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第3話 捜索(3)

昨日は更新できなくてすみません。

 闇と光。

 静と動。


 計算され尽くした演出でミウのライブは盛り上がった。

 現実世界では作り出せなかったユーザー参加型のエンターテイメント。それがコロニーにおけるライブだ。


 ライブ終了後、数分ほどソラは余韻に浸って呆けていた。

 たしかにユキナそっくりのミウであったが、そのライブパフォーマンスは本物だ。

 純粋に音楽を楽しめた。

 途中から、単なる観客としてライブ会場に溶け込んでしまったのだ。


「凄かったね」

「……」

「パパ?」


 音楽に彩られたミウがコウのすぐ前にいた。

 そしてコウと目があった。

 その瞬間、作られたオブジェクトに過ぎないはずの青い瞳に、一瞬、ユキナの面影である黒みが差した。


(勘違いなのか?)


 アイドルが自分の方を見ている気がする。

 そんな勘違いは誰もがするものだ。


「ねぇ、パパ!」

「え……ああ、うん。何?」

「ママに……やっぱり似ていた」

「髪の色も違うし、演出が派手だったからなぁ。ユキナはどちらかといえばおとなしい性格だったから、ちょっと印象は違うけど」

「違うけど?」

「顔はそっくりだった」

「そう」


 コウの思い出補正がそうさせているのか。

 だが、アイドルとしてステージに立つミウの姿形は紛うこと無くユキナそのもののように感じた。


「あれ……パパ、そんなものを持っていた?」

「え?」


 ソラに指摘され、コウは自分の右手に握りしめてる、身に覚えの無い白いプラスチックのカードに気が付いた。


「なんだろうこれ……いつのまに……!」


 そこでコウはそのカードの正体に気が付いたのだ。


「ソラ……楽屋に行ってみよう」

「え、でも入れないと思うよ」

「うん。でも行ってみよう」

「わ、わかった……(なんだろう。いつものパパっぽくない)」


 コウの勢いに押されるようにソラは頷いた。


 ***


『関係者以外立ち入り禁止』


 舞台袖の廊下を進むと、一枚のドアと看板が出ていた。

 ファンと出演者との接触を断つには物理的に遮断してしまえばいいのだが、これが様式美だということで、接触可能な設計思想で会場は作られていた。

 もちろん、ドアの向こう側はセキュリティレベルが違う空間であり、入ろうと試みることはできても実際に入る事はできない。


「ドア、さすがに開かないね」

「そうだね」


 そういいながらコウは持っていた白いカードをドアの横にあるボックスにかざす。


「え……開いた。パパ……そのカード、会社のコネ?」

「違うよ。さっきも言ったけど、パパの仕事にはそういう権限はないんだ」

「じゃぁ、なんで?」

「行こうか」

「え、うん……入っていいのかな……あ、パパ、ちょっと待って」


 ソラの言葉を待たずに奥へ進むコウをソラは慌てて追いかけた。

 通路は一本道。

 照明は薄暗かったのだが、コウが進むにつれ順次、ライトが点灯していく。


「ねぇ、パパ、駄目だよ。怒られちゃうよ」

「うん」


 そう返事しながらも、コウはどこか慣れたように通路を進む。

 やがて通路は行き止まりとなり、そこにはドアが一枚。

 その手前に右に入る廊下があった。


「こっちかな」


 コウはそう言って、右の廊下を進む。

 廊下はすぐ終わり、まるで食堂のような広いスペースに出た。


 そしてコウは立ち止まった。


「パパ……そんなに急がないで。本当に見つかったら怒られちゃう……あ……」


 追いかけてきたソラは食堂の中央付近のテーブルの前に座っている女性に気が付いた。

 その女性の髪の毛は青緑色。


「パパ……ミウ……だよ」

「ああ」


 コウはそう言ったまま動かない。

 一方、大きな食堂に一人だけいるミウも微動だにしない。


「パパ……」


 ミウを見つめたまま歩き出せない父親に何故か少しイラついたソラは、そのまま食堂の中に入っていった。


「はじめまして!」


 そのまま元気よくミウに挨拶をしてみた。

 そしてマジマジと観察をする。


(ママそっくりだけど……私と年齢があまり変わらないような……なんか変な気分だな)


 じろじろとみつめる不躾なソラにも何の反応も見せないミウ。

 目は開いているが、そこになんの感情も浮かんでいない。


「ねぇ、パパ。ミウ、動いていないよ」

「……」

「パパ!」

「え? あ、ああ。何?」

「だから、ミウは止まっているって」

「止まっている?」


 理解が追いついていないコウに業を煮やし、ソラはコウの元に駆け寄り強引にミウの前に連れて行く。


「ほら、動いていない」

「……そうだね」

「触れるね」


 相手が人であれば、通常、許可した相手しか触る事ができないのだが、ソラは動かないミウの肩を触ってみたのだ。


「単なる無機的なオブジェクト扱いになっているのかな」


 コウがそう呟く。

 オブジェクトとして存在はしているが、現在は動いていない。

 魂の存在しない単なるリソース。


(それならなぜ、このカードを……)


「パパ……もう行こう。やっぱりママに似ていたのは偶然だったんだよ」

「そう……なのかな」


 それでも一縷の望みを求め、コウはミウをじっと見つめる。

 だが動き出す気配は無い。


「あー、どちら様ですか?」


 その時、背後から声を掛けられた。


「あ、す、すみません。道に迷っちゃって!」


 振り返るとそこには、この世界では珍しいスーツ姿の若い男が立っていた。

 咄嗟にソラが言い話をした。


「道に迷った? 物理的にも関係者以外入れないエリアなのに……あ、どちらかのスポンサーの方ですか?」

「あ、いえ……あ、そんな感じです」


 ミウを見つめ続ける頼りにならないコウに代わりしどろもどろになりながらも、ソラが必死に言いつのる。


「そうですか。あ、もうこの空間ごと閉鎖しちゃいますのでお帰りいただいてもいいですか?」

「わ、わかりました。パパ、行こう」


 ソラはそういってコウの手を引いた。


「すみません、一つ質問をしてもいいですか?」

「はい? いいですよ」


 ソラに引っ張られながらもコウは若い男に声をかけた。


「この場所。どうして、ここにこの場所があるんですか?」

「どういう意味ですか?」


 その質問に若い男が警戒するような表情を浮かべた。


「あ、いえ。会場の中にこんな食堂があるなんて」

「ミウの楽屋として用意した空間ですよ」

「楽屋ですか?」

「ええ、楽屋です」


 それ以上は説明してくれそうも無い。

 そう感じたコウはソラと一緒にその場から移動を始めた。

 だから二人は気が付かなかった。


 ミウの瞳から僅かにゆらめいたことを。

 そして、


『ソラ……』


 その口が小さく動いたことを。

伏線でも何でもありませんでしたが、第2部も引き続き、コウとソラとユキナの物語です。誤字大魔王なので誤字脱字などがあればお気軽にご指摘願います。

SFジャンルはなかなかPVが延びませんが、ブクマや評価をいただけるとヤル気が増進しますm(_ _)m

感想もドシドシお待ちしております。

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