妖竜宿(シェイディドラゴンイン)
そして城塞都市ヴァリュームの屋敷になんとかスーサイドに自害をさせずに辿り着けたわ……
領主を呼んでくるからってスーサイドは私たちを待たせて屋敷に入っていったわ。
しばらくするとズシンズシンと巨大な何かが迫ってくる音が聞こえてきて、その音の正体が姿を見せたわ。
身の丈2メートルはあるであろう身長に、たっぷりとした髭があってガタイの良い筋肉モリモリろいった出で立ちのドワーフだわ。
もちろんそれは規格外の背丈で、フィンもアルバロも驚いているわ。
「儂がノーマであるっ!!!!」
耳を押さえないと痛いぐらいの大きな声でヴァリュームの領主ノーマが叫んだわ。
「私がプリンセスのララノアです。 耳が痛いのでもう少し小さな声で話して!」
首が痛くなるぐらい上を向いて、名乗るついでに切実な願いも加えておいたわ。
「それでは話もあると思いますが、先に移動するのである!!!」
うん……! が1つ減ったね……
「移動? どこに行くの?」
「ここで食事も良いであるが、やはりヴァリュームに来たからには名物料理を是非にプリンセスに食していただきたいのである!!!」
というわけで用意された馬車に乗り込むのだけど……
「う、馬じゃなくて雄牛!?」
「馬では儂を乗せて引くには馬力が足らんのである!!!」
通常よりも大きな馬車に乗り込んで走り出すと、思っていた以上に快適な移動なのだけどブモーブモーと馬車を引く雄牛4頭の声がうるさかったかな?
「着いたのである!!!」
馬車を降りるとそこは先ほどスーサイドが教えてくれた妖竜宿だったわ。
「ララノア王女様、ノーマ領主様、護衛の王国軍将軍マクシミリアン=ミュラーが子息フィン=ミュラー様にアルバロ=ロドリゲス次期宮廷司祭様、それとクローロテース王女様、お待ちしていましたわぁ。
私、ここ妖竜宿の経営をしているシャリーと言いますわぁ」
宿屋の前で1人の女性が頭を下げて待っていたわ。
というか、私の事は何らかの情報で知っていたとしても、何でフィンやアルバロに加えてクローロテースの事まで詳細に知っていたんだろう。
「それは気になさらない方がよろしいですわぁ」
い? 私の思ったことが何でわかるの!?
「ですから気になさらない方がいいですわぁ」
よ、よくわからないけどこの事は考えるのはやめといた方がいいみたい。 それよりも顔を上げた女性はログェヘプレーベとはまた違った妖艶な美人で、ログェヘプレーベがちょっぴり怖い綺麗系だとしたら朗らか? ほのぼの? そんな見る者に安らぎを与えてくれる優しげな顔をしている女性だわ。
宿屋の中に入って1階の食堂に入ると、そこには大勢の冒険者たちやらでごった返していて、空いている席はなさそうに見えたのだけど、さらに奥へ向かうと個室が用意されているようでそこに通されたわ。
席に座ると失礼しますって声があって個室に入ってきた女性が、水を注いでくれたり準備を整えて行ってくれるのだけど……
「ア、アリエル様!?」
給仕してくれている女性はアリエルそっくりだったわ。 アリエルのそっくりさんは否定してシアと名乗るとまたお辞儀をして部屋を出て行ったの。
これには今まで黙っていたフィンも驚いた顔を見せていたわ。
「さて王女様、まずは名物料理のハンバングーとカレーライスを食していただき、その後デザートのクレープを食べながら話を聞かせて頂くのである!!!」
こんな場所で話をするの!? って思ったのだけど、気がつけばあれだけの冒険者たちが騒がしくしていたにも関わらず、個室の外の音は全く聞こえないことに気がついたわ。
それで早速料理が運ばれてくるのだけど、ハンバングーと言われたものもカレーライスと言われたものもとっても美味しくて、フィンもアルバロも無言で書き込むように食べていたわ。
クローロテースは一口口に入れるたびにぱぁぁぁっと花でも咲きそうな笑顔をしながら食べていたわ。
そしてデザート、ついにクレープというものが運ばれてくると、甘くいい匂いが漂って既にお腹は満たされたはずだというにもかかわらず思わず口に入れたくなる。 そんな食べ物が目の前に置かれたわ。
一口口に運ぶと全身が幸せで包まれたわ。
みんな止まることのない勢いで無言で食べ尽くしてお茶だけになったところで、ノーマが私に視察の理由などを訪ねてきたわ。
「儂が思うに視察は名目、ドラウの件であると踏んでいるのでありますが、違うであるか?」
「察しがいいわね、その通りよ。そしてお父様より今回の件に関して私に任されたの」
「つまりそれはドラウに関しての総司令官というわけですな」
頷いて答えると、ノーマはヴァリュームはどう動くのかを尋ねてくるわ。 だから私はヴァリュームは籠城戦に備えて、避難してきた人がいれば保護するようにノーマに言うんだけど、ノーマは防戦のみかどうかを確認してきたわ。
「もし本当にドラウが現れたのなら、昔と同じようにこの町は死守してほしいわ」
ハッキリと言い切るとノーマは大人しく頷いてくれたのだけど、孤立無援が1ヶ月続くようならヴァリュームは独立して動く許可を求めてきて、それは私も了承することで呆気なく終わってしまったの。
「時に王女様にお渡ししたいものがあるのである」
そう言って袋から一振りの剣を取り出して、私に手渡してきたわ。 抜いてみると素人のような私でもわかるような見事な業物のシャムシールだったわ。
「これは?」
「名は明かすなと言われたので言えませぬが、王女様がシャムシールをいたく気に入っていると聞き、儂が真心込めて作ったものである」
「これを私に……ありがとうノーマ! 大切にするわ!」
「いやいや大切に使ってやってほしいのである。 もちろん必要な時であるが。
それと是非に頼みがあるのであるが、そいつに名前をつけてやってほしいのである。 あと……」
ごっつい顔に似合わない照れ顏を見せてくるノーマが頼んできたのは剣に名前をつけることと……
「儂のことを……お、お爺ちゃんと言ってみてほしいのである!!!」
ついに来てしまった妖竜宿。 そして未だ謎に包まれているシャリーさん。
シャリーさんを初めて知った人は、何者なのかと驚かれることと思います。
そして知っている人はついに現れました。
今更ですが、誤字脱字には気をつけているつもりですが、もし見つけましたらお知らせいただけると助かります。
また感想も頂けたら嬉しいです。
それでは後ほど、もう1話更新しますのでよろしくお願いします。




