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会食、キュモヲタ実は良い人?

 戴冠式の衣装からドレスに着替えた私は会食の場所に向かうと、外でブリーズお姉様にルロス、アルバロの3人が待っていたの。



「ララちゃん、とっても素敵な戴冠式でありんしたよ」


「私の今後は御身と共にあらん事を」


「最後のはちょっと冷や汗ものでしたよ」


「あはははは……ありがとう! でも最後のは聞いてなかったんだもの。 仕方がないじゃない」


 少しだけ話をした後、アルバロが耳打ちしてきて、



「婚姻という名目の国狙いがたくさんいるでしょうから、これからの方が大変ですよ」


「うん、そうだよね。 サーラにも言われてたけど、きっとあの手この手で近づいてくるに決まってるよね」


 グッと両手を握りこぶしを作って頑張る素振りを見せると、ルロスも珍しく4人で一緒に笑いあった。





 着替えの済んだ私が宴会の会場に入ると盛大な拍手が起こって、特に国内と同盟国からは喜びの声まで聞こえてきたからホッと一安心。 でもメビウス連邦共和国の方からはルーチン的な拍手で、決して祝福されてという感じは見受けられなかった。



 私の挨拶が済んで、お父様、お母様のいる場所に侍女に連れられて行くと、歓談と会食が続けられる。


 会食は立食式で、隅に少数の座席が設けられていて、王国兵士たちによるムードにある音楽が流れているんだけど、メビウス連邦共和国の領主たちは自国内だけで集まっていて、私たちとはあまり会話をしようとしていないみたい。



「お父様、メビウス連邦共和国の方たちは私たちの事を避けているの?」


 苦笑いを浮かべたお父様が、そっと私に自国のいざこざに手を出した事を未だ根に持っているようだって教えてくれた。



「プリンセス ララノア、私と少しお話などいかがでしょう」


 来た!

 早速メビウス連邦共和国の誰かはわからないけれど、男の人が私に声をかけてきて、お父様を見ると頷いてくる。



「喜んで」


 誘われるままついて移動していくと、そこには数名の若い男の人たちが待ってましたとでも言わんばかりに控えていて、1人づつ自己紹介をしてくるの。


 自己紹介が終わると、早速結婚話かとも思ったけどそうはならなくて、当たり障りのない会話から始まって次第に私のドレスや容姿をべた褒めしてきた。



「プリンセスのそのドレス、スカートに膨らみをもたせていないんですね」


「ええ、身動きしにくいから膨らみはつけていないの」


「でもそのおかげで歩くときの腰の動きが色っぽく見えて良いですね」


「あはは……ありがとう」


 突然1人が私の腰に手を回して抱き寄せてくる。 顔を間近に近づけてきて慌てる私。



「すごくほっそりした綺麗なくびれだね。 簡単にポッキリと折れてしまいそうだ」


 その手を笑顔でそっと優しく退けて離れながらお礼を言う。



「まだプリンセスは決まった方はいないんでしたっけ?」


「いいえ、残念ながらまだそういう方とは出会っていないの」


 気がつけば次第に婚姻がらみの話に変わっていって、自分たちがどれだけ凄いかを自慢する人も出始めてくる。

 もちろんそんな人ばかりではなくて、気づかって行き過ぎた話になってくると止めてくれる人なんかもいるけど、返答に困るような内容の話題を振ってくる人も出てき始めたの。



「や、やめるんだな君たち。 プ、プリンセスが返答に、こ、困ってるじゃないか」


 ええぇぇぇぇえ!


 まさか困ってる私に手を差し伸べてくれたのが、ヴォルフ領主の息子キュモヲタだった事に驚く私と、止めに入ってきたキュモヲタの容姿を見て何だこいつとでも言わんばかりの目を向けて、メビウス連邦共和国の貴族の男の人たちの会話がとまった。



「なんだ? 失礼な奴だな。 お前の方こそ身分をわきまえたらどうなんだ?」


「ぼ、僕はヴォルフ領主の子息のキュモヲタなんだな、プ、プリンセスとは身分は違うけど、き、君たちとはそうは変わらないんだな」


 それを聞いて数名が声を出して笑って、そのうちの1人、さっきからわざと私の返答に困ることばかり聞いてきていた男の人がキュモヲタを指差しながら、



「そうかい、確かに俺らと身分は違わないのかもしれないが、オークに言われたくはないなぁ、あ!?」


 うわ、どうしよう。 こういう場で争いは良くないことだし、特に今回はマルボロ王国がホスト側だから気分を害させたらダメだよね。


 キュモヲタもそれをわかっているみたいで、オーク扱いされても言い返したりはしないで笑顔で我慢してるみたいだった。



 ダメだよね。 我慢しなくちゃいけないんだよね。 でも、でも……


「どうしたオーク? 言い返さないってことは本当に……」


「良い加減にして! よりにもよって彼をオーク扱いなんて失礼にもほどがあるわ!」


 ダメだよ私、それ以上言ったらいけないんだから。



「貴方の方こそ、さっきから私に答えにくい卑猥な質問ばかりしてきて最低じゃない! 彼の方がよっぽど立派な振る舞いよ!」


「プ、プリンセス、僕は、僕の容姿は僕自身がよくわかってるから、い、良いんだな」


「良くないわ! キュモヲタは困ってる私に助けに入ってくれた勇気ある人よ!」


 プッククク……


 それを聞いて嘲笑う数名にその辺にしておけって止める人。



「プリンセスは、そんなにオークが好きでしたか? これは俺たちの方が勘違いしていましたよ」


 むむぅ! ぬぬぬぬぬぅ! もうさすがに我慢の限界がきそう。



「その辺でお引き取り願えないだろうか? それ以上のプリンセスへの侮辱は、いくら我が国がホスト側であっても我慢の限界というのがあります」


 スッと割って入ってきたジークフリートが事を収めようとしに来てくれる。 ジークフリートの後をついてきて事の成り行きを惚れ惚れした顔で見つめる女の人達がたくさんいるところから、この女の人達に囲まれてなかなか動けなかったみたい。


 そう言えばとアルバロを目で探すと、次期王宮司祭っていう事で、同じように女の人に囲まれてこちらには気付く余裕もなさそうだった。

 じゃあルロスは? と目だけで探すと、涙を流しながら食事に夢中……



「なんだい色男。 そこまでわかってるならひっ下がって後ろで待っている女性達とよろしくやっていれば良いだろ?」


「そうはいかない。 プリンセスの臣下なのでね」


 さすがにこれ以上はマズイと思ったメビウス側の数名も止めに入るのだけど、歯止めが効かなくなった彼はついに牙を剥いてきた。



「そう言えばこの国は今、ドラウの進軍の噂があるんだったな。 そんな状況でまさか俺たちと険悪になって得があるのか?」


 これにはジークフリートも国の事になるため言い返す事もできないで黙ったままになってしまう。


 こうなったらここは私が謝って……



「あの……もうやめてください。 私が言いすぎたのが悪いんです。どうか 謝罪しますので……」


「姫様が謝罪する必要はありません。 どう見ても挑発していたのは彼の方だ」


 新たに間に入ってくれた人物はフードで顔は見えないけど、黒い外套姿の7つ星の騎士で、あれ? 姫様? それにこの声って。



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