アルバロの機転
翌朝早朝からサーラに叩き起こされて準備をして宿の外に出ると、朝日がまだ登ろうとしているころだというのに宿場町はせっせと出発の準備やらで賑やかで驚いたわ。
「みんな早いのねぇ……」
「ララが寝坊助なだけです」
ピシャリとサーラに言われたから、とりあえずテヘペロして見回したらアルバロに視線を逸らされちゃったから、ちょっとふざけすぎちゃったかな……
少し気まずさを感じたところに準備やらを終えたフィンが戻ってきてくれて助かったけれど。
「それでは自分たちは出発します」
「うん、ちゃんとクローロテースとブリーズお姉様を守るんだよ」
フィンとアルバロが親指を立てて任せてくださいって揃って返してくるわ。
今更気がついたけど、フィンとアルバロがいつの間にか凄く仲良くなっていることに驚いたわ。
「それじゃあサーラ、私たちも行こう」
先行するフィンたちを見送ったあとサーラに声をかけると頷きこそしたけど、顔は微妙な顔をしていて小さく大丈夫、大丈夫って呟いているわ。
宿場町から少し離れたところまできてグリフィンを呼ぶと、すぐに私たちの元に来てくれて背中に乗り込むのだけど……
「サーラ、いい加減あきらめなよぉ〜」
「わ、わかっています! 今荷物などの確認をしていただけです!」
「荷物も何も私たちほとんど手ぶらなんですけどぉ」
うぐぐって顔を1度見せたあとにグリフィンに乗ってきたから、グリフィンにお願いして移動開始よ!
力強く大地を数歩走るとフワッて浮いた感覚を感じると、サーラの口から小さく悲鳴が上がったかと思った直後、一気に空へと舞い上がっていくわ。
「ララ! きゅ、急上昇させないで!」
「そんなの私に言ったって無理よ!」
あのサーラが今は私に必死にしがみついて叫んでいるわ。
「諦めてしっかりつかまっていてよ! グリフィン、王宮まで全速力で向かって!」
ピーーーーーーッ!
「うわぁぁぁぁぁ! やめてくれーーーっ! 揺らすなっ! 急降下しないでくれえぇぇぇぇ!!」
「サーラ言葉使い悪いわよ?」
目を瞑ってしがみついているサーラに私の言葉は耳に入ってないみたい。
そして先行するフィンたちなんだけど……
「しっかしアルバロは段取りいいなぁ。 まさかこんなこと考えていたなんて思わなかったぜ」
フィンとアルバロが歩きながら話していて、ブリーズお姉様とクローロテースは行商人の馬車に乗っかりながら移動していたわ。
「まぁ街道で魔物はもちろん、盗賊でも襲ってくるなんてことはまずないとは思うんだけど、保険は誰もが欲しがるものだからね。 でも、無駄な出費を抑えたがるのが普通で、行商人であれば尚更でしょ」
「そこで旅慣れしていない人魚姫様を、次の宿場町に夜まで間に合うように乗せてもらう代わりに護衛するなんて考えるとはな。
これも冒険者の知恵ってやつかい?」
フィンが感心してアルバロに言うと、アルバロは首を振って返してくるわ。
「これは特に冒険者の知恵じゃないよ。 損して得を取る、って思っただけだよ」
「なるほど……損して得を取る、か……良いこと教えてもらったよ」
どうやらうまいこと次の宿場町までたどり着く方法を考えたみたいね。
そんな2人を馬車に乗りながらクローロテースは景色を楽しみながら、ブリーズお姉様はアルバロを感心しながら見つめていたわ。
王都まで戻ってきた私とサーラは王宮の庭に降り立ってグリフィンから降りようとしたんだけど、サーラが未だに目を瞑ったまましがみついていて降りれなくて困っているところよ。
「サーラもう着いたから」
「う……あ……」
目を開けて地面が見えると慌てたようにさっさと1人で飛び降りたわ。
「普段からは想像できないほどよね」
「う……人間得手不得手ぐらいあってもいいでしょう!」
「だからってあんな男の人みたいな悲鳴を上げなくてもいいじゃない」
うぐって口を噤んで言い返せないサーラが見れて満足した私は、サーラの手をとってお父様の元に向かうわ。
お父様はもちろん報せを受けていたのだけど、そこまで慌てた様子は見せていなくて、むしろ私とサーラが戻ってきたことに驚いたみたいだったわ。
「たかだかドラウ1人を見たぐらいで何をそんなに慌てて戻ってまで来たんだ?」
お父様はマルボロの王だからマルボロ王国の歴史は当然ある程度知っていたけれど、それ以前のレドナクセラ帝国に関してはさほど知らなかったみたいで、滅びた理由もガウシアン王国に占領されたっていう程度しか知らなかったの。
それをサーラがどういう経緯でガウシアン王国が攻め込んだかの話をして驚きの声を上げて、ことの真偽を確かめるためにすぐにログェヘプレーベが呼び出されたわ。
ログェヘプレーベが来るとお父様がサーラが言ったことを確認する為に聞くと、腕組みをして胸を強調させながら話し出すわ。
「はい、確かにあの時は城塞都市ヴァリュームを抜かしやがってほぼ全ての町がオークたちに落とされやがっていやがりましたね。 レドナクセラの皇帝も迎撃に向かいやがった途中で殺されたらしいでやがりますしね」
思い出しながら話しているログェヘプレーベに驚いた顔をみせると、ログェヘプレーベはここ王都……当時は皇都になるのかしら? その隙をついてガウシアン王国国王と共に攻め込んだ張本人だったそうよ。
「ログェヘプレーベって昔は悪い人だったのね」
「うふふ……今も私の本質は変わってやがらないですよ……プリンセス」
うひーーーーー! 今背中にぞくっときたよっ!




