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169.新しい王の誕生

 『ギルド会館第二タワー』10階から、エレベーターで1階へ降りる。

 エレベーターには、5エルフの部下とダリアさんの娘のグランブルーちゃん。

 マリーゴールドさんの娘のマーガレットちゃん。

 ルナお母様に『ユニコーン』ちゃん。ジャンヌお母様と『ペガサス』ちゃん、ついでに自分。


 若干定員オーバーな気もするが、さすが日本人の僕が作った日本製のエレベーター、問題無く全員を1階まで運んでくれる。


 重量さえオーバーしなければ大丈夫なようだ・・今さらながら、自分もマミも体は子供だという事実を思い知らされる。

 エレベーター内は完全に三密状態。

 つい先日まで住民票は葛飾区の東京都民であった自分、これは恋毛都知事に怒られそうだ。


(みつ)です 密です密です・・)


「ん?」

「どうされました副長?」

「ああ、いえ・・啓示・・なわけないよね・・気のせいかな・・」


 エレベーターを降りて三密が終わると、不思議と啓示は聞こえなくなる。

 次の選挙もレディーファーストの会に投票するので、この場は見なかった事にしていただきたい。


 どうでもいい事を考えながら、そのまま全員で『ギルド本館第一タワー』を目指す。

 時刻は7時少し前。

 この後ギルド長室に向かって、サンダース様に、石化したジャック=ハート兄さんの様子をみるために『トロント』への入国許可を事前承認してもらう予定。


 自分の権限でも入国は出来るのだろうが、やはり上司に事前に報告しておく。

 『ホウ・レン・ソウ』というビジネスマナーの基本がある。

 すなわち、報告、連絡、相談が、社会人としてのマナー。

 副ギルド長として仕事もマナーも守らねばならない。


 ギルド会館前の円形の広場、噴水の脇を通り過ぎる。

 自分の前を制服姿のルナ様と『ユニ』、ジャンヌ様と『ペガ』が仲良さそうにおしゃべりしながら、手をつないで歩いている。


 とても幸せな光景だが・・違和感を感じる。

 『聖獣』2人の成長が早すぎる。

 昨日の夕方、擬人化した際には本当に幼児といった身長しか無かった。


 それが今は小学校低学年くらいの背丈(せたけ)まで伸びている・・シャルル女王にも、あの子たちは『聖獣』である事は伝えてはいるが、ここまで大きい子供だと、一体何年前からの隠し子なんだと、とがめられるのがオチでは無いのか?


 ここは魔法の国オルレアン、日本人の僕の感覚で考えてはいけないのだろうか?


 『ギルド本館第一タワー』に到着する。

 エレベーターホールまで来たところで、6階の『保育園・小学校』フロアへ子供を預けに行く事にする。


 ここで子供のいない未婚の部下3エルフのうち、まず1番窓口の『農林水産省』担当サリーさんへ声をかける。


「サリーさん、昨日の報告書すべて目を通させてもらいました。農産物は火の国『マドリード』産、海産物は水の国『ベネチア』でほぼシェア100%だったのは驚きでしたよ。オルレアンの農作物では、歯が立ちませんね」

「そうなんです副長。これではオルレアンにいる農民はおろか、漁民もまったく育ちません」


「おっしゃる通りです。今日は、現在流通している海産物と農作物の需要と供給について確認するよう部下5名に指示をお願いします。特に今後オルレアンでは、生産では無く加工に重点を置きたいと考えてます。供給が余剰で価格が安い、僕が昨日調査した限るでは例えばお芋や小麦など、安価に仕入れられる農作物・海産物を割り出して下さい。『ベネチア』、『マドリード』から安く仕入れて、オルレアンの農民、漁民には加工品を生産して高く販売する素案(そあん)を今後考えたいと思っています」

「かしこまりました副長。農作物、海産物の特定に、さっそく市場調査から入ります」


「よろしくお願いします。さて、『大蔵省』担当のリンダさんは、昨日夜勤だったので今日は有給休暇でお休みッと・・『文部省』のエミリーさん。昨日の報告書、さすがエミリーさんです。昨日『西洋教会』の『ハギア・ソフィア大聖堂』で、『ハウル6世』様へ『小学校』の『無料授業券』を配布しております。貧困層を中心に、これから読み書きの授業を受講する希望者が増えてくると思います。引き続き引退冒険者の斡旋と、今日は『西洋教会』の施設で『小学校』を担えるような中小の教会を報告書にまとめて下さい。今度アイリス様の状態が落ち着いたら、教室として使わせていただけるように『西洋教会』へお願いしてみようと思います」


