覚えきれないよ
今日も王宮前で来客待ちをしていると、馬のいななきが聞こえてきてそれが空からだってわかって見上げると、おぼろげな姿の馬に跨ってやってくる数名の一団が。
「おお、幻馬が来たってことはあれはキャビン魔導王国か」
次第に近づいて着地すると幻馬は煙のように消えて、残された数名の人だけになった。
「お招きいただき光栄ですわ。ヴォーグ王、とベネトナシュ。
それと初めましてプリンセス ララノア、キャビン魔導王国女王キャビン=エアロです」
あれ、お母様を呼び捨て? って言うかお母様と同じぐらいの年齢よね。
「あ、ありがとう。 お母様知り合い?」
うわ、緊張して馬鹿なことしゃべっちゃった。
変な挨拶と不思議がる私をエアロ女王がケラケラ笑いながら、お母様とは魔導学院時代の同級生なんだって教えてくれる。
「お母様って何気に人脈凄い」
「……何気には余計ですよ、ララ。 エアロ女王という事はグランド女王は肖像画になられたのかしら?」
え! 肖像画? お母様ってそういう事聞いちゃうの?
なんて驚く私に気がついたエアロ女王が肖像画というのを教えてくれて、キャビン女王家は代々自らの肖像画を描いて、そこに魂の一部を吹き込む事で精神のつながりを持つことで蓄えられた知識や知恵を共有していくんだって。
「まだ母は健在なので私には共有されていないけど、いずれ近いうちでしょうね」
うひぃ、なんとも恐ろしい家系なのね。
お母様に後で思い出話をする約束をして、数名の魔導兵を引き連れて王宮の賓客室に向かっていった。
最初にエアロ女王を見たから、次に到着して姿を見せたウィンストン公国の一団は本当にごく普通に見えて凄い安心。
馬車から降りてきた大公様も……これまた女の人。
「よく来てくれた、ローラ女大公」
「この度はおめでとうございますヴォーグ王様、それとベネトナシュ」
そしてまたお母様が呼び捨てだ。
「初めまして、貴女がララノアですね。 お母様のベネトナシュとは少ない時間でしたがドルイド魔法の師弟関係だったんですよ」
疑問に答えてくれるように女大公が私を覗き込むその瞳は左右の色が違うオッドアイ。
そんな瞳に見つめられて思わず目を泳がせてると、耳元に手を伸ばしてくる。
「イフリート?」
そう言ってローラ女大公がお母様に振り返るとお母様も頷いてくる。
そっか、ローラ女大公もドルイド魔法が使えるんだからイフリートの事がわかるんだね。
それでは後ほどってローラ女大公が王宮に向かっていくと、その後を数名がついていく。 護衛っぽくないって思ったら、ウィンストン公国の貴族の方達だった。
「ローラ女大公の後を歩く人、お母様の事を知っているみたいだった」
「……ええ、今は父親の後を継いで侯爵になったフィリップと言って、母様の魔導学院時代の同級生よ。 それでサハラさんを慕う男色家だったけれど、結婚されたと聞いてるわ」
え、男色家? サーラの事が好きだったって。 そんなのダメだよ。 同性なんだから。
それにしてもお母様の人脈は凄い。 元はただの平民だったって聞いているけど、この人脈がぽや〜んとしているお母様を王妃にまでさせたのかも。
そんなこんなでしばらくすると、どこからともなく、鳥だ! ドラゴンだ! 違う! セーラム女帝だ! なんて声が聞こえてくる。 わけもなくて、隣に立つお父様が口走って指差す方角の空には神々しくみえる人が浮いていて、私たち目掛けて降り立つと黄金の鎧姿に白い翼姿のエルフで、フワッと手を振るとあっという間にドレス姿になった。
「やほ、ヴォーグ、ベネトナシュ。 それと初めましてララノア?」
「え、ええっと、セーラム女帝様!」
その名で呼ぶとセーラム女帝は恥ずかしいからやめてよねって言われちゃう。 そんなセーラム女帝はエルフはエルフでもハイエルフっていう稀少なエルフで、完全に不老なんだって。
「ねぇそれよりサハラは知らない?」
「あいつならここ数日前から姿をくらましてるな」
「サハラったら、すーぐ私の前から姿を隠すのよね。 まぁいいわ、どうせ後で会うだろうしね。 もうすぐ数人後から来るからよろしくぅ」
そう言って慣れた足取りで王宮に入って行っちゃった。
えーっと、なんだか想像していた伝説の英雄像と全然違うんだ。 もっと最初のインパクトみたいなまま神々しいのかと思ってた。
