2~没頭型VR~
入学してはや2週間ほど経った。この学校での生活も慣れてきて、学校では寮での生活が始まった。
ヤンキーさんから助けてくれた、けんじさんは従姉のみゆの彼氏ってことが分かった。
その日の一限目、この学校へ来てから楽しい事ばかりの僕が一番楽しみにしていた授業だった。
………僕がプロゲーマーになったゲームジャンル、FPS。期待されているFPSタイトルのベータテストの権利が僕らこの校の生徒に渡っていた。
僕ら全校生徒100人は、100人分のベッドのような台が置かれている部屋に連れて行かれた。
他クラスの担任教師と教頭、校長はいたのに何故かその部屋に影山先生はいなかった。
部屋には教師一同のほかに、テレビでよく見るゲームクリエイターとその部下のような男が3人いた。
このクリエイターは、VRの先を行く臨場感を感じられる“没頭型VR”を開発したことで有名で、没頭型VRゲーム初作品が今作だ。
タキシードとシルクハットという変わった服装も有名だ。
「コホンッ……えぇ、今回はわが社の新作ゲームのベータテストに参加してくれて、誠にありがとうございます。………これって何て読むんだっけ?」
クリエイターの質問に部下が小声で答える。アメリカ人なので日本語は苦手なのだろうか。それにしても綺麗な日本語で話すけど。
「ああ……アハハ…えっと、ボクの名前はレイチェル。レイチェルって言っても女の子じゃないからね。…アハハ……えっと、じゃあゲームの説明を。名前を書いといたから自分の台についてくれる?」
僕ら生徒は自分の名札のついた台のそばについた。
「えぇ……このゲームは当社が開発した没頭型VRを利用したFPSです。」
レイチェルはカンペを読み上げていく。
「今作は多くのプレーヤーが一つのサーバーで一緒に遊べるMMOシステムを搭載しています。……えぇ…アハハ……また最新のエンジンによって現実ような映像で楽しめます。」
とりあえずヘッドギアみたいな機械をつけて台に寝ろと言われ、そうした。
細かい設定はゲームが始まってから、とのことだ。
台に寝転がり、ヘッドギアをつける。
すると、視界が一瞬暗転した。………かと思ったら、僕はどこかに倒れていた。
目の前の風景は完全に青空でさっきまで見ていた部屋の天井ではない。起き上がるとそこは、草原……のような場所らしかった。
周りには従姉のみゆきとその彼氏である、僕を助けてくれたけんじさんが倒れてた。
ここが、ゲームの世界、ということだろう。
大学生が背負ってそうなリュックがそばに落ちていた。……中にはスマホ型のデバイスが一つ。
電源をつけると、画面には気味悪く笑ったスマイルマークが移っていた。
「ハハハハッッ!…ゲームの説明をするからお友達を起こしなッ!ハハハッ」
声の主はスマイルマークだ。
僕は周りのみゆとけんじさんを起こす。
地面の草の触感は本物のようで、音も完璧。噂のクオリティは本物みたいだ。
少し時間が経つと、上空から声が響いた。
「コホンッ……やあみんな、レイチェルだ。フフフッ、皆起きたみたいだな。じゃあゲームの説明をするからよく聞いてろよ。聞き逃しても知らないからな。」
上空を見渡すと、一機の大きな気球のような飛行物があり、声の元はそれだった。
「えーっと、皆には“暗殺者”、“戦士”、“賢者”の3つの派閥の中から更に細かく3つに分けた種族のうち、どれか一つにランダムでなってもらう。種族にはそれぞれ個性があるからうまく使って戦え。……細かい設定はそのスマホから見て、自分のもそこに書いてあるからさ。」
端末を開くと、『スコアボード』『ショップ』『掲示板』というメニュー項目があり、画面の一番上には【Jack_the_Ripper】という僕がよく使うIDと“暗殺者/吸血鬼”という派閥・種族が記されていた。
「ベータテスト参加人数は100人。スマホの操作はなんとなくで慣れて。……このオープンワールドで100人で殺し合ってくれ。5人1チームになってるはず……はずだよ。人数余ってるかも…ヘヘッ…まあ頑張れ。…………あぁ、あと、死なないようにな。“ここ”で死んだら現実でも死ぬようになってるから。…ログアウトはできないからね。……へヘヘッ!ッはははッ!あぁはははっはっはっは!」
ブツッという無線を切るような音がして声が切れた。みゆもけんじもきっと他のチームの人たちもログアウトができないことと、現実でも死んでしまうという事に戸惑っていたが、僕はレイチェルのキャラの崩壊加減と皆5人チームなのにこのチームだけ3人とかいうクソゲー加減に驚いていた。
僕ら3人はマップの中心部と思われる都市に向け歩きながら途中途中にある廃墟の中を探索した。
「あ、こっち弾薬っぽいのあったよ?」
みゆの声に反応し僕がそちらへ行く。みゆはその手に弾薬が詰まった箱を持っていた。
「それは7.62mm弾っぽい。…僕が拾ったAK-47に使えると思う。貸そうか?」
僕は手に持ったアサルトライフルを差し出すが、みゆは不安そうな顔をして首を横に振る。
「なあ、ミノル君……いや“君”はいらないか…きみ、本当に人を殺すつもりなのか?」
けんじさんが瓦礫を軽く蹴ってどかしながら問う。
「どうゆうことですか?」
「敬語はいらないよ……さっきから都市に向かうのはいいけど、分かってるように廃墟に入って戦う準備してるじゃないか…。」
「え……ええ。まあ、自分の身を守るためですし。」
「守るためって……他のチームだって高校生なんだ、戦う奴なんて……」
「いや違いますよ。」
僕は弾薬とAK-47をバッグの中にしまってから立ち上がる。
「僕たちは今、“ここ”に閉じ込められてるんです。ここで死んだら現実でも死ぬなんて状況で、戦うことをやめたら何をされるか分かりません……って思う人は多いと思います。」
「分かってるさ、でもまだ皆まだ高校生だし人を殺すなんてそんな……。」
「分かってないですよ。初日に僕に絡んだ不良といい、この学校にはそう考えるバカだっているはずですよ。」
けんじさんは押し黙ってしまった。
度々、銃声は聞いたが問題なく都市部へ到着。
大きな都市の入り口に立っていた。
けんじさんにもなんとか理解してもらい、僕のAK-47、けんじさんはM37というショットガン、つまり散弾銃を拾い、みゆはMac-10を拾った。
緑の液体の入った瓶もいくつか拾い、携帯端末で調べると回復薬であることが分かった。弾は少ないし、不幸中の幸いというか3人っていう謎のペナルティもあったが、初期の装備としてはなかなかに充実していると思う。
いや他のチームがもっと充実していたら無駄だけど。
ここに来るまで銃声は何度か聞いたものの、直接の戦闘がなかったのも幸運と言えるだろう。




