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ヴォイド領主の息子

 姿を見せたヴォイド領主の息子さんは、どこからどう見ても年齢は私の倍以上あるわ。

 外見はあまり外出しないのか、肌は青白くて不健康そうで、髪も整えていなくてボサボサ、どこかオドオドと怯えた表情を浮かべていて、それでいて私のことをジロジロといやらしさを感じる目で見つめていて、だらしなく出たお腹をボリボリ掻いて……



「お、お、お初にお目にかかります。 プ、プ、プリンセス ラララノア……」


 そのあまりの姿に呆気にとられた私は何を言っているか耳にも入らないで、ただただ驚くしかできなかったわ。



「ヴォイドの領主殿、いささか姫様とは歳が離れすぎているように思われますが?」


 フィンが私の驚愕している顔を見て、すかさず口添えを入れてくれるのだけれど……



「ご安心くだされ騎士殿、うちの息子はむしろプリンセスほどの年齢が好みらしいのですよ」


 うひぃ〜!

 私をずっと見つめながら鼻息を荒くさせてヴォイドの領主の息子はフンフン頷くわ。



「姫様のご意思もあるでしょう」


「なるほど! それもそうですな! それでは今から息子と2人でお話など……」


 フィンがそう言う意味ではとか言っているみたいなんだけど、あまりの事に頭がパニックになってしまった私は思わず頷きそうになるのを今度はアルバロが助け舟を出してくれたわ。



「ヴォイドの領主様、申し訳ありませんがプリンセスは明日にはここを経って、ヴェニデの町、ヴィロームの町、ヴァリュームの町と向かわねばなりません。 加えてドラウの調査まであります。 今日のところは控えてはいただけませんか?」


 ヴォイドの領主は睨むようにアルバロの事を見るのだけど、身につけている【愛と美の神レイチェル】の認められた者だけが着用できる神官衣の姿を確認すると、残念そうな顔を浮かべてやっと諦めてくれたわ。


 ……今の私、絶対に涙目だわ。





 泊まる部屋に通されると、私は1人部屋で、サーラとブリーズお姉様とクローロテースが1つの部屋、なぜか遠く離れた場所にフィンとアルバロに割り当てられたわ。



「なんでフィンとアルバロの部屋はあんなに離れているの?」


「申し訳ありません、この屋敷の都合にございますゆえ……」


「なら、サーラと一緒にしてもらえるかしら? サーラは私の付き人なのだから」


「ですので、お隣の部屋にいたしました。 そして浴場もありますのでご利用くださいませ。 それでは我が家と思ってごゆるりとお過ごしくだされ」



 ヴォイドの領主はそう言うと立ち去っていったわ。

 とりあえず私に割り当てられた部屋に全員で入ると、フィンとアルバロは部屋のあちこちを調べはじめたわ。



「ララノアはここの領主の息子みたいな方が好みなの?」


 2人をボーッと見ていると不意にクローロテースがとんでもなく恐ろしいことを口にしてきて、私はそれに全力で首を横に振って答えたわ。



「ヴォイドの領主様もさすがにあの息子さんは行き過ぎだとわっちは思いんす」


「そうですね、だけどそれは今後もララが結婚相手を見つけるまで続くと思うので覚悟はしておくことです」


「私、結婚しないとダメなのかなぁ?」


「いずれ姫様が一緒にいたい、そう思える人と出会うかもしれませんよ」


「うん、プリンセスはまだ12歳なんだから焦らなくていいと思います」


 部屋の確認が終わったのか、フィンとアルバロも会話に参加してきたわ。 なぜか2人がやたらと鼻息が荒かったような気がしたけれど……


 話もひと段落して入浴に変わると、ここでもフィンとアルバロが先に入って調べておきますって言い出すわ。

 せっかくなのでお願いすると、2人は飛び出す勢いで部屋を出て行ったわ。



「あの2人どうしたんだろう?」


「ララちゃんのために一生懸命なんでありんす」


 入浴するだけなのにフィンとアルバロったら何をそんなに一生懸命なんだろう?





 その2人なんだけど、浴場に着くなり入浴はしないで壁なんかを調べ出したわ。



「アルバロ見つかったか?」


「見当たらないよ」


「俺の勘が正しければ、あの息子は……と言っても俺らより年上だけど、絶対に覗きなりなんらかの行動をするに決まってる!」


「でも部屋にも何も仕掛けはなかったから、考えすぎな気もしなくもないんだよね」


「アルバロは姫様に何かあってもいいのか?」


「というかさ、フィンって随分必死だけど……やっぱりプリンセスの事、好きなの?」


 このアルバロのどストレートな質問にフィンの動きが止まって、プルプルと小刻みに震えだすの。



「勘違いすんじゃねぇ! 俺はな、ただ姫様には幸せになってもらいたいだけだ! アルバロは違うってのか?」


「うん、僕はプリンセスが好きだよ」


 アルバロの隠さず答えた返事にフィンが何も言えなくなっているわ。



「別に好きでいるのは自由でしょ? まぁ僕もフィンと気持ちは同じだよ。 プリンセスと結婚できるなんて夢にも思っていないからさ」


「お、おお! そうか、そうだよな! 頑張って姫様を応援しようぜ!」


 2人ともありがとう。 もちろんこの事は私は知らないことだけどね。



 2人が戻って、私とブリーズお姉様とクローロテースの3人が入浴しに向かおうとするのだけど、サーラだけ後で1人で入りますってここでも徹するのよね。 まぁ初めて出会った頃からずっとそうだったから、気にはなるけど仕方がないのかな?



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