「スズキ様、『西洋教会』の保有する教会のリストでしたら、わたくしとジャンヌに心当たりがあります」


「本当ですかルナ様?」

「そのようなお話でしたら、ぜひ協力させて欲しいのです」


「一郎、ジャンヌも小さい時からオルレアンの教会知ってるから、使えそうなお部屋がある教会たくさん知ってるよ。後でエルミタージュに行ったら、空いてる時間でギルドのエミリーさん宛てに、ギルドカード使って連絡するね」


「ぜひお願いしますルナ様、ジャンヌ様。エミリーさん、聞いての通りです。お2人の情報をまとめて記録を。すぐにとはいかないまでも、いずれはオルレアン中に『保育園・小学校』を広めていきたいと考えています。エミリーさんは当面、引退冒険者の募集と斡旋(あっせん)に集中して下さい」

「はい副長」


「ダリアさんとマリーゴールドさんは6階の『小学校』フロアに行ってから指示します。先に僕らの子を一緒に預けにいきましょう」

「(2エルフ)はい」


「それではサリーさん、エミリーさん。仕事を始めて下さい。あまり無理しないで、適度に休憩取って下さいね。決裁が必要なクエストがあれば、午前中はセバスさんにお願いします。午後は僕もエルミタージュから一度ギルドに戻りますので、急ぎのクエストがあればその時に決裁しますね」


「頼りにしてます副長。でもスズキ君もちゃんと休まないと」

「はは、ありがとうございますサリーさん。ではまた後ほど」


 1番窓口『農林水産省』担当のサリーさん、3番窓口『文部省』担当のエミリーさんと別れる。

 2番窓口『大蔵省』担当のリンダさんは今日は非番。

 2エルフが1階にいれば問題無いだろう。


 1階の増設した外付けのエレベーターの乗り場まで戻り、エレベーターにはルナ様と『ユニ』、ジャンヌ様と『ペガ』。

 ダリアさんとグランブルーちゃん、マリーゴールドさんとマーガレットちゃん、そして自分が乗り込む。


 6階の『小学校』フロアへ到着。

 各教室に分かれており、これからクエストへ向かうであろう女性冒険者が、引退冒険者である先生たちに子供たちを預けている様子が目に飛び込んでくる。


 先日のこの『保育園・小学校』フロアの利用者が300名の生徒がいたとの報告があった。

 今もひっきりなしに、幼児から小学生くらいの子供たちが、次々と預けられていく。


 それだけ需要があったという証拠。

 潜在的(せんざいてき)待機児童(たいきじどう)が、このオルレアンにはもっと数多くいるはずだ。

 うちの子の『ユニ』と『ペガ』も、制服姿のルナお母様とジャンヌお母様とお別れをしている。


「『ユニコーン』ちゃん、必ずお母さん迎えに来るから、ちゃんと良い子でお勉強するのですよ」

「『ペガサス』ちゃん、ママが来るまで良い子でお勉強頑張ってね」

「(2人)はいお母様・・お父様」


「え?ああ、『ユニ』、『ペガ』。ちゃんとお弁当と水筒(すいとう)持ってるな。お腹空いたらお弁当食べるんだぞ。食べる前はちゃんと手を洗ってから食べるように」

「(2人)はいお父様」


「先生の言う事ちゃんと聞いて、しっかりお勉強してきなさい。今日は自分の名前を、自分でちゃんと書けるように先生に教えてもらいなさい」

「(2人)はいお父様」


「スズキ様・・本当にお父さんのようなのです・・」

「一郎・・」


「なんですルナ様、ジャンヌ様?ほら『ユニ』、『ペガ』。グランブルーちゃんとマーガレットちゃんとは仲良くするんだぞ」


「グランブルー、副長のお子様の『ユニ』ちゃんと『ペガ』ちゃんと仲良くするのですよ」

「はい、お母様」


「マーガレット、やられたら、やり返しなさい。いいですね?」

「お母様・・マーガレットは、みんなと仲良くお勉強する」


「ちょっとマリーゴールドさん、そういうの、ジャイアニズムって言うんですよ。ここは仲良くしましょうよ、マーガレットちゃんはとても素直(すなお)な良い子じゃ無いですか~」


「あら副長。子供は厳しくビシビシ教育しないと。マーガレット、副長のお子さんとグランブルーちゃんの女の子とは仲良くしなさい。男の子からちょっかい出されたら、ちゃんとやり返しなさい、良いですね?」

