種の違い
いつも読んでくれてありがとうございます。
ワームホールと言われる歪みの中に入り込んだ私たちは、物珍しそうに歪みを眺めて立ち止まっているとサーラが移動しながらでも見れるって怒ってきたわ。
「こんな魔法、僕初めて見ました……といっても魔導門もちゃんと見たことはないですけどね」
アルバロがそう口にすると、サーラがこのワームホールについて話してくれるのだけど、私には何が何やらちんぷんかんぷんって思っていたら、ブリーズお姉様がリンゴを使って例えを教えてくれてようやく理解するの。
つまりリンゴの表面のある一点から裏側に行くには円周の半分を移動する必要があるけれど、虫が中を掘り進むと短い距離の移動で済む、というものね。
「ということは、今自分たちは城とか外壁なんかを無視して遺跡に向かってまっすぐに向かっているってことですか?」
フィンが納得しつつ驚きながら聞くと、サーラが頷くの。
「まるでパパが使うワープみたいね」
クローロテースが納得しつつワープの事を話すと、サーラとアルバロの2人が動きを止めるわ。
「クローロテース、今ワープって言いましたよね?」
「うん、パパがよく使っているわ」
「凄い! 本当に凄いです! ワームホールにワープが実在するなんて!」
アルバロが1人だけ勝手に感動している……と思ったら、サーラもなんだか嬉しそうに見えたわ。
「もうすぐ出口につきんす」
「え! もうですか!?」
ブリーズお姉様がそう言うと、アルバロが驚いたように返すの。
そして出た場所は、アルバロのお友達が殺された場所のそばでもあったわ。
思い出したように曇る顔をしたアルバロにフィンが肩を叩いてくるの。
「もし冒険者殺しに出くわしたら、今回こそ仇を討ってやろうぜ!」
「うん、ありがとうフィン」
男の友情ってやつね。 それに討伐されたって話も聞かされていないから油断はしたらダメよね。
もちろんサーラが倒した事は誰も知らないままよ。
「この辺りは大型の昆虫などが主だった魔物です。 注意を怠らなければさほど危険はないでしょう」
遺跡に入っていくとさっそく魔物が現れたわ!
久しぶりにシャムシールを抜き放って身構えたんだけど、クローロテースが待ってって叫んでくるの。
『ゴハン見つけた〜』
『待って! 私たちゴハンじゃないわよ』
『わぁぁ、君僕の言葉がわかるんだぁ。 人の姿をしているけど、僕らの仲間なのかなぁぁ』
驚いたことにクローロテースが魔物と会話をしだしたと思ったら、去っていく魔物ににこやかに手を振っているの。
これにはサーラも驚かされて、どういう事かクローロテースに聞いてみるのだけど……
「どうもこうも地上に住んでいるお友達だわ」
「そう言う事ですか……」
「サーラ、勝手に1人だけで納得してないで説明して」
というわけでサーラが教えてくれるのだけど、私たち人間、エルフ、ドワーフ、獣人は人種。 そしてクローロテースは人魚で、人種ではなくて本来人種から見れば魔物に属するわ。
「どちらかといえば魚介類系統な魔物に属するのでしょうね。 私たちが魔物とみなしている貝や魚、昆虫や近しい動物などはクローロテースから見れば、私たちがエルフやドワーフと出会うのと変わりがないといったところなのでしょうね」
それって今の魔物を倒しちゃったら、私たちで言うところの殺人みたいなものになるってことなのかな? ……なるよね。
「これは失敗しましたね……もっと早く気がつくべきでした……」
サーラが腕を組んで考え込むと、今まで黙って聞いていたフィンが口を挟んできたわ。
「ちょっと待ってくださいよ。 一体どういうことですか? 話を聞いている限りだとクローロテース王女が人間じゃないみたいじゃないですか」
「そうですね……フィンとアルバロにも話しておきましょう」
ここでサーラがクローロテースが人魚である事を明かすけど、同時に内緒にするようにも注意するわ。
「なるほど……わかりました」
「フィン、どういうことか僕にもわかるように教えてくれよ」
「簡単に言えば国家レベルの機密だってこと、ですよね? サーラさん」
サーラが頷いて答えるわ。
「なんか僕はプリンセスと出会ってからどんどんとんでもないことになっていっている気がする……」
アルバロのこの弱音に思わず吹き出しちゃった。
結局そのあとすぐに王宮に帰ることになって、王宮に着くなりサーラはクローロテースと2人で話し合うからってどこかへ行ってしまったわ。
……あーあ、久しぶりの外出だったのになぁ。
肝心のサーラとクローロテースだけど……
「クローロテース、君はやっぱり人の世界で生きるのは無理だ。 理由は言わなくても君自身がわかったんじゃないか?」
クローロテースは暗い顔のまま俯いて弱々しく頷いてみせるわ。
「人種は君にとっての仲間を食べるし、冒険者になれば殺さなくてはならない。 それでも君が人と、地上で生きていきたいのであれば、それら全てを受け入れる覚悟がいることになるんだ」
現実を知ったクローロテースは、目に今にもこぼれ落ちそうな涙を浮かべてサーラを1度見つめてからその胸に顔を押し付けて泣き出すの。
そんなクローロテースをサーラは頭を撫でながら、考えを張り巡らせているように見えたわ。
「まだ海に戻るまで少しある……俺の方でも何かいい方法がないか考えてみるよ」
こういうときのサーラって、なんでこんなに優しいんだろう……