それでセーラム女帝が言ったようにしばらくして数名のエルフたちがきた。
「もうセーラムは来ちゃいました、よね。 この度はお招きいただきありがとうございます。 初めましてララノア、僕はオル。 セーラムの弟分に当たる金竜です。
そう言ってくる人はエルフではなくて人間のように見えたけど、金竜だなんて言うから驚いてお父様を見ると、お父様は気にする様子もないまま笑いながら頷くと、後ろに控えているエルフの人たちも苦笑いを見せてきたの。
「挨拶もろくにしないで来たのでしょうね。 この度はおめでとうございます、ヴォーグ王、ベネトナシュ王妃、そしてプリンセス ララノア、私はセーラム女帝国を取り仕切っているヴェジタリアンです」
「よく来てくれたな、オル、それとヴェジタリアン」
挨拶を済ませるとセーラム女帝国のエルフたちも王宮に入って行って、そんな来る人現れる人全員がとんでもない人ばかりで、なんだかお父様が遠い存在に思えてくる。
「ララ、どうした?」
「なんだか想像を絶する人たちばかりで驚き疲れちゃう」
お父様もお母様も笑って私の事を見てくるけど、これでやっと同盟国の人たちが揃ったところで、まだこの後もたくさん来るって思うとこの先不安しかなくなりそう。
この日はこの後ソトシェア=ペアハっていうところからボルゾイって言うドワーフが率いるドワーフたちと、同じくロメオ・イ・フリエタっていう北方の山脈に住むコイーバ王が率いるドワーフ王国のドワーフたちも到着して挨拶を済ませてやっと終わりになったみたい。
夕食は大ホールを生まれて初めて使うことになって、無駄に広いと思っていたホールもそこそこ埋まるほどに。 それでもって今日は同盟国の集まりだからということで立食式で行うようになったの。
どこにこれだけいたのって思うほどの侍女がメイドたちを指揮取って、慌ただしく粗相の無いように動き回ってる。
「ララノア様、何か気になるものでもありましたか?」
「あ、うううん、ルロスなんでもないの。 王宮にこんなに侍女やメイドがいた事に今更驚いていただけ」
こういう場には合わないローブ姿のルロスが、私の護衛として付いていてくれていて、私がキョロキョロしていたから気にかけてくれたみたい。
「そうでしたか、それはサーラ様が居たのでララノア様の負担にならないようにしていたのでしょう」
そうだったんだ。 私ってば本当にサーラに色々気を使ってもらっていたんだ。
「ララノアたん、みーつけたぁ」
「うひゃあ!」
グフグフいいながらキュモヲタが近寄ってきて、
「プリンセス、私も混ぜてもらっても構いませんでしょうか?」
見計らったようにジークフリートも来てくれる。 って、あれ? アルバロはどこ? って見回したら、いた。 いたのだけど……女の人に囲まれて身動きが取れなくなっているみたい。 次期宮廷司祭に決まっているからアルバロも言い寄ってくる人が多いみたい。
なんて事を思っていたら、いつの間にか私の周りに人だかりが出来ていて、色々話しかけられてた。
「ご、ごめんなさい。 いっぺんに話しかけられても私、聞き取れないよ」
昨晩と違って今晩は同盟国の、特にウィンストン公国の貴族の子息たちも加わってきていて、話を聞くのでもう大変。 中にはルロスにも声をかける人もいるけど、ルロスが完全無視して私の護衛に専念してくれてる。 けど、今はちょっぴり助けて欲しいところなんだけどなぁ?
「プリンセスは皆さんのお迎えで疲れている様子、今日は皆さんこの辺でやめておきませんか?」
私のそんな気持ちを感じ取ってくれたのか、ジークフリートが止めに入ってくれたおかげで、様々な思いは見られるけど私から離れていってくれる。
「今日はご苦労様でした、プリンセス」
「うううん、ジークフリートもありがとう。 本当言うとね、少し疲れてた」
「明日はいよいよメビウス連邦共和国の方々が見られるようですから、お早めにお休みください、では……」
ジークフリートの気遣いに感謝して、お父様とお母様に挨拶を済ませて部屋に戻った私は、ドレスを脱ぐのも忘れてベッドに倒れるように横になると、気がついたらそのまま深い眠りについていた……
今日は朝に更新出来そうにないので、この時間になりました。




