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第4話 勃発(1)

遅くなりました。第4話スタートです。

毎朝投稿というスタイルを取っていましたが、更新頻度が落ちていますので書き終わり次第、投稿するようにします。


……投稿時に「完結」のラジオを触っちゃっていたみたいです。すみません。

お話はまだまだ続きます。

 翌朝午前2時。

 コウは管理センターからのエマージェンシーコールで呼び出された。

 トツカチーム全員に対する緊急呼出である。

 これまで訓練以外ではなかった事態だ。


 最速で集まることを要求されるため、コウは緊急時にしか使用が許可されていない自宅から直接管理センターに移動できるポータルを使って呼出後2分でアドミニストレーター室に飛び込んだ。


「……原因はまだ解らないのか!」

「情報が少なすぎます!」


 そこはすでに警報音が鳴り響きアドミニストレーターの怒号が飛び交う戦場と化していた。


「シライ、早かったな。すぐに準備だ! 全然人が足らん。ネギ頭のフォローで65区を担当しろ。このままでは区画ごとパージするしかなくなる!」

「は、はい」


 チーム長のトツカから指示されたコウは慌てて夜勤シフトだったネギ先輩の隣のコンソールに飛び込み事態の把握にかかった。


 リソースが全てを動かしているコロニー。区画単位で最低リソースボリュームを設定しているが、それ以下になると人の魂に関する情報保持を優先する必要があるために、区画維持に関するリソースを解放し、魂をバックアップ領域に一時退避させる必要がある。


 復旧は不可能ではないが、調整には相当な工数を割く必要があるため最終手段とされているのだ。そして、コロニーができてから20年以上が経過しているが、その歴史の中で区画を切り離さなければならないほどリソースの偏在が進むことなど、一度もなかった事態なのである。


「一体何が?」

「原因はわからんが現実世界にアクセスできなくなったらしい」


 作業に入ったコウの独り言に対し、隣に座っているネギ先輩がコンソールを凝視したまま声絶えた。


「現実世界?」


 全人類がコロニーに移行したからといって、完全に物理的な世界から切り離されたわけではない。月面にあるサーバー群のメンテナンス指示を出す必要があるし月面では補充できない一部のレアメタルが不足した場合、物質の補充のため地上から全自動で月衛星軌道まで打ち上げる必要がある。


 電子データとしては半永久に存在することができても、そのシステムを維持するためのハードウェアはメンテナンスを続けないといけないのだ。


「それじゃぁ、コロニーの維持が……」

「だから上では必死に復旧方法を探している」


 会話をしながらもコウとネギ先輩は必死にリソースの調整を行っていた。


「でもそれがなんでリソース不足に?」


 現実世界との通信途絶は可能性としては考慮されていた。

 そのためのバックアッププランも多重構造となっており、最悪、この管理センターが担当しているエリアからの通信ができなくても、すぐさま大きな問題が起こることはない。


「関連性はわからん」


 今度はネギ先輩ではなくコウの背後に立ったトツカが答えた。


「ちなみに、うちが管理するなかではお前達がみている65区だけじゃない。他にも68区、73区、75区、78区、85区、89区が同じような状況になっている」

「え? 65区(ここ)だけなんじゃ」

「状況は危機的だが、それでも1区画が危ないくらいで全アドミニストレーターを招集したりはしない」


 リソースの偏在自体は珍しい話ではない。

 散らせば終わる程度のものだ。

 それなのにトツカチームが管理している256箇所のうち、同時に6箇所もパージの必要性まで検討するほどにまでリソースが偏在している。通常よりもリソースが希薄になる事象は最初89区から発生した。次第に調整対象となる区画は増え、現在の状況に陥っている。この後、さらに増える可能性も考慮しての全員招集というトツカの判断だった。


「これ、偏在というより消えている?」


 コウはモニターを見ながら唸った。

 どこか濃くなる箇所が発生するから薄くなる箇所がある。

 これが偏在の問題点だ。


「ああ、まるでどこかに吸われて消えていく……そんな感じだ。こりゃキリが無いっすよ、チーム長」


 ネギ先輩も頭を抱える。


「チーム長! リソース、いくら集めても切りがないです! ここは諦めてパージを……!」


 別のアドミニストレーターが半ばヒステリックに叫び立ち上がった瞬間、アドミニストレーター室は静寂に包まれた。


「……止まった?」


 あれほど鳴り響いていた警報が止まった。


「チーム長……リソース、正常化しています」


 コウが力の抜けた声でトツカに報告をした。


「こっちもです」

「こっちも」


 あちこちから同じような声があがる。


「なんなんだ一体……」


 トツカも一瞬呆然としていたが、すぐにその目に力が戻り、舌打ちをすると全員に指示を飛ばし始めた。


「異常が起こっていた区画の調整を行っていたものは、そのままモニタリングを続けろ。再現したらすぐに報告! 他のものは原因調査! あと誰か警備局へ連絡して、念のため現地調査を依頼してくれ」


 トツカの声に弛緩したようになっていたアドミニストレーター室に活気が戻る。そしてトツカはもう一つ確認をした。


「現実世界との通信は?」

「復旧しています。地上、月面とも見えています」


 現実世界との通信復旧を試みていたアドミニストレーターが答えた。

 これで全てが元に戻った。


(だが、まだ嫌な予感がする……)


 平和なはずのコロニー。

 その生活の中で一度も感じたことのなかった首筋あたりがチリチリするような感覚

 人間だったころの懐かしい感覚を振り払うようにトツカは手で首をぴしゃりと叩くと、「上へ報告に行く」と言ってアドミニストレーター室を後にした。

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