兎の女獣人の襲撃
2日目、あれからフィンは私に近すぎず遠すぎずの距離を取るようになっているように見えたわ。
「ねぇフィン、フィンってば!」
「うわっ! は、はい。 なんですかプリンセス」
何か考え事でもしていたのか、私が呼んだことで意識が戻ったみたい。
「最近なんだか私から距離を置いていない?」
「そんなことありません。 しっかり警護は怠っていません」
「そうじゃなくて、なんだか他人仰々しいよ?」
「それは当然です。 自分は姫様の護衛なんです。 馴れ合いなど失礼じゃないですか?」
うーん、ブリーズお姉様のコンサートに行ったりした頃はもっと親しげで気さくだったのにな。
なんだかどう話しかけたらいいのかわからなくてうやむやな感じで会話は途切れてしまったわ。
「敵です」
先頭を歩くサーラがそう言って足を止めたわ。
不思議なぐらい早い速度でサーラは敵を察知していて、未だに私たちの目にはサーラの言った敵の姿が見えない状況だわ。
「どこにいるの?」
その私の声が合図になったのか次々と姿を見せたわ。
「そこの女、何者だい? あたいより先に気がつくなんて普通じゃないね?」
そこに現れたのは私を誘拐した兎の女獣人だったわ。
「あなたたちあの時の!」
「あたいらが用があるのはそこのお姫様だけだ。 大人しく渡してくれれば見逃してやるよ?」
わらわら出てきた数は総勢30人といったところだわ。 対するこっちは7人で当然圧倒的に不利だわ。
「姫様は下がってください」
「ダメよ、私だって戦えるわ」
「自分は姫様を守るのが勤めなんです!」
手を掴んで後ろに下げさせようとするフィンにそれに贖おうとする私で揉めていると、無視されたからか兎の女獣人が怒り出したわ。
「今置かれている立場もわからないで何乳繰り合ってんだい!」
ハッと我に帰ったフィンが慌てて手を離して、荒々しく強引に私を後ろに下げさせられたわ。
「この人数を相手にどうにかできると思っているの……お前ら散りな!」
何が起こったのか突然兎の女獣人が叫ぶと誰1人として疑うことなくその場から離れて、その直後、晴天だというのにも関わらず雷が落ちたわ。
「な、何!? 何が起こったの!」
「ついてきておいて正解だったわね」
サーラがニッコリ笑顔を見せて後から現れた人物を見つめるわ。
「あ……貴女はサーラの部屋で見た絵にいた人……」
「挨拶は後でいいかしら、マルボロ王国王女ララノア?」
え、私の事を知っているの? そっか、きっとサーラが話していたのね。
周りを見渡すと距離こそ取りながら兎の女獣人たちが、また凝りもしないで包囲してくるわ。
「詠唱無しって事はあんたソーサラーかい? こんな隠し玉持ってるなんてやるじゃないか。 だけどね……」
「悪いんだけど、ぐちぐちぐちぐちうるさいのよ。 貴女たちみたいなのが王女を付け狙うから……サーラが私のところになかなか戻ってこないじゃないのよ!!」
……い?
慌ててサーラを見るとあのサーラが顔を赤くさせて慌てているし!
そして兎の女獣人も呆気にとられているようだわ。
「いいかしら? もしもこれ以上王女を付け狙うというのなら……」
「ど、どうするっていうんだい?」
「【自然均衡の神スネイヴィルス】の代行者アリエルが貴女たちの相手をするわよ!」
はいいぃぃぃぃぃぃぃ!?
代行者って言ったらアルナイル先生に教わったけど、神の代行人で、しかも【自然均衡の神スネイヴィルス】様って言ったら、人種神の序列1位の神様じゃない!
このアリエルの発言にさすがの兎の女獣人も強くは出れなくなったようだわ。 なのに、それでも引く気は見せないで戦うつもりでいるみたいに見えたわ。
「ま、待って! 待ってください代行者アリエル様。 それと……貴女も!」
気がつけば勝手に飛び出してアリエルと兎の女獣人の間に入る形になっていたわ。
戸惑うアリエルを見た後、決心した私は兎の女獣人に向き直って何故そうまでして私を狙うのか聞いて見ることにしてみたの。
「前にも言っただろう? 仲間の仇だってね」
「それで私かお父様を殺せば貴女たちの気は済むというの? そんな事をすればこの国は荒れるわ」
「そんな事までうちらが知ったことかね?」
「そうなればこの国に貴女たちのような者が増えて無関係な人たちが大勢傷つくことになるわよ?」
「ならお姫様はあたいらに我慢をしろというのかい?」
「そうよ!」
「「「はぁぁぁぁぁぁあ!?」」」
私のこの返答は、兎の女獣人とその仲間たちだけではなく、サーラたちからも声が上がったわ。