「はいお母様」


「男の子は調教する教育方針なんですねマリーゴールドさん・・えっと、それでは子供達も先生にお願いできましたし、さっそくダリアさんからお仕事のお願いを」

「はい、副長」


「今日も引き続き4階『小児科・産婦人科』フロア、および5階『内科・外科』フロアへの治癒(ちゆ)スキルのある引退冒険者の斡旋(あっせん)をお願いします。今日は特に3階『薬剤』フロアの充実をお願いします。各種病気などに効能のある薬草や薬剤を、安価に(そろ)えて平民・貧困層に供給するのが目的です」


「しかし副長、昨日の報告書にも記載させていただきましたが、現在オルレアンの薬草や薬剤の供給は『ナヤ商会』と呼ばれる商人の集まりが独占しております。王族や軍事用に王宮兵士団関係者への優先配布が行われており、一般には『マドリード』産の薬草などが広く安価に流通しております」


「『ナヤ商会』・・ですか。このオルレアン、やたら刺激の強い薬草しか平民には行き渡っていないんですよね。1階の自動販売機に『マドリード』産の薬草しかおいてませんし、あれ(から)すぎて、子供じゃ薬草食べられ無いですよ」


「スズキ様、今日は『ユニコーン』ちゃんと『ペガサス』ちゃんを王宮のシャルル女王陛下に会わせに行く予定なのです。わたくしから、シャルル女王陛下に『ベネチア』産や『マドリード』産の薬草や薬剤で使われていない物をギルドへ回していただけるように、お願いしてみるのです」


「ジャンヌもルナお姉様と一緒にお願いしてあげる。シャルル女王陛下なら、きっと喜んで回してくれると思うよ」


「ありがとうございます2人とも。僕も今日は王宮へ向かいますので。ダリアさんは午前中は4階『小児科・産婦人科』と、5階『内科・外科』の引退冒険者の斡旋(あっせん)に集中して下さい。3階の『薬剤』フロアへの薬草や薬剤は、4階と5階の『病院』フロアの患者にも必要ですので、女王陛下には午後に僕からもお願いしてみます」


「かしこまりました副長。ではさっそく仕事に取り掛かります」

「では・・マリーゴールドさんは・・」

「あら副長、今日はエルミタージュ学院生の調教で宜しかったですよね?(ビュビュ!)」


「スズキ様!?」

「ちょっと一郎、ムチ振るうような仕草(しぐさ)してるよ!おかしいよ!」


「マリーゴールドさん・・調教では無くて社員教育です、社員教育。『オルレアンネバーランドリゾート』の『キャスト』は、一般の冒険者だけでは人手が足りなくなりますから。エルミタージュ学院で、今頃掲示板(けいじばん)に、『キャスト』を募集するクエスト掲示がされる契約に、エルミタージュの理事会側と話はついてますから。マリーゴールドさんは午前中は引き続き一般の冒険者の調教・・じゃない、社員教育を。午後はエルミタージュ学院生からのアルバイト希望者に対する社員教育をお願いします」


「副長、若い子はすぐに逃げちゃいますから、たくさんロープが必要です」

「ロープ?」

「ちょっと一郎、おかしいよこの人!」


「女の子は絶対ダメですよ。多少人手が欲しいので、男の子はたくさん確保しておいて下さい」

「ムチは?」

「条件付きで許可します。女の子は絶対ダメ」

「ロウソクは?」

「全面的にダメです」


「スズキ様は・・いつも一体何をされているのですか?」

「一郎もさっきから言ってる事おかしいよ!このエルフ何者なのよ!」


「『トロント』から引き抜いた優秀なエルフの女性ですって美馬さん」


「あら副長、可愛い聖女様を2人もお連れなんですね・・どちらかお1人で良いので、ちょっと私に・・うふふ」


「スズキ様怖いのです!(ササッ)」


「一郎、このエルフ目が変だよ!おかしいよ!(ササッ)」


「とりあえずお2人は僕の後ろに隠れてて下さい。マリーゴールドさん、こちらの二聖女様は僕の大事な人なんで、くれぐれも手を出さないように。ムチもダメですからね?」

「あら、残念・・ではさっそく仕事に取り掛かりましょうかね」


(あね)さん!」

「お待たせしました!」


「遅いじゃないのよ、あんたたち!(ビシッ!!)」

「ああ~!!」


「キャ!スズキ様、ムチで男の人たちを打ってるのです!怖いのです!」

「一郎、(あね)さんとかおかしいよ!危ない人たちだよ、この人たち!」


「ルナ様も美馬さんも、大丈夫ですって。ちょっとアレな人たちなんですけど、(うで)は確かですから。マリーゴールドさん、お仕事モードのところ申し訳無いんですけど。ここ『小学校』フロアなんで、1階降りてから始めてもらって良いですか?子供たちに悪影響ですから、(いろ)んな意味で」


