……?」
伊藤はスコアブックを見ながら、静かに言う。
「……無理よ。
普通、選手は“成長に時間がかかるもの”なんだけど……」
ページを閉じ、夏目を見る。
「夏目君は——“試合中に変わる”。
データなんて追いつくはずがないわ」
佐藤は笑った。
「だよな。俺も捕ってて思うわ。
毎回ちょっとずつ進化すんだよ、コイツ」
夏目は水を飲みながら一言。
「……軽かったな」
伊藤
「軽いの基準教えて!!」




