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アリエルの始原の魔術

ブックマークありがとうございます。

 その頃サーラたちはヴェイルジャグの身体から湧き出てきた蜘蛛と戦いになっていたわ。

 と言っても現状戦っているのは赤帝竜(ルースミア)だけで、両腕に装備しているリストブレードを使って切り刻んでいっているだけなのだけど、数が多く、私たちがいたせいで魔法も使えずにいたみたい。 もっとも苦戦はしていないようだけど……



「ルースミア大丈夫か?」


「ふぁいひょーふといふのはふえるかどうふぁということか? (大丈夫というのは喰えるかどうかということか?)」


 それは絶対に違うと思う……サーラは無事かを聞いたんだと思うよ。


 既に数匹を切り刻んでいて、ピクピク動く蜘蛛の脚を口にしながら赤帝竜(ルースミア)が答えてくるわ。


 赤帝竜(ルースミア)の元気な返事にサーラは苦笑いを浮かべているけど、それ以前に私の身体ほどもある大量の蜘蛛に囲まれている状態であっても、平然と会話をする余裕があるこの4人はやっぱりすごいのだと思うわ。



「しっかしさすがに蜘蛛だよな。 20や30どころじゃない、街道だから早くしないと利用者が来て二次被害も出かねないぞ」


「それじゃあ一気に肩をつけちゃいましょ」


 アリエルがそう言うとサーラと【魔法の神エラウェラリエル】にそばに寄るように言うわ。



「おい! ルースミアはどうすんだ」


「想像する属性は炎だから平気でしょ」


「平気って……」


 サーラが止める間もなく、アリエルは想像を開始しはじめるの。 以前はサーラが使っていたものらしいわ。



“あたしは自然均衡の代行者”


“あるゆる自然現象を想像し”


“具現化する”


“想像するは渦巻く炎の柱”


“旋風を巻き起こし”


“輻射熱を放って、荒れ狂う炎の柱となれ!”



「アリエル! これは!」


 炎が渦を作り出して次第に大きくなっていく姿を見てサーラに思い当たるところがあったみたい。



「懐かしいでしょ? それともサハラさん嫌な思い出を思い出しちゃうかな?

全てを燃やし尽くしなさい! 火災旋風(ファイヤーストーム)!」



 ウインクをサーラにしてから最後に想像したものの名前を叫ぶと、巨大化した炎の柱が遠赤外線の熱線を放ちながら蜘蛛たちを次々と包み込み出したわ。


 これが【自然均衡の神】の代行者が扱う事を許された“始原の魔術”というもので、想像する自然現象を呼び起こしてしまうというものらしいわ。



 ギィィィィィィ!


 気味の悪いそんな悲鳴じみた声と焦げて炭化していく音が聞こえて、蜘蛛たちが次々と焼き尽くされてあっという間にあれだけ大量にいた巨大な蜘蛛たちは全部炭化を通り越して灰となっていたわ。



「ルースミアは無事なのか!?」


 サーラがそんな事を口走ると1人の人影が近寄ってくるわ。 もちろんそれは赤帝竜(ルースミア)で恨めしそうな目をアリエルに向けてくるわ。



「なかなか美味だったというのに、全部灰になってしまったではないか!」


 身につけていた白いローブはあれだけの炎を浴び続けても焼けることはなくて、赤帝竜(ルースミア)本人も全く炎による影響は受けていないみたいで、むしろ蜘蛛(食べ物)が無くなってしまって怒っているようだったわ。



「やっぱりルースミアは規格外過ぎですね」


 あれだけの炎を浴びたにもかかわらず、第一声がこれだったため、【魔法の神エラウェラリエル】が呆れた顔を見せているわ。



「まぁ蜘蛛の方はなんとかなったんだし、ルースミアも無事で良かったよ」


「当然だ! あの程度の炎であれば我にはシャワーを浴びているのと変わらんぞ」


 私たちであれば軍を率いて討伐しなければ到底かなわない数を相手したというのに、サーラたちは何事もなかったかのように声を上げて笑って楽しそうにしているわ。


 ひとしきり笑いながら辺りを見回した後、顔色を変えたアリエルが先に追い出すように逃がした私たちの心配を口にするわ。



「とりあえずは王女、特に男2人は自信喪失しているかもね? あとあのドラウの転生者の子の情報の次第によってはあたしも本格的に代行者として動かなきゃならなくなりそうだわ」


「かなり悔しそうでしたからね。 でもこの数もそうだけれど、正体不明の相手となれば間違った判断ではないと思いますよ。 私もそのドラウの転生者の話次第では神界で話し合う必要がありそうですね」


 的確な判断だったって【魔法の神エラウェラリエル】がサーラを評価しつつ、アリエル同様ドラウを危惧しているようだわ。



「ふむ? おかしくはないかエラウェラリエルよ?」


「何が、ですか?」


「以前の時は人種の神はドラウには関与しなかったであろう?」


 以前っていうのはもちろん100年以上前の話のことで、サーラが転移した頃に起こったことよ?


