戴冠式までの日々
【魔法の神エラウェラリエル】やアリエル、ブリーズお姉様、ジークフリート、フィン、クローロテース達と別れて1年以上が経って、私も14歳になって15歳を控える頃になった。
この頃になるとお父様とお母様は戴冠式の日取りなんかをログェヘプレーベとしょっちゅう相談していることが増えてきてる。
ジークフリートはお父様宛に報告のたびに、私宛にも手紙が送られてきて、これがちょっと素敵な文章で書かれた恋文なものだから照れちゃう。 でもちょっと楽しみになっている私がいるのも確かだったり。
ブリーズお姉様とフィンからは音沙汰がなくなったままだけれど、まだブリーズお姉様の方は噂が流れてきてるからいいけど、フィンの方は行方すらわからない状態のままで心配。
そして私の護衛は、今はフィンに変わってルロスが引き受けてくれていて、アルバロとは転生者同士っていうのもあって仲も良さそうに話をしているのをよく見かける事もしばしば。 だいぶ今の暮らしにも慣れてきたみたいだけど、1年経った今もご飯のたびに涙ぐみながら食べるのは変わらないみたい。
サーラはこの頃から王宮を離れることが多くなって、赤帝竜といなくなることが増えて少し寂しさを感じるんだけど、いる時は赤帝竜がやきもちを焼くぐらい私についていてくれているから我慢しないとね。
それでもって今、私はというと……
「アルバロ様、準備はいいですか」
「いつでも!」
青白く彫りが深い顔立ちで、露出しまくる色っぽい黒い下着姿のようなルロスが、両手に木剣を構えて特有の凄い低姿勢で身構えて戦いの訓練の相手をしてくれてる。
訓練場は私が人払いをして誰も入れさせないようにしているから、ルロスも動き難いローブを脱ぎ捨てて、本来のドラウの姿で相手をしているんだけど見慣れるまでは私もアルバロも目のやり場に困っちゃった。 アルバロの言うことはよくわかんないけど、凄いボンキュボンって呟いてた。
当の本人はずっとその姿が普通に育ってしまったから気にならないんだって。
そのアルバロは槍による戦いをやめて、短槍と盾を持つスタイルの防御力重視のスタイルに変えて、戦い方も前に立って自分が囮になってみんなを守るんだって。 それを見たサーラがタンク役だなって言っていたかな?
前衛に立っても倒すのが目的ではないから、訓練もルロスの攻撃をどれだけ防げるからしくて、最近じゃルロスも一撃を入れるのが困難になるほど盾をうまく扱うようになってる。
うん、私? 私はね……
「ララノア様、参ります!」
「いつでもいいわ」
最初の頃こそルロスに全く歯が立たなかったのだけど、私が生まれ持った天賦の才のおかげと、この1年で身体もだいぶ成長したおかげで、今ではルロスを相手に十分打ち合えるぐらいまでになれた。
「隙のない的確な良い動きだ」
「あ! サーラ!」
訓練場に入ってきたサーラが私の訓練を見て評価してくれる。
私専用に作ったシャムシールの木剣をポイッと放り投げて、サーラに向かって飛びつくとちゃんと受け止めてくれる。
「そうやって毎回毎回飛びついてくるのはどうかと思うぞ?」
「まぁ、いいじゃない」
とまぁすっかり懐いていたり。 えへへ。
それでもってサーラが私の訓練相手をしてくれる事もあるけど、サーラ強すぎてぜーんぜん相手にならなかったり。
そんなある日の夜、みんなで夕食を食べている時に戴冠式の日取りが決まったって報告してきたの。
「少し15歳には早いが、3ヶ月後に戴冠式を行うつもりだ。 明日には各国の王侯貴族に封書を送らせるからララはこれから忙しくなるぞ!」
ついにこの日が来ちゃった。
戴冠式の日取りを決めた翌日から、私はサーラの指導の元、レディとしてのたしなみというか? 歩き方の指導なんかが始まるんだけど……
「ねぇ、なんでサーラったらそんなに女の人より女らしいの?」
聞いたらダメだったのかな? サーラが思い出したようにがっくりするんだけど、がっくりしたいのはむしろ女の私の方なのよ?
サーラも普段の侍女服からドレスに着替えて、たしなみというのを教えてくれる。 作法的なものは子供の頃に教わっていたけど、よりもっと細やかな部分を教えてくれて、特に気品のある歩き方だとかいって腰を妙に振る様な歩き方を教えてくれた。
「上出来だ。 すっかり見違えたようだよ」
「本当? きっとサーラの教え方が上手だから。 でも随分無駄に腰を振ってる気がするのだけど私の気のせい?」
「いや、済まん。 俺の趣味が少し入っている」
「よくわかんないけど、それってサーラ好みに私されちゃってる?」
そう言ってその場でくるっと回って微笑んでみせると、サーラが苦笑いを浮かべてくる。
「戴冠式が行われるとまず間違いなく結婚の申し出が増えてくる。 中にはこの国欲しさでってやつもいるかもしれないからな」
「うん」
と言いつつジーっとサーラを見つめてみたり。
でもさっくりと躱されてちょっぴり残念。
「そういえばあれから全くドラウの動きが見られないようだけど、まさか戴冠式を狙って、なんてことは無いよね?」
私が戴冠式の事でいっぱいいっぱいで大事なことを忘れているとでも思ってたのか、驚いた顔をサーラが見せたあと頭を撫でてくる。
「ララは本当にしっかりしてきたな」
「これもサーラのおかげね?」
すっかり懐いた私にサーラが苦笑いを浮かべてくる。
「そういえば戴冠式にはどれだけの人が来るの?」
「そうだな、まず同盟国のセーラム女帝国とウィンストン公国、キャビン魔導王国は間違いないし、7つ星の騎士団も来るだろうな。
あとは鍛冶ドワーフ集団が住む、ソトシェア=ペアハに、同じくドワーフ王国のロメオ・イ・フリエタからも来ると思う。 問題は……」
「メビウス連邦共和国ね?」
サーラがニッコリ微笑んだけれど、そのメビウス連邦共和国は先の大戦で国は一時バラバラになって、各領主たちによる小国の集まりのようになってしまって、小競り合いが絶えなくなってしまった。 これは私が幼少の頃に見兼ねたお父様たちが間に入ったことで、今は落ち着きを取り戻しつつあるようなのだけれど……
「あそこは大国だけに、まだ完全に治りきっているわけではなく、今も7つ星の騎士団が目を見張っていないといけないほどだから、何か仕掛けてこないとも限らないな」
「サーラが後ろ盾になってくれればいいのだけどね」
「そうしてやりたいが、さすがに加担し過ぎになるからな。 ララにはルロスにアルバロもいるし、ジークフリートたちもいる、俺たちのような人外があまり加担するのはよくない」
私としてはサーラにずっといて欲しいのに。 あれ、そういえばフィンの名前出さなかった。 あれ以来音沙汰なくなったけど無事だよね?
そんな心配をしながら戴冠式の日はどんどん近づいていった。
15歳で成人を迎えるこの世界。 ララノアも15歳を間近に控えて十分に精神的にも肉体的にも大人になってきています。
マクシミリアン=ミュラーとその部下の猫の女獣人の話が出てこなくなったと思いますが、ここからはほぼ完全なララノア主観に変わっていきます。
ちなみにルロスの格好はリネージュ2のダークエルフの格好を想像してもらえるといいかと思います。




