3~Reset,Reboot,Relaunch~
まだ予定の所まで書けていないんですが、流石に申し訳なく、次話を投稿させて頂きました。
ここから、かなり設定が変わってしまいますがお許しください。設定の変更点は以下の通りです。
・キャラや世界観などの細かな設定→二章へ続くように修正しました。
なにとぞ、よろしくお願い致します。
都市部を3人で探索しながら、僕は配布された端末で設定を調べ、効率のよい攻略法を摸索していた。
どうやら、ショップというのは既に手にしている武器やアイテムを売却し、得た金でさらに強力な武器やアイテムを手に入れられる。しかも購入した商品は購入者のいる座標まで送ってくれる、というものらしい。
スコアボードというのは、チームごとに生徒の生死の判断や殺した数などが分かるみたいだ。
「ミノル君、あの建物ならどうだ?」
「あ、はい。あれくらいでいいですかね。……さすがゲーム、完全に安全な所はなかなか簡単には見つりませんね。」
けんじさんの問いに微笑みながら答える。
僕らの都市部探索の理由は、武器やアイテムの入手ももちろんだが、主な理由は安全で睡眠をとれる場所を確保することだった。……寝床に加えて、拠点を確保するのはこのゲームの攻略への道として十分大切だろう。
「ミノル君、一応先輩だし年上だからって思ってるのかも知れないけど…。慣れない敬語を無理に使わなくていいよ。」
けんじさんが指さした廃墟デパート、その2階で集めた荷物を降ろしながら彼は僕に言う。
「はい。分かりました。……じゃなくって、ええと…分かったよ。僕もこっちの方が楽だ。よろしく、けんじさん。」
僕は手を差し出し、けんじさんと握手をした。
ついさっき言い合ったばかりだけど、この時僕は彼を……いやお互い、仲間として受け入れられた気がした。
「あっ、そうだ。寝床だけど、僕は少し離れたところに置くよ。」
ふたりは一応恋人同士だし、女性のそばで眠りにつくのは無礼な気もした。
その日は暗いので眠ることにした。……僕も早く寝ようとはしたが、そういう訳にもいかない。………なぜなら、さっき端末の情報を確認している時にしっかりと確認できていない場所があったからだ。
気になっていることは二つ。一つは各個人の種族に沿った能力にプラスアルファで加えられる力、“特性”だ。
この特性、ただ端末上の自分の名前をタップするだけで確認できた。僕の特性は『自分に関する速度の変換』。……はじめは意味が分からなかったが、少し考察した結果、ひとつの推測にたどり着いた。
これはゲーム、ましてやFPSという競技性の高い物だ。つまりなんらかの形で相手より有利になれる特性だと予想がつく。
僕の好きなヒーローに<フラッシュ>というヒーローがいる。彼の細かい設定は覚えていないが、彼は細胞活動の高速化による事故治癒、移動速度の高速化、思考速度の高速化、が可能だ。
バカな僕がここまで考察できたのも思考速度の高速化ってことじゃないか?……僕の特性は彼に類似したものに違いない。
そして気になっていたもう一つ、スコアボードのプレイヤー。……端末の機能であるスコアボードでは先に説明した通り、チームごとに分かれており生徒全員の生死の確認と殺した人数、言わば“キル数”が分かるものになっていた。
現在ですでに生存者は74人。……26人が命を落としている。そしてその大方がチーム同士での戦闘、つまり“普通に”死んでいる。
戦闘が起きれば、死者が出るのは至極当然。すでに死んでいる者のほとんどが相手を一人か二人、葬っている。
しかし……僕が気になったのはそんな当たり前の事じゃない。………問題はチーム名、プレデター。
そのチームに所属する生徒に関して一人も死者が出ていないのに、すでにチームメイトの全員が4,5人は殺している。
単純に強いだけかもしれないが、最悪のパターンは……
「んっ…」
ふいにみゆの漏らす声が耳に入る。
「静かに。……ミノル君が起きちゃうよ?」
そしてけんじさんの声。
このクソカップルめ……僕は初めから寝てねぇっての。僕が君たちを生き残らせる方法を摸索してる最中にはじめやがった……。
僕は考察を一旦中止し、眠りにつくことに励んだ。
キスの音が響く屋内で、僕は眠ることができなかった。だけどそれはみゆやけんじさんのせいじゃない。……いやそのせいもあったけど、僕は不安だった。
………そう、この音で敵にバレることが不安だったんだ。仕方ない、ほんとは道徳的にも精神的にも早く寝るべきだけど、ことが終わるまで警戒するか。
僕は先に得たAK-47とその弾薬を売却、MP7とそれにあった9mm弾を購入していたが、まだ装填できていない。
今は敵が来ないことを祈るしか……。
「はうぅ……ねえ、状況考えて…ミノルも真剣に私たちの事を考えてくれてるのよ…。」
「分かってるさ、でももう付き合い始めて何か月だ?キス止まりなんて間違ってる……。な?いいだろ、胸くらい。」
「でも……」
分かってんならやめろ!このやろ………
…………!!
僕は地面に右耳をぴったりとくっつけて、耳を澄ます。
……やっぱりだ。僕じゃなきゃ気付けなかったかもしれないが、僕は聞き取った。
そいつの“足音”を…!
「みゆ!けんじさん!…敵だ!!」
「ミノル…!」
「み、ミノル君!?…起きてたのか!?」
クソ、気づかれた……。相手の足音は止まり、慎重にこちらの行動を伺っている。幸い、ふたりは服を脱ぐところまでは進んでいなかった。
僕は人差し指を自分の口の前に構え、一般常識上の静かにしろ、というサインを二人に送るとできるだけ音を立てないようにMP7に弾を装填する。
足音は一人だったが、僕の予想では敵は少なくとも三人はいるだろう。
自分たちでもその機能に気付いていたらしく、みゆは購入したG36、アサルトライフルを。けんじさんはM60、つまりライトマシンガンを構えた。
……これは、僕の“特性”を試す良いタイミングかもしれない。
僕は立ち上がると、深呼吸をして………走り出した。己の出せる最大のスピードで。……デパートの二階、僕達が拠点にしていた場所は、敵がいると思われる電力を失ったエスカレーターまで少しの距離がある。
十分な助走が付き、僕の身体のあちこちを青色の稲妻が走り、まるでスポーツカーのようなスピードを発揮した。
「うわあああぁぁぁっっ!!」
しかし、僕は自分の速度に脳の処理が追い付かず……
エスカレーターでM16A1を構えていた男子をタックルで吹き飛ばすと、そのまま一階の商品棚に突っ込む。
スピードを失い、目を開けると、エスカレーターの左右で待機していた二人の男女が不審がりながらこちらに銃口を向けていた。
「うぅ……。」
僕はなんとか上半身を起き上がらせると、MP7を片手で構え、発砲した。
中距離、遠距離ならまだしも、近距離戦闘においてMP7はその力を十分に発揮する。
細かく高い銃声が高速で鳴り響き、ぱたりと敵2人は倒れた。ゲームという感覚があるからか、吐き気や罪悪感はない。
「移動しよう。新しい拠点を探さなきゃ。」
僕はエスカレーターを降りてきたふたりに言った。