Episode:73
どう話そうか悩む。走竜が軍用とかは、シュマーの件に触れらんねぇから、突っ込まれたらヤバイ。
けど俺が考え込んでたら、先輩のほうがだいたい察したみたいだ。
「言いづらいなら構わないよ。まぁ状況からして、表沙汰に出来るような話じゃなさそうだしね」
「……すみません」
ありがたいけど、ちょっと申し訳ねぇ気がする。だから代わりに、差し支えなさそうな話をした。
「そういえば先輩、ワサール、どうなってるか知ってます?」
「占領されたのは知ってるが、他に何かあるのかい?」
ここは山ン中で、しかもさりげに国境超えちまってるから、さすがに先輩も詳しいこと知らねぇみたいだ。
「あるというか。まぁぶっちゃけ、あそこの首都のマディンなんですけど、西側が無法地帯になっちゃってんですよ」
「ほう……」
先輩の目が一瞬光る。この辺やっぱ、シエラ卒だ。
「あれかい? 軍が法になって、現地の住民をやりたい放題とか、そういう話かな?」
「ええ、そういう話です」
さすが話が早い。
「んであのおばさんと、そこで寝てる息子、逃げ出してきたんですよ」
「なるほどね、君らが行くのに同行したわけだ。けど途中で軍に出会って、ルートを変えたと」
俺はうなずいた。
「なんで、その辺テキトーにお願いできますか? あと汚れ仕事要るなら、そこのジマリさんに言ってもらえれば、ある程度は出来ると思います。詮索不要になりますけど」
「分かった、何とかするよ」
さすがにほっとする。この先輩が請け負ってくれれば、間違いなく安泰だ。
「すみません、助かります」
「いやいや、もうあの人は僕の患者だしね。子供のほうもいろいろショック受けてるだろうから、カウンセリングしとくよ」
お人好しのクーノ先輩、大仕事なのに笑って引き受ける。ほんとこの人、医者向きだ。
「ところで、ひとつだけ訊きたいんだが……」
いきなり先輩が視線落として、自信なさそうな声になった。
「いやその……直接この件とは関係ないんだが……えーと」
エラく歯切れが悪りぃし。




