駆け引き
敵味方関係なく呆気にとられて、馬鹿かコイツとでも言いたげな顔をみせてくる中、クローロテースだけはニコニコとしていたわ。
「もしも復讐が果たせた後、貴女たち全員はお尋ね者。 それも貴女たちにはちょうど運が悪いことに代行者アリエル様が立ち会っている状況よ。
だから、私の提案を受け入れるのであれば、貴女たち全員の身柄は私が保証してあげる」
これには兎の女獣人の仲間たちも動揺を見せて、お互い顔を見合わせ出しているわ。
ただ国を追われるだけであれば他国に逃げ込めば済むのだけれど、代行者に目をつけられたともなれば、もはや人の住む場所には住めなくなるわ。
「ふっざけんなっ! そんな事で仇を許せって言うつもりかい? いいさ、仇さえ取れればこの命どうなったって構いやしないよ!」
「そう……なら、どうぞ」
兎の女獣人の元に私がどんどん近づいていくとフィンとアルバロが慌てて止めに入ろうとして、ジークフリートは家宝の弓を構え出したわ。
「3人ともやめて! これは命令よ!」
私の制止で3人は動きを止めるわ。 そんな状態で私は既に兎の女獣人の手の届く距離まで来ていて、どちらにしたって間に合うはずもないわ。
兎の女獣人は私の喉元に変わった形状をしたナイフを突きつけてきたわ。
「殺す前に聞かせな。 まだ10やそこらの年月しか生きていないのに、なんでそこまでするのさ」
「そんなの決まっているわ。 私1人の命で貴女たちの気は晴れるんでしょ?」
本当は死にたくなんてない、けど、国の人たちが苦しむ姿は見たくないもの。
「それでもしあたいらが国王も殺しに向かったらどうするつもりさ?」
「代行者様を相手にそれができると思っているの? 貴女たちはここで私を殺した時点で全員死ぬんだもの」
もっともそんな保証なんてないんだけどね。 だってそこまで代行者様がしてくれる義理はないもんね。
「仮に聞こう。 お姫様の提案を呑んだらどうしてくれるのさ?」
「そうね……お姉さん強そうだし、私の護衛をしてもらうのはどうかしら?」
プッ……ククク……あーっははは!
そんなに笑われるようなことを言ったかしら?
「殺しに来た者を護衛につけるなんて、いつでも殺してくださいって言ってるようなものだよ!」
「貴女はそんな事は決してしないわ。 だってもし殺すつもりなら私の提案なんて最初から聞くはずないもの」
私の喉元に突きつけていたナイフが離されて、兎の女獣人がしゃがみこんで私の顔を覗き込んでくるわ。
「面白いねあんた。 あんたみたいなお姫様が作る国ってのを見てみたくなったよ」
「じゃあ!」
喜ぶ私に兎の女獣人は首を振ってきたわ。
「だけど今はやめとくよ。 確かにあたいらのやった事は大罪だ。 せめてケジメだけはつけさせてもらうさ」
「ケジメ?」
「そうさ、それが終わったらその時は堂々と胸を張ってあんたに会いに行かせてもらうよ」
そう言って立ち上がると兎の女獣人は引き上げだよって言って立ち去っていったわ。
「姫様あいつらを信用する気ですか?」
「もちろんよ。 私が言い出したのに信じないなんてダメでしょ?」
当然フィンは裏切られたらどうするつもりかを聞かれて、私はこう答えるの。
「その時はフィンが私の事を守ってくれるんでしょ?」
言葉を詰まらせるフィンにクローロテースがララノアの勝ちねって笑ったわ。
ふーんって感じで私を見ていたアリエルに危ないところを助けてくれたことを感謝するんだけど……
私に感謝するのなら早く一人前になって、サーラを必要としないようになりなさいって言われちゃった。
これでお別れなのかなって思ったら、アリエルもヴィロームに用事があるから一緒に行くことになったの。
そして私たちの元を去った兎の女獣人たちなんだけど、一度離れた場所に集まるとどういう事か話が始まろうとしていたわ。
「姉さんさっきの本気ですかい?」
「シッ! ちょっと黙ってな」
しきりに耳を動かして私たちのいる方向に向けて聞き耳を立てて、一通り話を盗み聞き終えた兎の女獣人は仲間たちの方に顔を向けたわ。
「あんたらはどうしたいのさ?」
「姉さんはあのお姫様の話を信じるんですかい?」
姉さんと言われる兎の女獣人は、バタフライナイフをいつものようにいじりだすわ。
何も答えないでバタフライナイフをいじり続ける兎の女獣人に、もう一度確認するように声をかけるわ。
「姉さん……頭領としてどうするつもりなんすか?」
「そうだねぇ……あたいはお前らの頭領だ。 だけど、あたいの判断にお前らは異論なく従うってのかい?」
「もちろんでさ! なぁ?」
誰1人として反対することなくオウって返事をしたわ。
「そうかい? なら……」
ニヤリと笑って兎の女獣人は行動を開始したわ。




