アルバロとスリングショット
翌朝、早速エーリヒにジークフリートの同行を許可する事を話すけど、それはこの国のためであって私の私情は挟まない事を強く伝えて了解を得たわ。
そしてエーリヒに別れを告げてヴェニデの町を後にしたの。
「あれ? ジークフリートその弓って」
「ああ、はい。 これが家宝の弓です。 プリンセスの、将来の我が国の女王の護衛なのですから当然本当に必要な時です」
ふーん。
次に向かうヴィロームの町、そこへは3日ほどの道のりで……
「はい、危険です」
あっさりとジークフリートに言われたわ。 と言っても危険になるのは3日目辺りで、その辺りからヴィロームの町を有名にしている大湿原が街道に沿って広がり出すらしいわ。
「ヴィロームの町は冒険者が沢山いる大きな町ですよ」
アルバロが私の横に並んで説明してくるのだけど、昨晩告白してから妙に近づいてくるようになってきたわ。 いろいろと物知りだから話題に尽きなくて楽しめるからいいんだけどね。
そんなわけで初日の野営の時だわ。
「はい、ララ。 これを貴女にプレゼントしましょう」
そう言って手渡してきたのはスリングショットだったわ。
「サーラ、これは?」
「私からの誕生日プレゼントです」
あ、そっか。 今日で私13歳になるんだ。
ブリーズお姉様も私に綺麗な炎の揺らめきが見える不思議なイヤリングをくれて、クローロテースは指にはめていた指輪をくれたわ。
まずサーラのくれたスリングショットはスリングショットとしては非常に珍しい魔法のスリングショットらしいわ。
ブリーズお姉様がくれたイヤリングは、耳元でコッソリと火蜥蜴が入っているんだそう。 この旅の頃から見かけないって思っていたらこういう事だったのね。
指輪をくれたクローロテースは、クローロテースのお父様のトリートーンから貰ったものらしいわ。
「魔法効果とかわからないけど、コレより喜ぶかなぁって」
貝殻を2枚見せてくるの。
「なにそれ? 貝殻?」
「うん、おっぱい隠すためのものよ」
ブフォって声が聞こえて、私も手をわたわた振って遠慮したわ。
「うん、それにララノアじゃ大きす……」
慌てて口を塞いだのだけど、ここまで言われたらもうバレバレよね、バレバレだよね。 いいもの、そのうち身体は育つもの。
ヴェニデからヴィロームの行商人も数はグッと減るか冒険者が護衛についていて、それでも駆け抜けるように進んでいくわ。
「忙しないわね」
「そうですね、情けないながらこの辺りはいくら魔物を倒してもキリがないほど出現するので……」
私はただ往来が忙しないことを言ったつもりだったけど、ジークフリートは力不足を言われたと思ったみたいだわ。 もちろん否定はしておいたわよ?
その日の夕方、野営する場所まで早めに到着するとアルバロがスリングショットの使い方を教わりに来たの。
「じゃあ私の使っていたやつを渡すわね」
手渡すとアルバロが首を傾げてあちこちを見ているわ。
「どうしたの?」
「ええ、今まではちらっとしか見ていなかったので、ちゃんと見るのは初めてだったので……」
パチンコとは違うんだとかわからないことをつぶやいていたわ。
「基本的にスリングショットは狩猟用で、魔物なんかを殺傷する力はないと思ってね」
「牽制用ですか?」
「普通ならね。 でもスリングショットに使うスリングストーンによっては武器にもなり得るわ」
そう言って鞄から手袋を取り出して嵌めた後、スリングストーンを取り出してみせると、アルバロが1つ手に取り出そうとするから慌てて手袋をしていない方の手でアルバロの手を掴んで止めたわ。
「素手で触ったらダメよ、毒性があるらしいわ」
「……鉛ですか。 大丈夫ですよ、体内に入ったりしなければ問題なかったはずです」
「鉛っていうんだ」
教えるつもりが逆に教わっちゃった。
スリングショットの構え方なんかを教えてあげていると、アルバロがなんだか赤い顔をさせてまったく集中してくれないの。
「ちょっとアルバロ! 人が教えてあげているのに集中しないってどういう事よ!」
「い、いやぁ、女の子それも好きなプリンセスに密着されて教えられていたら集中できなくなりますよ」
言われてみると、アルバロに身体を密着させて教えていた自分に気がついて私まで赤くなるのがわかるの。
「ねぇ」
「はい!?」
「本気なの?」
「あ、すいません! 本気で習いたいと思ってます」
「そうじゃなくて……私の事、す、好きって……」
お互い身体を密着させたまま私が聞いてみたわ。
「本気で大好きですよ。 プリンセスは可愛いと思います」
「……う、でもそれって私がプリンセスだからなんでしょ?」
「いえ、むしろプリンセスでなかったら良かったのにって思ってます。 一介の冒険者がプリンセスと結ばれる、なんていうのは物語の中の話ですからね。 だから一緒にこうしていられるだけで満足してます」
「じゃあ私と、その……結ばれたいとかは……思ってないんだ?」
「それは正直に言うと一緒についてくるオマケがキツイですね」
「オマケ?」
「僕に国王なんか無理ですよ」
アルバロがにこやかに答えてくるわ。
私はアルバロの答えに彼が本気で私という一個人を好きなんだって事がわかると嬉しかったのかもしれない。
「アルバロ……」
「はい?」
「こ、これからは私の事はララノアって呼んでいいから」
「え?」
「いいから! これは命令よ! 命令なんだから!」
フンって顔をそっぽ向けると、アルバロが手を握ってきて顔を戻すとアルバロが真っ直ぐ私を見つめていて、はいって嬉しそうに返事をしてきたわ。
生まれてこのかたプリンセスとしてしか見てもらえなかった私を、1人の人間として見てもらえた事が嬉しかった……
アルバロにその後スリングショットの使い方を教えている間に夕飯が出来上がって、そこで終了にしたわ。




