ララノア争奪戦
ヴォイドの町は壁に囲まれる様な作りにはなっていなくて、たくさんの果樹園や畑などがあって、無用心だなぁって思っていたら、あちこちでもう暗くなってきているというのに何かと戦っている音が聞こえてくるわ。
不思議に思って横を歩くフィンに聞いてみると、果樹園や畑を狙って近寄る害虫を追い払っているんですって。
追い払ってって言う前に一度クローロテースを見たから、たぶん追い払っているんじゃなくて退治しているのね。
「ヴォイドはこの果樹園や畑を生かして、新鮮で完熟したもので作られたスイーツがとても美味しいことで有名ですよ」
フィンとは反対に隣を歩くアルバロが私に教えてくれるわ。
「本当に? アルバロ詳しいのね」
「なんなら町中に到着してまだお店がやっていたら食べてみますか?」
「うんっ!」
ん? って何か感じてフィンに振り返ったらうぐぐって歯噛みしている様に一瞬だけ見えたわ。
「どうかしたのフィン?」
「い、いえ、なんでもないですよ」
そんな様子を後ろから付いて歩いてくる3人が、私たちには聞こえない様に何やらニヤつきながら話していたわ。
「ララノアって鈍いのね?」
「何がですか?」
「サーラさんもそっち方面はすご〜く鈍いから気づいてないみたいでありんす?」
「なんのことです?」
「わぁ本当だわ、あんなにわかりやすいアピールしているのに」
「あの2人はララちゃんの事が好きなんでありんす」
後ろからサーラの驚く声が私たちのところまで聞こえてきて、振り返ると3人共苦笑いを浮かべながらなんでもないって仕草とかポーズを見せてくるわ。
「い、一体いつから……」
「きっと2人がララちゃんを意識し始めたのに気がついてからじゃないでありんすか?」
「あとはいつララノアが気がついて、どちらを選ぶかね。 それとも2人以外かな?」
ブリーズお姉様とクローロテースが何やら含み笑いをしながら見てくるわ。
だんだん町並みに変わってくるとアルバロが張り切りだして、町の説明をしていってくれるんだけど、変わりにフィンの機嫌が悪くなってきている様だったわ。
「ねぇフィン、フィンってば!」
「あ、はい、なんですか?」
「なんだかさっきから怒ってない?」
慌てた顔をしてフィンが否定しているけど、チラチラとアルバロの事を見ているの。
「私のいない間にフィンと喧嘩でもしたの?」
突然振られたアルバロが今度は目を泳がせ出すわ。
「そういうんじゃないんですよ。 そのなんていうか……男の意地っていうか……なぁアルバロ?」
「う、うん、そうだねフィン」
うーん、きっと女の私にはわからない男同士の意地の戦いがあるのね。 でも何の意地なんだろ?
結局アルバロのいうスイーツのお店は軽食のお店だから既に閉店していて、明日も早いから宿屋を探しにって思ったんだけど、フィンが向かう先は一際大きな屋敷に向かっていったわ。
「あれ宿屋なの?」
「何言ってるんですか。 あれはヴォイドの領主の屋敷ですよ。 領地視察を忘れたんですか?」
あ、そうだったね。
ヴォイド領主の屋敷まで行くと門番に止められて、私を紹介されるとすぐに中に通されたわ。
「これはプリンセス、ヴォイドへようこそ。 私はこの町一体を任されている……」
おきまりの紹介をしあって、今晩はこの屋敷でお世話になることになるわ。
そして本来は視察というか顔見せに来ただけだったのだけど、ドラウの話を食事をしながらしておく事にしたわ。
伝達は既にヴォイド領主にも届いていたようで、お父様からの指示を待っていたようね。 なので私が今回の件をお父様に任せられたことを話すと驚く顔を見せるのだけど、それも仕方がないわね。
「プリンセスがですか? 失礼ながら確かプリンセスは今年で12歳でしたか?」
「今年で13歳よ」
そう言ったらなんだか感心した顔で頷いて見せてきて、さすがは次期女王様になられるお方ですですって。
「失礼ですがプリンセスにはご婚約者はおりましたかな?」
「いえ、今はまだ……」
「左様ですか! それでしたらうちの息子などいかがでしょうか?」
ちょーっと話は最後まで聞いてよね。
ヴォイドの領主は嬉しそうな顔で呼び出すのだけど……




