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アリス 東領家中学校からの旅立ち

――それでは、卒業生が退場します。

  卒業生、起立!


 司会の号令に合わせて、席を立つ3年1組の生徒。

 やや遅れて席を立ち、目立ってしまうアリス。


「あ、卒業生って私もだった……」



 卒業式の間、何度「卒業生、起立!」が告げられたのだろうか。


 アリスは、これから何をされるか全く分からないまま教室に向かう。

 卒業証書は、代表者にしか渡されていないので、教室で渡されるのは何となく分かる。

 だが、やり直し中学生ライフながら、卒業間近の経験がないアリスには全く初めてのことだった。



「では、名前を呼びますので、卒業証書を取りに来て下さい」


 次々とクラスメイトの名前が読み上げられ、担任から卒業証書を受け取る。

 正規入学ではないアリスは、いつの時も最後だった。


「では、アリスさんにはこちらを渡すよう、告げられています」


 担任は、2枚しか持っていない紙を1枚外した。

 下から、赤い厚紙が出てくる。



「失業証書です。

 ここまで3年間、やり直しの中学生活に励んだアリスさんには、ぜひこれからも日本で学生生活を続けて欲しいと思いますので、『オメガピース』を卒業となります」



 ああああああああああ!

 私を中学に行かせた理由、『オメガピース』をクビにするためだったああああああ!



~~~~~~~~



 アリスの目に、眩しい光が差し込む。

 目の前に映っていた担任、それに教室の風景が、徐々に見覚えのあるものに変わっていった。

 ここは、『オメガピース』兵士棟706号室。



「アリス、いい加減起きなさい」


「あ……、英語の藤野先生……。

 この金髪……、『オメガピース』を追われたから、もう1年中学にいられる……」


 そこで、アリスの目が大きく開いた。

 ルームメイトの女剣士トライブが、寝起きのアリスを覗き込む。



「さっきから、『オメガピースクビ』だとか『中学留年バンザイ』とか、なに寝言言ってるのよ。

 これから最後の転送なのに、ここから永遠にいなくなるなんて、考えたくない」


「でも、私はクビですよね……。

 いつも、ソードマスターの足を引っ張って……」


 トライブが、すぐに首を横に振った。



「アリスは、頑張ってるわよ。

 アリスなりに」


「え……」


 ゆっくりと体を起こしているのも忘れて、アリスはトライブの目をじっと見た。


「たしかに、アリスは自分のやりたいことをやり過ぎるっていう癖はある。

 でも、私以上に積極的に動くアリスは、もっと成長できると思う。

 中学校という、ここよりももっと緩い場所で集団生活をさせたのも、アリスを成長させるためよ」


「え……。

 まさか、ソードマスターが私のやり直し中学生活を思い付いた……」


「半分は、そうね。

 部屋にいても、食べてるか寝てるかだけだったから、その時間にアリスを成長させるにはどうすればいいか、転送魔術の得意な兵士たちとも相談していた」



 トライブの机の上には、この「3年間」何十回とアリスを東領家中学校に送り出したチャイムがある。

 アリスの転送は、決して魔術ではなさそうだが、システムを『オメガピース』兵が考えたのだろうか。



「お菓子より、学校の給食のほうがおいしいです。

 兵士棟の食堂よりも、おいしいかも知れません。

 だから、いい時間つぶしになったと思います」


「ごはん以外のことは?」


「さっぱり」



 これが、アリス・ガーデンスというおバカ少女である。



「でも、アリスは中学生をやり直して、きっと成長したと思う。

 今日は、その『3年間』を思い出して、卒業の余韻に浸っていい。

 アリスの任務も休みにしたし、今日は校門を出るまで、アリスをこっちに連れ戻さないわ」


「本当ですか!

 あぁ……、今日で本当にやり直し中学生活が終わるんだ……」



 アリスが着替えたところで、トライブがチャイムのボタンを押す。

 キンコンカンコンの音とともに、アリスが東領家中学校の最後の行事に向かうのだった。

 入った時には、右も左も分からなかった場所は、いま何度だって思い返せる。



――卒業生、起立!

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