色恋沙汰と為すべき事
その日の夕食の時にドラウの件は私がお父様に任された事を話して、ここヴェニデの町はヴィロームの町に隣接するため、もしオークやドラウが本当に現れたなら直ちに全軍を持って救援に向かうように指示をするのだけど、そこでジークフリートが思った事を私に言ってきたわ。
「次期女王様になられるプリンセスの命令であれば従いますが、いくつかお聞かせください」
ジークフリートの問答に一つ一つ私の考えを伝えていくと、最後に頷くと素敵な笑顔で納得してくれたみたい。
「うーん……」
そんな声が上がったわ。 声の主はアルバロで、何かを考えながら今の話に不満があるように見えたわ。
どうしたのか聞いてみると、私の顔を見て慌ててなんでもないですって。 なんだろう?
そして話がひと段落したところで今まで口を開く事なく黙っていたヴェニデ領主のエーリヒが私に聞いてきたわ。
「時にプリンセスはご婚約者はおられましたかな?」
ここでも来たーー!!
「い、いえ……」
私の反応にエーリヒが笑い出したわ。
「なるほど、どうやらヴォルフの領主にも同じことを聞かれましたか。
しかし話を最後まで聞いてもらえないでしょうか?」
「う……は、はいぃ……」
当初はこのような事はまったく考えていなかったそうで、ジークフリートには好きな相手を選んで恋愛を成就して貰いたいと思っていたそうだわ。 だけど訓練場での話と今の会話のやり取りで考えが変わったらしいわ。
「というわけで……ジークフリートはどうなんだ?」
エーリヒがジークフリートに話題を振ると私を見つめてきて迷う事なくこう答えてきたの。
「喜んで、と言いたいところですが立場が違いますし、こういう事はプリンセスの気持ちの方が大切なのではないですか、父上」
ん?
ツンツンとクローロテースが肘をついてきて、耳元に口を寄せてくるわ。
「羨ましいぐらいに素敵な人だと思うよぉ〜?」
ボッと音が出そうなぐらい顔が真っ赤になるのが自分でもわかるわ。
ブリーズお姉様を見るとにっこり微笑むだけで、サーラを見ると……無視かい! うううん、何かを考えているみたい。
フィンとアルバロはなんだか落ち込んでいるように見えるわ。
「いかがでしょうプリンセス、息子はそう言っておりますがここはひとつ領地視察に同行させてみて、息子を見てやっては貰えませんか?」
「父上! 領地はどうするおつもりですか!」
「なに、身体が不自由だが頭は動く。 それに子の幸せを願わぬ親がいないはずもなかろう」
なんか勝手に話が進んでいるんですが……
「そういうわけでよろしくお願い致します」
いえいえいえ! 私まだいいって言ってないから!
ブリーズお姉様を見るとにっこり微笑むだけで、クローロテースは含み笑いをしていて、サーラはお好きにどうぞだし……
フィンとアルバロはと思って顔を向けると、フィンは私を守るのが役割ですって言うし、アルバロも……あれ?
「話を勝手に進めるのは構いませんが、プリンセスはまだ許可は出していません。 それに考える時間は必要だと思いますが」
エーリヒがフィンとアルバロを見つめてフムと頷いたわ。
「アルバロと言ったかな? 【愛と美の神レイチェル】の神官戦士で後の宮廷司祭、そしてマクシミリアンの息子のフィンか。
ジークフリート、これは強敵ぞろいだな」
ん? 強敵って……
「では返答は明日の出立前にお願いします。 どちらにしても息子には準備はさせておきますので」
それで話は終わって私たちは寝室に戻ったわ。
私の寝室に集まって話し合いを始めようと思うのだけど、私も確かめたい事があってフィンとアルバロに最初に尋ねたわ。
「ねぇ……私の思い違いかもしれないけど、フィンとアルバロってもしかして……」
「はい、僕はプリンセスの事好きです」
迷う事なくアルバロは答えてきて、フィンの方は無言のままだわ。
「アルバロの好きは好意、ラブの好きだよぉ、ララノア」
「う……そ、そうなの?」
「はい、僕はプリンセスの事が好きですよ」
まっすぐ私を見つめながら言われて、私もなんて答えればいいか困ってしまうわ。 フィン、フィンは!?
「お、俺は……っく……自分は、自分は……自分は、姫様の護衛するのが……役割です。 その姫様に恋愛感情を抱くなど……あってはならないに決まっているじゃないですか」
「フィン!」
「アルバロ、余計な事言ったら友達やめるぞ」
うわぁぁ……なんだかドロドロ。
こんなの私どうしたらいいかわからないよ。
「今回の貴女の目的はなんですか?」
「え?」
サーラがそんな突拍子もない事を事を言ってきたの。
「婚約者を探しに来たのであれば好きにしたらいいんじゃないですか?」
あ……これはサーラからの助け舟。 そうよ、私の今回の目的は視察という名目のドラウの調査。
「サーラはジークフリートが今回の視察に加わって得るものはあると思うかしら?」
私は本来なすべき事、この国を守る事を思い出してフィンやアルバロ、ジークフリートが私に向けてくれた好意をかなぐり捨てて優先すべき事を口にしたの。
「そうですね、もしも本当にドラウが現れたのだとしたら、ララの肉壁が増える事はよろしいのではないですか?」
これはサーラがわざと言ってくれた事なんだと思う。 だから私も……
「そうね。 私の手足が増える事はいい事だものね」
そうよ、私はこの国の女王になるんだもの。 今は一番大事な事だけを考えてやればいいのよ。
そう思いつつもフィンとアルバロに目をやると、フィンは何かと葛藤しているような表情で、アルバロは手足扱いしたにもかかわらず気にしていない感じだわ。
クローロテースは一時期ふさぎこんでいた頃に比べるとだいぶ明るくなっていて、今回のもう一つの目的は達成しているように思えるわ。
だんだんはっきりしてくる恋愛騒動。
現状フィンとアルバロ、ジークフリートと3人となりました。
プリンセスという立場から通常の恋愛では済まないこの状況の中、果たして誰がララノアの心を射止めるのか、またはこの3人以外なのか?




