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宿場町の出来事

 一足先に宿場町が見えてきたところまで辿り着くと、グリフィンがピーピー鳴いてくるの。 それを私がうんうん頷いてからお願いすると、グリフィンは宿場町から少し離れた場所に着地して私たちが降りると急いで飛び去っていったわ。



「ララノアはグリフィンの言ってる言葉がわかるの?」


「うん、だって私グリフィンのお母さんだからね」


 ティアラを頭に乗せながら答えると、クローロテースが感動したように私の事を見つめてきて、今どんな会話をしたのか聞いてくるの。


「もうすぐ宿場町で(エサ)が怯えるから、手前で降りるねって、だからお願いしたのよ」


「ララノア凄〜い」


 何が凄いのかわからなかったけど、とりあえず今これからどうするかよね。



「さてと、どうしようかな? フィンたちが来るまでここで待ってるか、それとも先に宿場町に行って待ってようか?」


 ってクローロテースに話しかけたそばから、ウオオォーーーンって遠くから狼の遠吠えが聞こえてくるの。



「さ、先行ってようか?」


「そうだね」


 狼ぐらいって思ったのだけど、武器を持っていないクローロテースを守りながらは無理って判断して、一足先に宿場町に向かうことにしたわ。

 宿場町の入り口で待っていればフィンたちも私たちを探さないで済むしね。




 宿場町には城門のようなものは無くて、ほとんどの建物がたぶん宿屋だと思うわ。



「街道を挟むように宿屋が並んでいるだけで、警備とかはされてないのね。 さっきの狼の群れがもし来たらどうするのかしら?」


「そうね。 眠らないサメとか夜活動するタコなんかに襲われたらひとたまりもなさそう」


 ……ここ海じゃないから。 でも似通った魔物はいるかもしれないわよね。


 グリフィンで飛んできた私たちはまだ夕暮れにたどり着いたから、宿場町でも行商人たちが商魂たくましく露天商売なんかをしているわ。



「街道にいればフィンたちが見つけてくれるだろうから、露天販売でも見て待ってよう」


「うん、そうね」


 クローロテースも興味があったようで、仲良く手を繋いで見て回っていったわ。


 最初の一番手前の露天を覗いていると、最初こそ商人は興味なさそうに見向きもしなかったのに、急に対応が変わったわ。



「こ、ここ、これはプリンセス。 まさかこのようなところにいるとは思わず失礼をいたしました」


「うううん、人を待っている間見て回っているだけだから気にしなくていいわ」


 そうはいってもこの国の私はプリンセス。 素直にはいそうですかなんてならないで、ちょっと手に持ってみたかっただけなのに色々と説明をしてきてくれて、あまり見れなかったわ。

 そんな感じで露天を見回っていると、あちこちからプリンセスの声が上がって、宿場町が大騒ぎになってきちゃった。



「姫様、こちらの商品なんかいかがです? キャビン魔導王国の新作のドレスローブですよ! 防刃性能を向上させたものですよ」


「うーん、ごめんなさい。 今のドレスローブが気にいっているの」


「プリンセス! 是非この靴をご覧ください……」


 あっという間に露天を投げ捨てて、自慢の商品を売り込みに来られて困っていると、何か急ぎらしい早馬が街道を走って来たわ。 その街道の先には私より小さな子供がいて、ものすごい速さで迫る馬に恐怖で動けなくなっているみたいだわ。



「危ない!」


 叫びながら気がついたら取り囲んでいた商人たちを押しのけて、子供の元まで走ると手を広げて立ちふさがっていたわ。


 私の間近で馬は前足を高く上げてなんとかギリギリの所で止まってくれて無事に済んだのだけど……



「邪魔をするんじゃない、この馬鹿者が!」


 そう言いながら男は馬から降りると剣を抜いて私に向けてきたわ。



「子供が跳ねられそうになったから止めただけじゃない!」


「そんな事も理解できない子供か、放っといている親の躾が悪いだけだ!」


「だからって殺すつもり? だとしたら私が許さないわ!」


「はっ! 小娘が粋がっているんじゃないぞ!」


「はぁ〜ん、あなた大きな間違いをしているわ。 私はマルボロ王国のプリンセス ララノアよ!」


 ふふん、これで少しは……いいえ、おおいに後悔するといいわ!


 腰に手を当てて片眉を上げながら堂々という私を頭から足まで一度見た後、大笑いしだしたの。



「プリンセスごっこなら遊びでやるんだったなお嬢ちゃん。 とりあえずそこを退け!」


 剣を突き出して私をどかせようとしてくるわ。

 え? どうして……



「ララノア、ティアラ落としたよ」


 商人たちを押しのけて行った時に落としていたみたいで、クローロテースが拾って渡しにきてくれて受け取った私はティアラを頭に乗せて剣を突き出してきている男に振り返って見せた所に……



「や、やっと追いついたぜ……って、姫様そいつは……貴様、姫様に向けている剣を下ろして離れろ!」



 1人走って私を追いかけてきたフィンが、疲れきっているはずなのに剣を抜いて身構えて私を守るように押しのけて男の前に立ちふさがってくると、男は私が本当にプリンセスだった事と、後から現れたまだ若いが正規騎士の鎧を身につけたフィンを見た時点で完全に戦意を喪失していたみたいで、剣を放り投げてその場で片膝をついて頭を下げてきたわ。



「失礼をいたしました。 プリンセスとは知らず数々の無礼……打ち首も免れないと思いますが、それは国王陛下に火急の報せを届けてからでよろしいでしょうか」


「そんなことどうでもいいからその子に謝りなさいよ!」


「そ、そんなこと……」


 私何か間違ったこと言ったかしらっ!?


 フィンは姫様らしいぜってウインクしてきたわ。


 私に言われた通り子供には理解できないような謝辞を述べ出したから、「ゴメンなさいでいいのよ!」って言ったらやっと素直に謝ったわ。



「それでオッさん、陛下に火急の報せって言ってたが、それ聞かせてもらってもいいかい?」


 本来の目的を思い出して馬の手綱を手繰り寄せて馬に飛び乗ると、報せの内容を口にして王都に向けて馬を走らせたわ。



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