「はい副長・・さあ、さっさと行くわよ!(たた)かれたいの私に!(ビシッ!)」

「ああ~!!」


(あね)さん、こちらです。エレベーター(した)(まい)ります」

「さっさとおしぃ!(ビシッ!)」

「ああ~!!」


 マリーゴールドさん(ひき)いる危ない人たちが、エレベーターに乗って1階へと消えていった。


 『ユニ』と『ペガ』はすでに教室でお勉強を始めたのだろう、この場に居合わせていなかったのが不幸中の(さいわ)い。


 ルナ様とジャンヌ様は、自分の後ろに隠れて(ふる)えている。

 よほど恐ろしい光景を目撃してしまったのだろう。


 しばらくして2人が落ち着きを取り戻したので、10階のギルド長室へ向かうエレベーターに3人で乗り込む。


 途中、2人のお母さんであるアイリスが入院している4階の『産婦人科』フロアへ寄ろうと思ったが、例によって旦那のライン=ハルトとイチャついている事が予想され、あえてそっとしておく事を3人で同意する。


 夜はクラウドが見守りに、朝にはライン=ハルトが交代してやってくる時間。

 仲良くしているところを出くわしては、こちらもバツが悪くなるので放っておく事にする。


 10階のギルド長室へ到着。

 いつも通りギルド長とセバスさんが室内におり、ギルド長は執務机に座り、セバスさんがその前で杖を持って立っていた。

 サンダース様の顔を見るなり、ジャンヌ様が嬉しそうに飛びついていく。


「パパ~(ピョン!)」

「ジャンヌ~(ヒシッ!)おお~ジャンヌ~可愛い可愛い~」

「パパ~おひげジョリジョリして痛いよ~スリスリしないでよ~」


「・・おはようございますサンダース様」

「副長か、ルナも一緒だな」


「はいお父様、おはようございます。今しがた、『ユニコーン』ちゃんと『ペガサス』ちゃんを下の階の『小学校』に預けてきたのです。今日はスズキ様が2人に読み書きを覚えるように言ってくれたのです」

「ほお、副長。どうやら『聖獣』は順調に成長を続けているようじゃの」


「さすがサンダース様、情報が早いですね。昨日の今日で、見違えるように大きくなりました。まだまだ小さな子供ですので、今日から読み書きも覚えさせて、立派な『ユニコーン』と『ペガサス』に成長してもらいたいと思ってます」


「え~スズキ君。エルミタージュに登校する前に、聖女様と一緒に伝えておきたい重要な情報が」

「セバスさん、重要な情報・・ですか?」


「え~聖女アイリス様と結婚されるご予定の、『トロント』のライン=ハルト(きょう)でありまするが。先日、『アーサー王6世』に()りすましていた奈落(ならく)・・邪神『タルタロス』の一件は覚えていますかな副長?」


「はい、まさか『トロント』の王様に15年以上前から()けて成りすましてたなんて、今でも信じられない話ですよ。もし、オルレアンのシャルル女王陛下が闇の黒装束だったなんて言われたら、国民のみんなもビックリです。『トロント』の国民だって、『アーサー王6世』が黒装束だったなんて、今でも信じられないはずですよ」


「え~そこで・・ギルド長」

「うむ。『トロント』の王族から正式に打診(だしん)があったようなのだ。聖女アイリス様とご成婚される、ライン=ハルト(きょう)に対して、『アーサー王7世』就任の打診がな」

「『アーサー王7世』!?凄いじゃないですか!」


「そして副長、先日のジャック=ハート(きょう)の件もあってな・・ルナにはつらいだろうが・・」

「お父様、わたくしは大丈夫なのです。スズキ様とジャンヌに、昨日たくさん元気をいただいたのです」

「ルナ様・・」

「ルナお姉様・・」


「うむ、よく言ったルナ。ジャック=ハート(きょう)の石化の後、家督(かとく)を一時的に()いでおられるライン=ハート(きょう)なのだがな。どうやら『トロント』の大将軍の地位に打診(だしん)されたとの情報が入っておる」


「ライン=ハート兄さんが、『トロント』の大将軍に・・凄い・・ハルトが『アーサー王7世』に・・その話が本当なら、今後『トロント』との国交も上手く行きます。先日、ギルドのボルテッカーギルド長にも大変良くしていただきましたし、オルレアンとしては大歓迎の話ですよ」


