ララの提案
お父様に報せを伝えるために馬に乗って男が去ってしばらくして、サーラたちが宿場町に到着したわ。
フィンは男の報せを聞いてから1人で考え込んでいるみたいだったけど、サーラたちと合流すると思い出したように宿の手配をしに空いている宿を探しに向かったわ。
「何かあったんですかプリンセス?」
様子のおかしいフィンに気がついたアルバロが聞いてきたの。
「うん、お父様に報せを伝えるって馬に乗って急いで走ってきた人が、子供を危うく刎ね飛ばすところだったのよ」
危うく刎ね飛ばすところだったところを助けて、謝らせた話をアルバロたちに聞かせているとクローロテースが付け加えるように私の後に口を開くわ。
「あとドラウが現れたって言っていたわ」
それを聞いたサーラが何かを思い出したような表情を浮かべたあと、すぐに王宮に戻るように言い出したわ。
「ちょっと待ってサーラ、今回は私の各領地の訪問なのよ? サーラの勝手は許さないわ」
サーラが歯噛みしながら私を見つめて来るのだけど、今回は私だって引かないし引けない。 だってクローロテースにいい思い出を作ってあげたいんだもの!
「わかりました。 それでは私1人王宮に一度戻ります」
「ちょっと待ってください。 サーラさんも理由を教えてください。 理由を言えばプリンセスだって考えが変わるかもしれないじゃないですか? それと以前から思ったんですけど、サーラさんは隠し事多すぎませんか?」
余計なことをアルバロが言って、王宮に戻ろうとしたサーラの足を止めるわ。
でも確かにアルバロの言うようにサーラはいつも何も教えてくれないわよね。
「ドラウが現れた……それが何を意味するかわかりますか?」
顔を見合わせるけど誰1人、ブリーズお姉様もわからないようだったわ。
そこにフィンが戻ってきて宿が取れたことを報告しに来たんだけど、私たちの様子に首をかしげるの。
「宿の方へ行きましょう。 そこでお話しします」
なんとも言えない微妙な空気のままフィンが取った宿屋に入っていくの。
宿の主人はプリンセスである私が宿泊に来たことで大喜びで宿の説明をしながら部屋へ案内してくれるわ。
部屋はサーラが使っているぐらいの小さな狭い部屋で、ベッドとテーブルがある程度だわ。
「うわっ、すごく広い!」
う……これで広いのね。
微妙な顔をしている私に気がついたフィンが、姫様には狭く感じるだろうけど、これでも宿場町では1番大きいんですよって教えてくれるわ。
「急ぐのでいいですか!?」
宿場町の部屋の狭さに驚いている私に対して、業を煮やしたサーラが静まらせるように少し大きめの声で止めてくるわ。
そしてドラウの存在について話し始めるの。
それは遥か昔まだここがマルボロ王国ではなくてレドナクセラ帝国という国だった頃の話で、ドラウ率いるオークたちの出現によってその国はあっという間に壊滅させられたんだそうよ。 その時に出た死者は城塞都市ヴァリューム以外は大半らしいわ。
「その……よくわかんないんですが、なんで城塞都市ヴァリュームだけは生き延びたんですか?」
王都暮らしの王都育ちのフィンは城塞都市ヴァリュームを見たことがないみたいで、当たり前の質問をサーラにしたわ。
「城塞都市ヴァリュームは対赤帝竜用に築かれた町なので、今の王都以上の城壁に守られた要塞だからというのと、当時は今よりも高位魔法を扱える者が大勢いたためです」
サーラがまるでその時のことを見知っているように思い出しながら話しているように見えたわ。
「つまりドラウは斥候の可能性があるということですね? ついでに聞くとドラウと言うのはダークエルフの事ですよね? っあ!」
アルバロがしまったとでも言わんばかりの顔をしながら口を押さえるの。
「この場にエルフがいないのでどちらの呼び方でも構いませんが、エルフがいる時は気をつけてくださいね。 彼らは同じエルフと見られることを嫌ってドラウと呼ぶようにしたので」
へ〜そうなんだ……じゃなくて。
「確かにそれは急いでお父様に知らせるべきね。 だったら私提案があるの」
私の提案と言うのは、お父様にこの話を大至急伝える事と、ドラウの噂の真偽を確かめる事で、サーラと私はグリフィンで1度王宮に戻って報告をして、その間にフィンたちには先へ進んでもらうというものだわ。
「プリンセス、それはいい作戦です!」
「じゃあ自分らは明日朝から先行します」
「……却下です」
サーラの却下で、ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!! って全員から声が上がったわ。
「わっちはなんとなく却下の理由がわかりんしたが、ここはララちゃんの提案がいいと思いんすよ」
ブリーズお姉様もそう言ってくれるけど、サーラは徹底して却下してくるの。
「怖くしないから……ダメかな?」
って私が言うと、ものすごい勢いで恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせたサーラが私の方へ向いてきて、それは言ったらダメでしょう的な目で訴えてきたわ。
「もしかしてサーラさんって高所恐怖症ですか?」
ぷるぷると顔を振るサーラを見たアルバロが突然吹き出したわ。
「わかった! もしかしてサーラさんジェットコースター系苦手なんですね!」
「っな! そんな事はありません!」
「アルバロ、ジェットコースター系って何?」
アルバロがハッとなって、慌ててごまかして来るのだけどもしかして前世の話なのかな? あれ? でもサーラは知っているような素振り見せてたから私が知らないだけなのかな?
こんなアルバロと私のやり取りを見てサーラがまずいと思ったみたい。
「わかりました! ララの提案で行きましょう。 いけばいいんでしょう!」
それを誤魔化すようにサーラが私の提案を受け入れた事で、段取りの話に変わっていってうまくはぐらかされていたわ。
そんなサーラをアルバロも気づいたのかチラチラ見ていたように思えたわ。
その日の夜……
「えー! お風呂ないのっ? 汗かいているのに!? これがもしかしたら普通なの?」
「当たり前です! タオルを濡らして身体を拭いて済ませて我慢しなさい」
「はうぅ……」
付き人のはずのサーラは手伝ってくれる事はなくて、クローロテースと2人で届かないところは身体を吹きあってなんとか我慢したわ。
そして別の場所では……
「久しぶりにのんびり寝れるニャア」
マクシミリアンに急に呼び出される心配なく眠れる事に喜ぶ猫の女獣人が、ベッドの上で丸くなって眠りについていたわ。
急ですが章を加えました。
想定以上に少女期が長くなったので、少女期を分けた感じです。




