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第3話 捜索(4)

遅くなって申し訳ありません。

「ミウと会えたね」

「そうだね」


 会場を後にした二人は徒歩でゆっくりと自宅へ向かっていた。

 ミウがユキナではなかった現実が静かに二人を包み込む。


「綺麗だったね」

「そうだね」


 ぽつりぽつりとコウに話しかけるソラに対して、コウもきちんと答えているのだが言葉数は少なかった。


「ねぇ、ママも綺麗だった?」

「うん、綺麗だったよ」

「私もママみたいになれるかな」

「ソラはどちらかといえば可愛いタイプだからね」

「そっか。パパに少し似ちゃったもんね」

「ごめん」

「ううん、二人の子どもだから、それでいいんだよ」

「そうか」


 二人は自然とユキナ達が眠る慰霊碑に向かっていた。


「どうしてミウはママに似ているのかな?」

「……それが解らないんだ」

「解らない? 偶然とかじゃなくて?」


 ソラは自分で疑問をぶつけながらも、コウの答えに違和感を感じていた。


「うん。偶然じゃないみたいなんだ。ただ、それがどういった意図なのか……」

「何それ!」

「ソラ?」

「ママに似ているのが偶然じゃないって、誰かがママの真似をしたってこと?」

「ソラ……落ちついて。みんなが驚くよ」

「……ごめん」


 いつのまにか二人は慰霊碑の前に着いていたのだ。


「パパ……業務棟倒壊のこと、詳しく教えてくれなかったけど、ママも巻き込まれたんだよね」

「……うん」


 慰霊碑の一番最後に「ユキナ・タカガミ・シライ」の文字が刻みこまれている。


「ママはオペレーションセンターの職員じゃなかったんでしょ」

「そう。あの日、唯一の民間人の行方不明者なんだ」

「詳しく教えて」

「本当はソラがユキナと出会った年になったら教えようと思っていたんだ。でもそうだね。パパとママ、それにソラをここに連れてくるために命を懸けたパパの友人達のこと……長い話になるけど聞いてくれるかな」

「うん」


 ただ移行の時の事故に巻き込まれた。

 ソラがコウから聞いてたユキナの話はそれだけだ。

 勿論、東日本の業務棟倒壊事件は学校でも習っている。

 ただそれは死者行方不明数と大きな事故のあらましを数行で解説するようなものでしかなかった。また、オペレーションセンターの局長の一人が犯行に関与していたということもあり、詳細についての情報は封鎖されていたのだ。


「パパとママが出会ったのは……」


 ***


 いつのまにかすっかり陽が落ちかけていた。

 茜色の夕日が泣きじゃくるソラを照らしていた。


「ママ……ママ……」


 全てを聞いたソラは慰霊碑にすがりつき泣いていた。

 ソラを移行させるため、ソラだけをこの世界へ連れてくるためだけにユキナだけではない、クギを始めたとした執行部、警備部の職員達が散っていったのだ。

 まだ15歳の女の子には重い現実だろう。


「ソラ。クギさん達はオペレーションセンターの職員だったんだ。パパもそうだったけど、人々をこの世界へ送り込む。苦しみや悩みのないこの世界であれば、きっと今まで幸せじゃなかった人達も、苦しみから解放できるかもしれない。それを誇りに命がけで仕事をしていたんだ」


 慰霊碑に抱きついたまま座り込んでいるソラの背後からコウは語りかける。


「パパがママが生きているんじゃ無いか……いまでもそう思うのは、あのクギさんや班長達が民間人だったユキナを助けずに終わったりしないだろう。そう信じているからなんだ。全ての人を生きてこの世界へ届ける。それはどんなことがあっても守り続けていた僕達のプライドだったんだよ」

「うん」

「ソラがここで幸せになること。この世界にいる全ての人が幸せに暮らすこと。ただそれだけを望んで、みんなは命を懸けてくれたんだ」

「うん」

「だからパパはママが生きているって今でも信じているし、パパとソラは幸せになるために努力を続けなければならないんだ」

「うん」


 ソラがゆっくりと立ち上がった。


「ありがとうございます。私を届けてくれて。私は元気です」


 そして慰霊碑に向かって一礼する。


 あの日、業務棟倒壊とともに行方不明になった執行部 29名、警備部17名、業務部6名。

 そのほとんどが第一移行室にユキナとソラを届けるために犠牲になったと判断されている。

 彼らが命を賭して届けた『世界の子』。

 その死が本当の意味で報われた瞬間であった。


 ***


「それでミウがママに似ているのが偶然じゃないっていうのは何でなの?」

「うん……ごめん、ソラ。そこはまだ言えない。パパももう少し調べてみたいし」

「わかった。でもミウはママでは無いんだよね」

「……うん。今日会ったミウは単なるオブジェクトにしかみえなかった。あれは魂がある人の反応じゃない」

「そうか。ほんの少しだけ期待したんだけどね」

「……でも、パパはまだママが生きているって信じているよ」

「ミウじゃなくて?」

「そう」


 ミウそのものは単なるオブジェクトだった。

 だけど、それならなぜコウの手にセキュリティカードが現れたのか。


「何か解ったらソラにも共有するから。もう少しだけ待って」

「絶対だよ」

「ああ、約束する」


(プロジェクト『ユキナ』。必ずそこにはユキナにつながる何かがあるはずだ。あそこにはクギさんたちがいたんだ。きっと……きっとまだ希望はある)


 コロニーに移行して14年。

 ようやくコウの心に火が灯った。

第3話はこれで終了です。引き続きストックが無い状況は続きますが週2~3回は更新できるようにします。色々考えてはいますが、PVはどうやったら延びるんだろうなぁ……。

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