「(ガチャ)失礼する」

「ハルト!」

「主君よ」


「おお、来てくれたかライン=ハルト(きょう)。聖女アイリスの具合はいかに?」

「安定しております。これもすべて、ギルド長サンダース様と主君の用意いただいたこのタワーの施設のおかげにございます」


「聞いたよハルト、『アーサー王7世』の打診を受けたんだって?」

「はは、報告が遅れました事、まことに申し訳ございませぬ」

「良いってそんなあらたまらなくても。これじゃあもう、ハルトを家来(けらい)なんて言えないよ」

「何を(もう)されますか。アイリス様と私を(むす)んでいただいた主君への恩義。このライン=ハルト、一生をかけてあなたにお仕えしますぞ」


「確かに、それは言えてる。ハルト、アイリスをお嫁さんに出来たのは僕のおかげなんだからね?あれだけイチャイチャしてるんだから、ハルトの生まれ故郷の『トロント』だけじゃ無くって、アイリスの故郷のオルレアンの事も大事にしてもらわないと」

「はは、心得ております」


「それでハルト、『アーサー王7世』の件は?そのまま受けるの?」

「・・闇に()しておりましたわたくし目に、そのような大役を(にな)う資格など・・ございませぬ」


「それは逆だよハルト」

「主君?」


「15年以上、散々(さんざん)オルレアンにも『トロント』にも迷惑かけたんでしょ君?今『トロント』の国民は、主君である『アーサー王6世』が黒装束の奈落(ならく)だったって落胆してるんだよ?どれだけ落ち込んでる事か・・僕には想像できないくらい落ち込んでるはずだよ。散々『トロント』の国民に迷惑かけたんだから。15年分、王様になって、しっかり国民に(つぐな)いをすれば良いんじゃないかな?」


「主君よ・・あえて王となり、国民に(つぐな)いをせよと(おお)せですか?」


「そうだよ。どれだけ迷惑かけたと思ってるの?仕事で迷惑かけた時は、仕事でしっかり返すのが男なんだよ。それともライン=ハルト君、君はまた逃げ出す気?円華(まどか)に・・『アンドロメダ』にもアイリスにも言われたんでしょ?嫌な事があったらすぐに逃げ出して、責任を取ると言って2言目には死んで(つぐな)いますなんて、それは逃げだよ、逃げ。王様やれって言われてるんでしょハルト?迷惑かけた分、取り戻せるチャンスが目の前にぶら下がってるんだから、しっかり王様やって、迷惑かけた以上の幸せを『トロント』の国民に返してよ?アイリスだって、『アンドロメダ』だって、それをハルトに望んでいるはずだよ」


「主君よ・・ううっ・・」

「また泣き出して~アイリスみたいにすぐ泣くなよハルト君」


「かしこまりました主君よ。わが身はすでに、主君の元に預けております。アイリス様に、『アンドロメダ』に笑われぬよう、『アーサー王7世』の(せき)、わが身をかけて(まっと)う致しましょうぞ」


「おお!」

「よく言ったハルト君。男だね君は」


「スズキ様・・素晴らしいお考えなのです。ルナも『トロント』のみなさんが幸せになっていただければ、それはとても嬉しいの事なのです。ジャック様も『トロント』の国民の幸せを望んでおられるはずなのです」


「ジャンヌも賛成!ハート様も大将軍になれば、『トロント』はきっと今より、もっともっと大きな国に発展できるはずだよ。ライン=ハルト様が『アーサー王7世』になれば、きっと『トロント』は平和な国になるはずだよ!」


「よかったですね美馬さん。これでハート兄さんとジャンヌ様が今度こそご結婚されれば、『トロント』とオルレアンの(きずな)は一層固い物になりますよ」

「美馬言うな、美馬。あんたはいつも1言多いのよ!私の事は今はどうでも良いでしょ!」


「(全員)あははは」


 ギルド長室が笑いに包まれる。

 いつも鉄仮面のセバスさんの表情が若干(じゃっかん)(ゆる)んだように感じる。


 ジャンヌ様の許嫁、ライン=ハート兄さんの『トロント』大将軍の就任打診の話と合わせ、聖女アイリス様と先日晴れて夫婦になる事が決まっていたライン=ハルトへの『アーサー王7世』就任の打診。


 来るべき『ヘルヘイム帝国』との戦いに備えて、『トロント』という軍事大国に、今大きな変化の風が吹こうとしていた。

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