 サーラも赤帝竜(ルースミア)の意見に頷いてみせるけど、【魔法の神エラウェラリエル】も当時は神ではなかったから理由は詳しく知らないみたい。



「そうなると今回も神の参入は止められてしまうかもしれませんね……」


「え! じゃああたしも手出し禁止だったりするのかな?」


「その時点で俺は代行者になっていたから大丈夫なはずだ」


 ふーっと安堵のため息をアリエルがついているのを見て【魔法の神エラウェラリエル】が不思議に思って理由を聞くと、



「だってもし手出し禁止って言われたら、サハラさんの側にはいられないのよ?」


 ピクッと反応を示して髪の毛を弄り始めだしながら、事後報告でいいですよね〜、うん、うん、それなら問題なしです。 って……神様がそんなでいいのかしら?


 苦笑いを浮かべながら【魔法の神エラウェラリエル】にもう遅いと思うよってサーラが言う先には、村娘のような格好をした女の子もとい、ひいお祖母様が立っていたわ。



「そういうズルは許さないわよ【魔法の神エラウェラリエル】、ん?」


 神らしからぬガビーん! とでもいう表情を浮かべて、ショックを隠せない様子を堪能したひいお祖母様が笑いながらもしっかりとした理由を告げてくるの。



「実はね本当は既にアリエルの目を通して【自然均衡の神スネイヴィルス】が現状を把握していてね……」


 ひいお祖母様の説明によると、先ほどのアラクネーの蜘蛛たちは人種の神がいたことによる警告なのだそう。

 これを無視すれば人種だけならぬ神を巻き込む戦いにするぞという意味だったらしいわ。



「そうなると俺の立ち位置はどうなるんだ?」


「今回のドラウ絡みに関しては、サハラも創造神様から直接は手を出さないようにって言われたわ」


「間接的であればいいわけか……つまりサポートにまわれと……」


 今まで黙って聞いていた赤帝竜(ルースミア)がなるほどなと頷いて知っているそぶりを見せてきたわ。



「アンダーダーク(地下世界)に住まう者たちの神々を触発したくないのであろう。 地下世界(アンダーダーク)では終わりない戦いの世界であり、常に覇権を競い合っているのだ……」


 うーん、小難しくてよくわからないけれど、地下世界(アンダーダーク)では私たちの住む地上でいう、人種と魔物と一括りにしている人怪やアンデッドや動物、魔獣などといった生物が地下世界(アンダーダーク)を支配しようと争いが絶えていないみたい。

 それをもし神が絡んで戦いが起これば地下世界(アンダーダーク)に留まらずに地上も巻き込みかねないっていうことらしいわ。


 ドラウの神である【ドラウの神アラクネー】は比較的支配に容易いであろう地上にも目を向けている。 そんなところみたい。



「知識的には知っていたけど、そんなに地下世界(アンダーダーク)は酷い場所なのか。


「常に戦いが絶えないからな。 安全に戦力を拡大できる場所を確保できるに越したことはないのであろう」


 あれ? そうなると地下世界(アンダーダーク)に住む他の種族たちはなんで真似しないんだろう? という私の疑問もその場にいなくてもちゃんと赤帝竜(ルースミア)がしてくれて、地下世界(アンダーダーク)には上界、中界、下界と3層に分かれていて、比較的支配しやすい場所である上界はドラウで占めているんだって。



「となるとドラウは地下世界(アンダーダーク)と地上の2カ所に挟まれる形になっているわけか。 そりゃ必死になるわけだよな」


「それがそうでもないのよ? なにしろ子供の躾で悪い子は夜中にドラウが来て連れ去られちゃうぞ! って脅されて育つから、普通なら遭遇したら怖くて逃げ出すものよ、ん?」


「なるほど、レイチェルの実体験か」


 みるみるうちにひいお祖母様の顔が赤くなって、伝えることは伝えたんだからって逃げるように消えていったわ。



「なんにせよ、ひとまずララたちと合流しないといけないな」


 魔導門(ゲート)を出して、サーラ、アリエル、赤帝竜(ルースミア)、最後に【魔法の神エラウェラリエル】が潜り抜けてヴィロームの町へと移動したの。




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